表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/132

心変わりも生きてる証

僕が目を覚ましたのはお昼の十一時だった。

夏休みは、どうしても寝すぎてしまう。


ぼやけた目で携帯を確認すると、芽衣さんから不在着信が二件来ていて、とりあえず掛け直してみることにした。


「もしもし、輝久です、電話どうしたんですか?」

「私、輝久の本当の気持ちが知りたい。会って話そう」

「えーっと、明日、結菜さんの誕生日なんですよ、これからそのプレゼントを買いに行こうと思ってて」

「明日なの!? それじゃ私も行く! 美波も一緒だけど、いいよね?」

「はい! みんなでプレゼント渡して、結菜さんを元気付けましょう! って、美波さんですか?」

「うん! 私もいるから大丈夫! それじゃ、どこ待ち合わせ?」

「学校から1番近いショッピングモールでプレゼント買おうと思うので、現地集合しましょう」

「わかった! 私達はもう向かうね!」

「分かりました」


急いで準備をして、僕もショッピングモールに向かった。





ショッピングモールに着くと、二人は入り口の外で暑そうにして僕を待っていた。


「おまたせです。こんな暑い中、外で待ってたんですか?」


美波さんがハンカチで汗を拭きながら答えた。


「中に入ったら広すぎて、合流するの大変でしょ? 早く中に入ろ」

「そうだね、私も暑くて限界」


さっそくショッピングモールの店内に入り、最初に向かったのは、結菜さんとのペアリングを買ったアクセサリーショップだ。

僕と芽衣さんはプレゼントを選んでいるが、美波さんは退屈そうにしていた。


「美波さんはプレゼント買わないんですか?」

「買わないよ。どんな顔して渡せばいいか分からないし」

「そうですよね‥‥‥」


確かに、結菜さんにあんなこと言ったのに、普通にプレゼント渡せるはずないな。

それより、結菜さんはどんなものだと嬉しいのかな。

お金持ちだから欲しい物は自分で買ってそうだし、かなり難しいな。


「芽衣さんは何をプレゼントするんですか?」

「んー、どうしよっかなー、結菜が自分じゃ絶対買わないような物がいいよね」

「ですねー、僕はお揃いのなにかにしようかなって思ってます」

「へ、へぇー、い、いいんじゃない?」

「ですよね! そうします!」

「うん! (輝久、やっぱり結菜がいいのかな‥‥‥いや、まだ分からない!)」

「輝久! 私ともなにかお揃いにしよ!」


芽衣さんの言葉を聞いて、退屈そうにしていた美波さんも食いついてきた。


「私とも!」

「えっ、いや‥‥‥結菜さんに見つかったら大変なので‥‥‥」


美波さん僕と腕を組み、上目遣いで可愛らしくおねだりのようなことを始めた。


「ねぇ輝久? こっち見て」


う、上目遣い!可愛すぎる!!

やばいぞ、平然を装うんだ。


すると、まさかの芽衣さんも腕を組んで上目遣いしてきた。


「美波なんか見ないで、私を見て」


やばいやばいやばいやばい!

二人とも可愛すぎるよ!!


その時、美波さんは僕の耳元で囁いた。


「輝久は結菜に振られたの。これからは私だけ見てればいいんだよ。好きだよ輝久」


僕は結菜さんに振られた‥‥‥確かに、昨日から電話の折り返しがないけど、さよならって、もう関わらないってことなのかな‥‥‥。


露骨にテンションが下がった僕を見た芽衣さんは、美波さんを僕の腕から離した。


「輝久になに言ったの!」

「結菜に振られたって事実を教えてあげた」

「そんなのまだ分かんないじゃん!」

「なんなの!? 芽衣だって輝久のこと好きなくせに、なんで結菜と輝久をくっつけようとするの!」

「私だって分かんないよ!」


大声で口喧嘩を始めてしまった二人を、周りのお客さんや店員さんが見ている。

このままだと店を追い出されかねないと思い、二人を止めに入った。


「二人とも落ち着いてください!」


すると落ち着くどころか、美波さんは怒った表情のまま僕を見た。


「輝久! ハッキリしてよ! 輝久は誰がいいの? 私だよね? 私とあんなこともしたもんね。輝久は絶対私が好きだ。私以外いらないよね? 輝久、ちゃんとそう言ってよ!」

