転生者は、助言を得る
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『レイちゃん?どうしたノ?』
『悲しいノ?どうしたノ?』
ひたすら無言で歩き続ける私に違和感を覚えたのか、至る所から心配するように声をかけてくる。
やり切れない想いを吐き出すように、力任せに自宅の扉を開けながら叫ぶ。
「ただいま凄まじい自己嫌悪で死にそうです!」
「うおっびっくりした!!あ、レイちゃん!どうしたのそんな大きな声出して?」
父親が転がりながら出迎える。
いつも通りすっとぼけたような顔でこちらを見る姿を見て、なぜだかポロリと涙が零れ落ちた。
「ひぃえっ!?レイちゃん!?」
「へっ、この世はクソゲー。」
「そ、それは一体何の話!?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「喧嘩したの?本当に?」
そのまま静かに涙を流す私を見かねて、抱き抱えながら家事をする父親が小さく呟く。
「……アルにバカって言った。」
「どうして言っちゃったの?」
「アルは帰ってきてからずっと剣の修行しててね、全然休まないの。趣味で始めたにしては煮詰め過ぎだと思って、理由を聞いてみたの。そしたら私にだけは死んでも教えたくはないんだって。」
あー…と思い当たるように言葉を濁す父親の姿にさらに落ち込む。
「ほら出た、その意味ありげな濁し方。みんなはこれだけで何かを察してるけど、私は全然分からない。アルのこと分かってるつもりだったのに………全然分からないのぉおおおおお!!!」
「お、落ち着いてレイちゃん!落ちる落ちる!!」
「幼馴染なのに教えたくないって!?なぜに突然フラれなきゃならないの!?ウェェエエエェ!!」
鼻水やら涙やら垂れ流しながら、父親の服を掴み左右に揺さぶる。
「……僕的にはずっと喧嘩してくれてたほうが、あのあんちくしょう小僧のことを気にしなくていいからありがたいよ。だけどレイちゃんが泣いちゃうのは世界崩壊の危機だ。意地悪している場合じゃないね。」
荒ぶる私をなだめるように背中をさすってくれる父親は、優しい笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「少し助言するとすれば…そうだな。『彼の性格』を思い返してごらん。」
「アルの性格?」
「そう。」
私を地面に降ろした父親はゆっくりと私の頭を撫でて呟く。
「彼は不器用だ。そりゃもう他に類を見ないほどに。これはレイちゃんが一番よく分かってることだよね。」
確かにアルは全くもって素直になれない少年だ。
アルのおじいさんのときも、アイビスの花を咲かせるのに大分時間がかかった。
父親が言っていることは、私にも分かる。
一度頷くと、父親も返すように大きく頷いた。
「じゃあ不器用な人物は言葉で伝えられない分、どうやって自身の想いを表現すると思う?」
言葉が無理なら、どうするべきか。
私だったらどうするか。
その時、ふとアイビスの花を思い出した。
あれは自身の奥底にある気持ちを表に出してくれるもの。
目に見えないものを、形で示してくれるものだ。
きっとそれと同じことをすれば良い。
「形で示す……人で言えば…行動で示す?」
「その通り。行動、態度で示すんだよ。」
「でもそれがどうしたの?」
「レイちゃんのその賢い頭でよく考えてみてごらん。…さて、エマが買い物から帰ってくる前に家の中を掃除しないとね。」
自身の人差し指を私のおでこにつけた父親は優しく微笑むと、そのまま家の中の掃除を始めてしまう。
先ほどよりも冷静になった脳みそを稼働させながら、私は部屋へと戻った。
『レイちゃん大丈夫?』
「うん。心配してくれてありがとう。」
妖精たちに返事をすると、嬉しそうにみんな話し出す。
『気にすることないヨ!ミーたちはレイちゃんの味方ダヨ!』
『ソーダソーダ!』
『素直じゃないアルが悪イ!!』
「良く分からないけど、とりあえず大人気なかった私が悪い。」
父親と話せて大分気持ちが楽になったのか、先ほどとは打って変わって清々しい気持ちで布団に転がる。
「あと数分したらアルに会いに行こう。」
『ビンタしに行ク?』
『見たい見タイ!カットバセー!』
「違う。謝りに行くの。」
『『エー……ツマンナイ。』』
「おちょくるんじゃない。」
楽しそうに笑い声をあげる妖精たちの声を聞きながら、私は大きく深呼吸をした。
アルの行動を思い返してみて分かったこと。
あれ?迷惑しかかけてなくね?
初対面にしてぶっかけ、ボットントイレに落ちて引き上げてもらい、さらに魔女の家まで付き合ってもらってなんとかポーションを作ったものの、また吐いて。
控えめに言って最低。
(嫌われることしかしてなくてワロタ。)
そんな私に優しく接してくれるアルが死んでも言いたくないということは……本当になにか理由があるのだろう。
例え分からないままだとしても関係ない。
ひっそりと、お隣さんポジションでアルを応援する分には何ら支障はないのだから。
頭を冷やして冷静に達観して考えれば、何であんなに嫌だったのか不思議なほどである。
そうと決まればと身体を起こし、掃除している父親の後ろを通って玄関を開ける。
きっと優しいアルのことだ。
私が急に帰ったことに気を揉んでいる可能性もなくはない。
「情緒不安定でごめん。私は遠くから…影ながら応援してるよ。……うん、これで行こう。」
謝る際のセリフを練習しながら一歩踏み出したその時、ふと妖精たちの声が聞こえないことに気がついた。
この状況なら楽しんでついてくるかと思ったのに、どこに行ったのだろう。
姿が見えないから探しようもないが、少し違和感を感じて辺りを見回す。
するとどこからともなく不思議な声が聞こえてきた。
「フェッフェッフェ!相変わらず落ち着きがないねぇ!そんな周りを見回して、一体どこに行くつもりだい?」
その懐かしい声色に、心が高鳴った。