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M

***


クリスマス当日の朝、沙里は一人だけ早起きして、パジャマ姿のままワクワクして玄関に向かった。

玄関を開けると、そこには大きな赤い靴下から溢れたチョコレートが沢山落ちていて、赤い靴下の横には、沙里のサイズの服とお菓子が沢山入った青くて大きな靴下と、何が入っているか分からない、クリスマスデザインの梱包がされた箱が置かれていた。

その箱には【結菜さんへ】と書かれた紙が貼られている。


「サンタさん来てくれた!」


沙里は大慌てで結菜を起こしに部屋に戻った。


「結菜! 起きて! サンタさん来た!!」

「揺らさないでください」

「早く!! 玄関行くよ!!」

「寒いですよ」

「結菜宛にもプレゼントあったよ!」

「私にもですか?」

「うん! 行くよ!」


結菜も一緒に玄関へ行くと、沙里はチョコレートが沢山入った靴下を取ろうとした。


「うっ、うわ〜!!!!」

「大丈夫ですか!?」


重さに耐えられずに、沙里は靴下を抱えたまま倒れてしまった。


「なんか手紙入ってる!! ‥‥‥サンタクロースよりって書いてるよ!? 結菜、読んで!!」

「はいはい『とっておきの魔法をかけておいたよ。メリークリスマス』ですって」


それを聞いた沙里は、ニコニコしながら結菜の顔を見て言った。


「結菜! なんか変わったことない?」


全てを知っている結菜は、ニコッと笑みを浮かべて言った。


「なんだか幸せな気分です」

「すごーい!! サンタさん大好きー!!」


ピョンピョン飛び跳ねる沙里に、結菜は青い靴下を渡した。


「これも沙里さん宛ですよ」

「これも!?」

「はい!」


それは、前もって結菜と愛梨が準備しておいたプレゼントだった。


「こんなに沢山貰ったの始めて! お掃除頑張ったからかな!」

「沙里さんが優しい心の持ち主だからですよ」


沙里は今までで一番幸せそうな表情をしていた。


「結菜も開けてみたら?」

「そうですね!」


結菜も包み紙を開けると、そこには牛のプラモデルが入っていた。


「凄い! 結菜が牛好きなのも分かってるんだ!」

「素敵なサンタさんですね!」

「うん!」


結菜は【結菜さんへ】の文字で、輝久からのプレゼントだと分かっていた。


「はっくしゅん」

「風邪ひきますよ? お部屋に戻りましょうか」

「うん!」





時間は経ち、M組の全員はプレゼントを持って体育館に集まった。


「輝久君、プラモデルありがとうございます!」

「うん! 喜んでくれた?」

「はい! プラモデルは作ったことないので、苦戦しそうですが」

「完成したら見せてね!」

「死ぬまでには完成させます!」

「き、気長に待ちます」


僕と結菜さんが話していると、沙里さんが不思議そうな表情で話しかけてきた。


「あれ輝久からだったの? サンタさんじゃないの?」

「あ、あれは輝久君がサンタさんにお願いしてくれた物です!」

「おー! 輝久やるねー!」

「まぁね!」


単純で助かった。





十七時になると、愛梨さんがステージに上がり、挨拶を始めた。


「今日はクリスマスパーティーに来てくださり、ありがとうございます! チキンやケーキ、様々な食べ物は食べ放題なので、皆さん遠慮せずに楽しみましょう! それでは、クリスマスパーティー、スタートです!」