「はぁ? あんなことってなにしたの! とにかく、私も今日聞こうと思ってた。輝久は誰がいいの? ハッキリしてよ!」

「僕は‥‥‥」


僕はきっと、結菜さんが好きだ。

いや、絶対好きだ。

結菜さんにさよならって言われた時、解放された安心感があった。

だけどすぐに寂しいっていう感情が僕を襲ったんだ。

それは時間が経つたびに増していった。


「僕は結菜さんが好きです」


ハッキリ言い切ると、芽衣さんは涙ぐんで俯いてしまった。


「私、ちょっとトイレ」


芽衣さんは俯いたままトイレに行ってしまい、美波さんは僕を睨みつけた。


「じゃあなんで私のキスを受け入れたの」

「あ、あれはほぼ無理矢理だったじゃないですか‥‥‥」

「無理矢理‥‥‥なにそれ、結菜を選ぶってことは、輝久は私がいなくなってもいいってこと?」

「いなくなっていいなんて思ってないですよ」

「でも輝久は結菜を選んだ!! 死んでやる‥‥‥」

「え?」

「輝久が悪いんだよ? 私を捨てたから、だから私は死ぬの」

「そんなこと言わないでください」

「あの〜、お客様? 他のお客様のご迷惑になりますので」

「あ、すいません‥‥‥」


さすがにアクセサリーショップの店員さんに怒られてしまい、芽衣さんが戻って来ていないけど、僕と美波さんは一旦外に出ることにした。



***



その頃芽衣は、トイレではなく、ショッピングモール内の休憩所のソファーに一人で座り、考えごとをしていた。


(ハッキリ言ってって言ったけど、あんなハッキリ言われると、やっぱりキツイな‥‥‥輝久が誰を選んでも、諦めないって決めたのにな‥‥‥私って、こんなに弱かったんだ)


芽衣は静かに涙を流す。



***



僕と美波さんは、炎天下の中、ショッピングモールの外にあるベンチに座っている。


しばらく沈黙が続いた後、美波さんが口を開いた。


「私が死んだら、輝久は悲しんでくれる?」

「当たり前じゃないですか」

「よかった。死んだら、輝久は私を想ってくれるってことだもんね‥‥‥」

「考え直してください。な、なにか冷たいものでも飲みましょうか! なにか適当に買って来ますね」


僕は立ち上がり、美波さんに背を向けた瞬間、美波さんが走り出す気配を感じて振り向くと、美波さん は道路に向かって走っていった。


「美波さん!!」


僕は必死に追いかけたが、美波さんはどんどん僕から距離を離していく。

ダメだ、間に合わない。


遂に美波さんが道路に出て、道路の真ん中でうずくまった時、車の急ブレーキの音が響いた。


幸いにも、車は美波さんスレスレで止まった。

すると、そこに主婦のような人が駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか!? すいません、私が目を離したばっかりに」

「大丈夫です、この子も怪我とかしてないみたいです」

「本当にありがとうございます! 貴方の名前と学校は?」

「谷舎坂高校二年の美波です」

「わかりました! 今度お礼しますね!」


なにを話してるんだ?


美波さんのとこに駆け寄ると、美波さんは小さな男の子を抱っこしていた。

そのまま美波さんは急ブレーキをかけた運転手に頭を下げてから歩道に戻り、男の子はお母さんに手を引かれ、ショッピングモールの中に入っていった。


「美波さん、ビックリしましたよ」

「うん‥‥‥ごめん」

「それにしても、美波さんは凄いですね」

「え?」

「死のうとしてたのに、一人の命を助けて、死のうとしてたのに、もう十分以上生きてます! 生きることって難しいですよね。思い通りにならないことが大半で、辛い思いをしたり、その中で死にたいって感情が芽生えてしまって、それなのに、美波さんはまだ生きてます。凄いことです! 美波さん‥‥‥店内に戻りませんか? 生きてるご褒美です! なにか安いものでよければプレゼントしますよ!」


僕がそう言うと、美波さんは大粒の涙を流し、子供のように泣き出してしまった。


「ずるいよ! どうして優しくするの! どうしてまた希望を持たせるの! 輝久のバカ!!」

「バ、バカって‥‥‥」

「馬鹿じゃん!! 女心も分からないで‥‥‥」


だって、女の子とまともに話すようになったのって、M組に来てからだもん。

それまでまともに話せる女性はお母さんだけでした、はい、親心すら理解してないけど。


「ま、まぁ‥‥‥分かるように努力します」


美波さんは照れ臭そうに小さな声で言った。


「ますます好きになっちゃったじゃん‥‥‥」

「でも‥‥‥さっきも言ったように、僕は結菜さんが」


最後まで言い切る前に、美波さんの大きな声で、それは遮られてしまった。


「うるさい!! バカ!! ドジ!! マヌケ!! ノミ!! ウジ!! ゴミ!!」


えー‥‥‥そんな言いますー?

