1
今年の春、僕宮下託統は、高校生になった。
新たな生活に期待を募らせる日々が前まではあったんだけど、昔からの頼みごとは断らない世話焼き体質のせいで、はやくもくじけそうになる今日この頃。
生徒会の雑用、クラスの雑用など、今までした数は数え切れないものとなっている、というか、覚えてないのが事実だ。
人助けは嫌いじゃないけど、自分の仕事を押し付けてくるような人は嫌いなのだが、世話を焼いてしまう。
下に年の離れた弟か妹がいる人はわかると思う。
親から面倒をみるように頼まれることが多く、そのため大きくなっても世話を焼いてしまうのだ。
実際僕にも双子の弟がいるのでこんな体質になってしまった訳だが今となってはもう変えられないのだ。
今日も夕飯と、明日のお弁当のためにスーパーの特売を目指して走る予定だったのだが、生憎教師に捕まってしまい雑用を押し付けられたのだ。
「たく、頼むのはいいけど、限度ってもんがあるだろ‼︎」
終わった頃にはもう6時前になっていた。
人が捕まらなかったからって一人で大量の資料を作成したのだ。
スーパーへの道のりを走りつつ、家にある食材を思い出す。
特売品が残っていることを望みながら廊下を走る。
急いで昇降口をでてスーパーへの道のりを走る。この分だと、7時くらいには夕飯を作り終えているぐらいだろう。
きっと腹を空かしているであろう弟たちに心の中で謝りつつ、道の角を曲がると仄暗い雰囲気に、怪しく光る灯の店にお爺さんが立っていた。
こんなところにあんな店あったか?と、思いつつそこを通り過ぎようとしたが、
「そこのお前さん、ちょっと良いかな?」
急に腕を掴まれて、制止させられる
「えっと、何ですか?すいませんが、急いでるんです」
内心、この爺さん力強いな。と、思いつつ、急いでいることを主張した。
「そう言わずに、こちらも急いどるんでな」
そう言われても、こちらも困るんだが
「実はの、この後用事があってなちょっとの間店番を変わってくれんかの?」
「すみません、無理です。急いでるので」
そう言って、立ち去ろうとしたが、またもや腕を掴まれた。
「あの、本当に困るんです。この後夕飯を作らないといけないんで、時間がないんで」
「大丈夫じゃ、すぐにすむ」
「いや、手を離してください」
この爺さんには、悪いが断らせてもらおう。
普段なら話は聞くが、今は弟たちが待っているのだ、急がないと
「すこーし、まじないをするだけじゃから」
ん?
「我が名は刻夭、汝を代理として権限を与える」
ん?
なにを言っているんだ?
「さて、坊やへの用事も済んだことじゃ、儂はもう行くの」
「は? え、さっき何したんですか?」
「大丈夫、体に害はないものじゃ、早速明日から頼むの」
「何をですか?」
「ここの店番を少し変わってほしいだけじゃ、なに客はほとんどきやせん。いてくれるだけで良いんじゃ」
と、言い残して、年の割には速すぎる足取りで消えてしまった。
「いや、まだやるとか言ってないんですけど」
かくして、謎のお爺さんに店番を押し付けられて、明日を迎えることになりました。
スーパーの特売品は全て売り切れていました。
今度、あの爺さんに会ったら不満を言いたいと思います。
ていうか、あれってまじないだったのか?