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転生者は、体調を崩す

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部屋の扉を音を立てないように開けて母親が入ってくる。

そのことに気づいてゆっくりと身体を起き上がらせると、母親が心配そうに問いかけて来た。


「どうレイちゃん?」


「へへ、元気元気…」


「本当に?」


嘘です。絶賛体調不良で寝込み中です。


分かってはいたが、やはり万全の体調でないなかの馬車移動は地獄だった。

途中から熱が出たのか意識が朦朧としていたものの、村に到着してクラウスさんたちの顔を見てすぐにぶっ倒れた。

驚かせてしまって申し訳ないことをしたと思う。


「今エミリー様とクラウスさんがお見舞いに来てくださってるけど、どう?少しでも会えそう?」


「本当?会いたいな。」


「無理してない?」


「うん。」


身体は重くて怠いが、ただ寝ているだけだと余計に具合が悪く感じるだけである。

病は気からと言うし、それにそろそろ可愛いエミリーちゃんの顔を拝みたい気分だ。


私の様子を見た母親が一度頷き扉を大きく開けると、緑色の髪を二つに束ねた可愛らしい少女と普段よりも軽装なイケメンが姿を現した。


「わぁー!モブちゃんだー!久しぶり!!」


「ゴファッ」


私の姿を見たエミリーちゃんは嬉しそうに突進してくる。

その可愛らしい笑顔を見て幸せな気持ちになるが、鳩尾に頭突きを喰らい天に召されかけた。


「エミリー様、モブロード嬢は体調が芳しくないのですからトドメを刺してはいけませんよ。」


「エミリーはトドメなんて刺してないもーん。」


母親に頭を下げた後、クラウスさんが苦笑いしながら近づいてきた。


「体調はどうだ?」


「えへへ…大丈夫です。少し怠さが抜けないだけで。」


「弟から詳しく聞いている。…怖かっただろう。そして市民を守るべき立場である部下が迷惑をかけてすまなかった。」


「本当だよ!モブちゃんをいじめるなんて許さないんだから!!ちゃんと叱っておいてよねクラウス!」


「はい。」


その後、エミリーちゃんは嬉しそうに私がいなかった間の出来事を身振り手振りを使って話し始めた。


「番犬くんがね、ずっとイライラしっぱなしだったんだよ?眉間にシワが寄ってて怖かったの!」


「エミリーちゃんを怖がらせるなんて…アルのお馬鹿さんめ。こっちに来てくれた時は特に感じなかったから、なんかおじいさんと喧嘩でもしたのかな。」


「ふふ!モブちゃんってば面白い!あ、そうだ!いつも何時頃にお見舞いに来てるの?エミリーお邪魔しちゃおうかな!」


「ん?どういうこと?」


エミリーちゃんの言っている意味が分からず思わず尋ねると、彼女も驚いたように数回瞬きをする。


「え?番犬くん、お見舞い来てるんだよね?」


「?いや来てないよ?」


「……えぇ!?」


信じられないと言うように口元を手で押さえるエミリーちゃんの様子に思わず首を傾げる。


「うっそぉ!何やってるの!?」


「そんなに驚くこと?」


「そうだよ!辛い時にそばに居ないなんて番犬失格だよ!ダメ犬だよ!!」


アル、君の想い人にすごい言わようだけど喧嘩でもしたのかい?


エミリーちゃんの容赦ない言葉に若干驚きながらも、アルに対する印象を悪くさせないよう幼馴染としてフォローしなくては。


「いやいやこんな幼馴染のために王都まで助けに来てくれる優しい男の子だよ?」


「クラウス!エミリーはダメ犬くんにお説教してくるから、モブちゃんのことよろしくね!」


「おおっと!?話を聞いてエミリーちゃん!?」


頬を思いっきり膨らませたエミリーちゃんは、クラウスさんを残し急いで私の部屋から飛び出していった。


ああ…私の癒しが。


無様にエミリーちゃんを引き止めようとした右手だけが宙に浮いて、なんとも締まりが無い光景である。


「すまない。エミリー様は一度決めると曲げない御方でな。」


「はは、エミリーちゃんらしいですね。」


エミリーちゃんが出ていったドアを数秒見つめたクラウスさんは再度私に向き直ると、言葉を続けた。


「回復仕切れていないところで申し訳ないが、ダニーとやらの人物について聞かせてもらえないか。」


「もちろんですよ。でもあんまりお伝えできることはないかもしれませんが。」


「構わない。」


その言葉を聞いて一度頷いた私は、覚えている限りのダニーの情報をクラウスさんに伝えた。


「なるほど、魔王軍幹部ダニエルか。アルフレッドが普段どおりではなかったとはいえ、彼を追い詰めるほどの実力ということは本物だろうな。無事で本当に良かった。」


「クラウスさんを物凄い警戒してましたよ。聖剣使いを嫌がってました。あれで場の流れがだいぶ変わりましたから。」


「そうか、魂を半分送った甲斐があったな。」


「本当にありがとうございます。」


そこで言葉を区切り、少し気になっていたことをクラウスさんに打ち明ける。


「魔法が大得意って感じな少年でしたよ。魔王軍幹部とかいう割には人間ぽいというかなんというか。」


私が姿を見ることができたということは魔物ではないのだろう。

そんなことクラウスさんには言えないが。

それでも思い当たる節があるのか、顎に手を添えたままクラウスさんは続けた。


「かつて優秀な魔術師が故郷の村人たちの魂を喰らいつくし()()()したと、一度文献で読んだことがある。名前までは記されていなかったが……ソイツである可能性が高いな。」


「……魔落ちってなんですか?」


「人にして人にあらず。魔物の血を体内に取り込む黒魔術の使用者であったり、人として越えてはならない一線を越えてしまった輩の総称だ。モブロード嬢を巻き込んだヒューズ・ノバクという男もそれにあたる。捕まえれば二度と外出ることがないよう地下牢に幽閉する決まりだ。」


「ヒューズ先生……」


自身の息子を助けたくて黒魔術に手を出したヒューズ先生を思い返すと、心が抉られるように痛む。


「すまない。辛いことを思い出させたな。」


「いえ、私より両親の方が苦しいと思うので。」


眉を寄せて顔をしかめるクラウスさんは、やはりどことなくランちゃんに似ている。

その顔を眺めているとふと我が親友の安否が気になった。


「あのランちゃんなんですが…」


「ランちゃん?」


「クラウスさんの弟さんのランちゃんです。怪我とかしてないですか?」


数秒フリーズしたクラウスさんは思わずといった様子で吹き出し、私を安心させるように頭を撫でてくれる。


「あぁ、弟なら問題ない。変わらず元気でやっているようだ。毎日君の具合がどうかの確認の連絡が来る。もしよかったら今度話をしてやってほしい。」


「もちろんです。お礼もちゃんと言いたいですし、なによりランちゃんは私の親友ですから。」


「そうか……ありがとう。」


そう呟いたクラウスさんは、優しいお兄さんの表情を浮かべていた。


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