その瞬間、体育館中央と、隅に飾られた大きなクリスマスツリーが光だし、なんだかワクワクするBGMが流れ出した。


「早速プレゼント交換しちゃおうよ!」


柚木さんがそう言うと、沙里さんが愛梨さんを呼びに行った。


「呼んできたよ!」

「お待たせしました。どのように交換する相手を決めるんですか?」


あ‥‥‥なにも考えてなかった‥‥‥。


僕が悩んでいると、柚木さんがなにか閃いたように言った。


「じゃあさ、簡単にクジ引きにしようよ! それなら平等でしょ?」

「そうしましょうか!」


その場で適当なクジ引きを作り、近くにいた麻里奈さんに二枚ずつ引いてもらうことになった。


「それじゃ一枚目引きますよ! 一枚目は鈴先輩!」

「鈴さんと交換する人は‥‥‥真菜先輩!」


二人人は同時に頭を抱えて言った。


「どうしてだよー!!」


こんなにお互い嫌そうなプレゼント交換、初めて見るよ‥‥‥多分だけど、僕のが欲しかったのかな。


二人はガッカリしながらも、渋々プレゼントを交換した。


「次の一枚目は‥‥‥柚木先輩!」

「交換する相手は‥‥‥芽衣先輩!」


二人は頭を抱えて言った。


「うあー!!!!」


なんだこのプレゼント交換‥‥‥。


「次は‥‥‥一樹先輩! 交換する相手は‥‥‥結菜先輩!」


結菜さんは一瞬でムスッとした表情に変わり、一樹くんを睨みつけた。


「結菜さん‥‥‥なんでそんな嫌そうな顔するんですか‥‥‥」

「最悪なクリスマスです」

「そんな! 俺のプレゼントがそんなに嫌ですか!?」

「はい」

「あっ(泣きそう)」

「つ、次行きますね。一枚目は‥‥‥愛梨!」

「交換する相手は‥‥‥輝久先輩!」

「ほ、本当ですか!?」

「うん、ほら」

「結菜さん‥‥‥? 立ったまま貧乏ゆすりする人初めて見たよ」


愛梨さんと僕が交換することが決定した瞬間、沙里さんと美波さんは静かに睨み合っていた。


「なんで沙里なの」

「なに、悪い?」

「別にー」

「んじゃいいし、交換しないから」

「そんなこと言ってると、来年からサンタさん来ないよ」

「美波、今日も可愛いね! 早く交換しよ!」


いきなり態度変わりすぎだろ。


僕は愛梨さんから貰ったプレゼントを開けてみることにした。

ワクワクしながら袋の中を覗くと、英会話の本が入っていた‥‥‥。

真面目か‥‥‥。


愛梨さんの反応が気になっって、愛梨さんを見ていると、愛梨さんが僕のプレゼントをワクワクした様子で開け、飛び出したゾンビが愛梨さんのオデコに当たってしまった。


「愛梨さん、ごめん、睨まないで」


すると、結菜さんが笑顔で僕の前に立ち、プレゼントを渡してきた。


「輝久君用にも買っておきました!」

「本当に!?」

「はい! 開けてください!」


頑丈な黒い箱を開けると、ダイヤモンドが散りばめられた腕時計が入っていた。


「なっ!?」

「高校最後の誕生日とクリスマスですから、奮発しました!」

「いやいやいや! 怖くて触れないよ! 因みにおいくら?」

「二千万円です♡」


僕はもちろん、周りの皆んなも若干引いていたが、沙里さんは結菜さんのプレゼントを知っていたのか、至って冷静だ。


「‥‥‥嬉しくないですか?」

「う、嬉しい! 嬉しいけど、こんな高級な物怖くて着けれないよ」

「せっかくだから着けてください!」


僕は手を震わせながら腕時計をつけた。


「似合ってます! 因みに、シリアルナンバーが七十ニなんです、本当はゼロとか一がよかったんですが、どうしても見つからなくて、世界に百個しかないんですよ!」

「あ、ありがとうね」


僕は腕時計を気遣って、ずっと左腕を押さえながら行動した。


それからしばらくして、いきなりBGMが変わった。


「皆さん! 入り口に注目してください!」


すると、ウェディングドレスを着た莉子先生と、スーツを着た剛さんが入ってきた。


莉子先生、綺麗だな‥‥‥。

それにしても剛さんは全然スーツ似合ってないし‥‥‥髭が無い!