美波さんって本当に僕のこと好きなのかなー、なんかめっちゃ嫌われてないですかー?


「あっ、ごめんね輝久、そんな顔しないで」

「僕、今どんな顔してます?」

「コケシみたいになってる(こんな優しい人がいるんだ。こんな優しくて純粋な人を、私は騙したんだ‥‥‥私‥‥‥最低だ)」


それから二人で店内に戻り、芽衣さんとも無事に合流することができた。

芽衣さんは目の周りが赤くなっていて、泣いていたのが分かる。


僕は最初に、結菜さんへのプレゼントの前に、約束通り美波さんへのプレゼントを選ぶことにした。

美波さんの髪の長さ的に、前よりかなり短くなっちゃうけど、ツインテールにできるよな。

よし、これにしよう。


黄色い花が付いた、二個セットのヘアゴムをプレゼントすることにした。

次は結菜さんへのプレゼントだ。


プレゼントを探していると、牛柄のマグカップが視界に入った。

結菜さん牛好きだし、このマグカップを二つ買ってお揃いにしよう!


すると、芽衣さんもプレゼントを決めたのか、僕の隣のレジに並んでいた。


僕もお会計を済ませて、さっそく美波さんにヘアゴムをプレゼントすることにした。


「はい、これプレゼントです」

「本当にいいの?」

「もちろんです!」


美波さんは、とっても嬉しそうにヘアゴムを眺めている。


「ツインテールにしてみてください!」


美波さんは言われた通り、ツインテールにすると、携帯の内カメで自分を確認した。

すると、とても満足そうな表情をしたあと、満面の笑みで僕を見つめた。


「ありがとう! 一生大切にする!」

「凄い似合ってます!」

「へへ♡」


そこに芽衣さんが戻ってきて、美波さんを不思議そうに見ている。


「あれ? ツインテールじゃん、ヘアゴム買ったの?」

「輝久にプレゼントしてもらっちゃった!」

「なんで!?」

「私って凄いんだって! だからプレゼント!」

「ちょっと意味わからない」


そう言うと、芽衣さんは物欲しそうな表情で僕に視線をズラした。


「ねぇ輝久、私も輝久からプレゼント欲しい」

「えぇ〜‥‥‥」


まぁ、さっき僕のせいで、少し元気なさげだったしな‥‥‥予算的に六百円ぐらいまでならいいかな。


「それじゃ、僕が勝手に選んでいいですか?」

「やったー! 選んで選んで!」


すると美波さんが不満そうに頬を膨らませた。

なかなかにめんどくさい状況になってしまった。


「私以外にも買うんだ」

「ま、まぁ‥‥‥みんな平等に、仲良くしましょう」

「いやだ! いいけど、いやだ!」


なんだこの子、情緒不安定なのか。


とにかく芽衣さんにはヘアピンにしよう。

髪が金だからな、シンプルな黒一色とかでもいいかな。

商品を探していると、黒一色のヘアピンが四個入り四百円で売られているのを見つけ、それを買い、ニ人の元へ戻ってすぐに、芽衣さんにヘアピンを渡した。


芽衣さんは嬉しそうにヘアピン四個を全部つけてしまった。


「どう? 似合う?」

「せめて着けるのは二個までにしましょう」

「えー、せっかく四個もあるのに‥‥‥んじゃ残りニ個は大事にしまっておこう」


そのヘアピンを見た美波さんは、ドヤ顔で芽衣さんを煽り始めた。


「見て、私のヘアゴムには花がついてるの! 芽衣のにはついてないね!」

「そんな飾りなくても、私は可愛いってことだし!」


エスカレートする前に止めておかないと、また店員さんに怒られてちゃうな。


「ふ、二人とも可愛いですよ!」


すると二人は頬を膨らせて、無言で僕を見つめ始めた。


えぇー、なんで‥‥‥。

やっぱり僕は、女心をこれっぽっちも理解していないのかもしれない。


結局美波さんは、結菜さんにプレゼントを買わなかった。


そして明日の夕方六時に、みんなで結菜さんの家に集合の約束をして、買い物の後、みんなでアイスを食べて解散した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