腐りすぎ
「輝久君、今日も投稿あったよ」
「どんな?」
「これ」
(皆んな、可哀想だからイジメないであげて!いじめすぎてSNSやめちゃったじゃん!可哀想だよ)
「なんでクズっていい人ぶるんだろうね」
「クズだからじゃない?」
「なるほど、さすが一樹君。天才だ」
そんな会話をしていると、一樹くんの隣に座る沙里さんが、眠そうにしながら机に肘をついて話しかけてきた。
「でもさ、結菜が気にしてないんだから、私達が気にする必要ないと思うよ」
「でも、彼女が悪く言われるのはムカつきますよ」
「うわー、惚気てるし、てか、結菜どこにいるの?」
「トイレじゃないですか?」
その時、結菜さんが教室に戻ってきた。
「あ、結菜お帰り、大っきいの出た?」
「何を言っているんですか? 髪を整えに行っただけです」
「そうなんだ。なんかね、輝久が結菜のこと心配なんだって」
沙里さんがそう言うと、結菜さんは慌てて僕の手を握った。
「どうしたんですか? 私、何かしてしまいましたか?」
「いや、SNSのことだよ。今日も変な投稿してたし」
「そのことですか! 大丈夫ですよ、私は平気です」
「あ、まただ、また投稿されてる」
(結菜先輩がSNSやめたのって私のせいだよね‥‥‥私悪い子‥‥‥)
「は? きもっ」
「それに対して、皆んなはキャンディーちゃんは悪くないよとかメッセージしてるけど」
「輝久君、痛いです」
「あ、ごめん‥‥‥」
僕は怒りのあまり、結菜さんの手を力強く握ってしまった。
「ちょっとトイレ行ってくる」
僕トイレに行くと言い、は一人で教室を出た。
顔は分かる。学年も分かる。
直接文句言いに行こう。胸糞悪すぎる。
僕は本校舎の二年生のクラスを見て周り、二年三組の一番後ろの窓際の席に、その生徒を見つけ、怒りに任せて教室のドアを開けた。
「おい!!」
「輝久先輩!?」
「愛梨さん!? 愛梨さんってこのクラスだったの!?」
「そうです。なにかあったんですか?」
教室にいた生徒が僕に注目した。
「あの人が結菜さんの悪口をネットに書いてるんです!」
「は!? 私!?」
それを聞いた愛梨さんは、いきなり目つきが鋭くなった。
「麻里奈さん、それは本当ですか?」
「私はそんなことしてない!」
「してるだろ! 昨日投稿した写真のおかげで、君が犯人だって分かってる!」
「麻里奈さん? 貴方のSNSのアカウントを教えてください」
「無理!」
「教えなさい」
「‥‥‥キャンディーって名前‥‥‥」
やっぱりそうか。
「放課後、しっかりと確認させてもらいます。それまで携帯は没収です」
愛梨さんは麻里奈さんから携帯を取り上げた。
「なんで結菜さんの悪口を書いたの?」
「ただ気に食わなかっただけ。別に悪口ぐらいいいじゃん。本人はもうSNSやめてるんだし関係ないでしょ」
「関係ないわけないだろ。挙げ句の果てに自分は悪くないって言われる為に変な投稿して、ふざけるな!!」
「輝久先輩! 落ち着いてください!」
「結菜さんは傷ついても、なかなか表に出さないんだ。きっと結菜さんは傷ついてる‥‥‥僕の彼女を傷つけるな!!」
それを聞いた愛梨さんは、少し複雑な表情をした。
そして、一人の男子生徒が僕にに突っかかってきた。
「てか、いきなり下級生の教室に来て騒がないでくれますか? 迷惑なんですけど」
「いきなり来たのはごめん。でも許せなかったんだ」
「関係ない俺達まで巻き込まないでもらえます?」
「でも、君達も一緒になって悪口言ってたんじゃないの?」
「言ったよ。悪い?」
僕は我慢できずに男子生徒の胸ぐらを掴んでしまった。
「殴るんですか? さすがM組っすね、野蛮人ばっかりじゃん」
「やめなさい!! 輝久先輩も落ち着いてください!」
「M組に通ってる人とか落ちこぼれしかいないでしょ。ただのクズの集まりだろ」