なんか変な感じ、めっちゃ緊張してるし。


その後、宮川さんと、宮川さんのお母さんらしき人が一緒に入ってきた。


宮川さんはかっこいいな。

宮川さんは、密かに僕の憧れの人なんだ。

あんなカッコよくて優しい大人になりたい。


二人はステージに上がり、指輪の交換を始めた。

すると、隣にいた結菜さんからすすり泣く声が聞こえてきた。


「結菜さん!? なんで泣いてるの!?」

「だって、嬉しんですもん」


人の結婚で泣けるなんて素敵な人だな。


「それでは、誓いのキスを」


その瞬間、パーティーに来ていた全生徒が携帯を構えた。

そして、二人がキスした瞬間、大量のシャッター音が響き渡り、歓声が上がった。


「おめでとー!!」


その時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


「楽しんでおるか?」

「校長先生も来てたんですか!」

「当たり前じゃろ、孫の結婚式じゃぞ」

「え? 宮川さんのお爺ちゃんなの!?」

「逆じゃ」

「‥‥‥えー!?」


全てを理解したM組の生徒全員が驚いた。


「莉子先生のお爺ちゃん!?」

「そうじゃ」

「で、でも、校長先生って呼んでるし、校長先生も、莉子先生って呼んでるじゃないですか!」

「当たり前じゃろ、それが仕事のルールだ」

「は、はぁ‥‥‥」

「皆んなは知ってるかもしれんが、あの子は母親を亡くしておる」

「前に聞きました」

「それ本当!?」

「沙里達は知らないか、前にいろいろあって、病院で聞いたの」


美波さんが説明してくれたが、結菜さんも知らなかったようで驚いている。


「あの子が何故教師を続けて、何故普通のクラスではなく、M組にこだわるか知っておるか?」

「知りません‥‥‥なんでですか?」

「M組はいわば、学校という社会から見捨てられた生徒が通う場所じゃ。何かを失った子供達に光を見せてあげたいのじゃよ。仲間の大切さ、助け合う気持ち、人に優しくするということ、そして、人は変われるということ、それを君達に教えてあげたいんじゃ。それを皆んなで学べる教室にしたい。そして一人一人の環境を明るいものにしたい。それがあの子の願いじゃ。君達が問題を起こす度に、あの子は他の先生全員に頭を下げて謝るんだ。君達の未来を奪わないために、まぁ君達を見ていると、去年と随分と変わったのが分かる。あの子も嬉しいく思っているじゃろ」

「莉子先生って、凄い先生だったんですね」

「M組と言う名前の由来を知っておるか?」

「問題児の頭文字を取ってM組ですよね」

「随分とその由来が浸透してしまったが、M組と言うのは莉子先生がつけた名前でな、問題児ではなく【みんな】の頭文字を取ってM組なんじゃ。皆んなで助け合い、皆んなが笑顔で、皆んなが幸せで、そんな意味が込められておる‥‥‥おっと、話しすぎた。わしは帰るとするよ」


莉子先生のM組に対する気持ちは、そんなに大きかったんだ。

なのに、火事でM組が無くなった時も、絶対に辛かったはずなのに、僕達を元気付けようと必死だった‥‥‥。


「皆んなありがとう! 素敵な結婚式になったわ!」


いろんな想いが込み上げてきた時、僕達の元へ莉子先生がやってきた。


「莉子先生!」

「どうしたの皆んな! なんか泣きそうな顔してるけど」

「莉子先生は、絶対に幸せになります!」


莉子先生は、幸せそうな表情で言った。


「ありがとうね、輝久君」

「はい」


宮川さんが笑顔でネクタイを締め直しながら言った。


「クリスマスツリーの前で、皆さんで写真を撮りましょう!」


莉子先生と宮川さん、M組の皆んなと愛梨さんで、大きなクリスマスツリーの前で写真を撮った。

写真を撮る時に、M組の女子生徒は莉子先生に抱きつこうと、莉子先生の取り合いになったが、莉子先生は一人一人と抱きつきながら写真を撮ってくれた。

僕達の先生は、本当にいい先生だ。

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