M組の皆んなまで悪く言われた僕は、男子生徒の体を力強く押し、男子生徒は尻餅をついてしまった。
そして喧嘩がヒートアップして、僕達は取っ組み合いになった。
「輝久先輩! やめてください!」
***
輝久は聞く耳を持たず、愛梨はM組の教室へ走った。
「結菜先輩!! 輝久先輩が!!」
結菜は焦った愛梨を見て、全てを察して一人で愛梨の教室に走った。
その後を追うように沙里と愛梨以外の皆んなも走り出した。
「愛梨、輝久がどうしたの?」
「私のクラスの生徒と喧嘩に」
「あー、やらかしちゃったか」
「沙里も行きましょう!」
「そうだね」
「‥‥‥沙里? なんで怒ってるの?」
「え? 私いつも通りじゃなかった?」
「‥‥‥(声は冷静なのに、確かに今一瞬、沙里の表情が怒りに満ちていた気がした)」
「ほら愛梨、走るよ」
二人も愛梨の教室に向かった。
一足先に教室に着いた結菜達は、輝久の喧嘩を止めて落ち着かせている最中だった。
「M組揃ってなんなの?」
「輝久君、教室に帰りましょう」
「いやいや、結菜先輩、何無視してんの? 私に悪口書かれてムカつかないの? それともビビってる? ねぇ、なんとか言ってみなよビビりさーん」
「潰すぞガキ」
「は? 今なんて言った? 清楚の見た目して口悪いとかヤバすぎ、また投稿するネタ増えたわ」
「言ったのは私だよ。人の声も判別できねーのかよ」
「沙里、落ち着いてください」
後から来た沙里は、麻里奈の言葉を聞いて頭に血が上っていた。
「結菜がお前みたいなガキにビビるわけねーだろ。勘違いするな」
結菜は、沙里が暴れ出す前に、沙里のの右手を引いた。
「沙里さん、戻りましょう」
「うん、そうだね」
「うわ、逃げるんだ! ダッサ!」
「もう授業が始まるからね」
「なに真面目ぶってんの?」
「んじゃ、言いたいこと言ってから戻るわ。一つ言わせてもらうけどさ、学園祭での、このクラスの出し物の準備を一番頑張ってくれたのは誰? 結菜でしょ? 私達も手伝ってるし、お前が結菜の悪口を言ったのもムカつくけど、結菜の気持ちを踏みにじったのが一番ムカつくんだよ。人間腐りすぎだろ」
「別に頼んでないし」
「だったら最初に断って帰ってもらえばよかったじゃん」
「‥‥‥て、てか、こんなに揃って他の人は何も言わないわけ?」
「沙里が言いたいこと全部言ってくれてるから、別にいいかなって」
美波がそう言うと、M組の皆んなは静かに頷いた。
「とりあえず教室戻るから、あの女は愛梨に任せるね」
「はい」
※
「くそー!!!!」
教室に戻ってきた瞬間、沙里は机を蹴り飛ばした。
「沙里さん、よく手を出しませんでした。偉いですよ」
「手を出したら負けだと思った。あんな奴と同レベルになりたくない」
「ごめんなさい、僕のせいで大ごとになっちゃいましたね」
「輝久君? 私怒ってます」
結菜は怒っていると言ったが、心配そうな表情をしている。
「ごめん」
「輝久君が私のために乗り込んでいってくれたのは嬉しいです。ですが、輝久君は修学旅行の時に私に言いました。皆んなを頼って、危ないことはしないでと、私も今‥‥‥輝久君に同じことを思っています」
「本当にごめん、でも許せなかったんだ」
「私は大丈夫ですから‥‥‥(今回は輝久君が怪我とかしなくてよかった。でもこのままだと、また輝久君が怒ってしまうかもしれませんね‥‥‥このまま何事もないといいのですが)」
その日の夜、麻里奈は愛梨の注意を聞き入れず、またSNSに投稿した。
(今日、教室に結菜達が乗り込んできて、いきなり悪口言われた‥‥‥結菜の彼氏は暴力野郎だし、私怖くて泣きそうになっちゃった、らでも、私が全部悪いんだよね。私のせいだよね‥‥‥悪い子でごめんなさい。)
当然のように、ネットの男達は麻里奈を擁護し、励ました。
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