転生者の選択と、その結末④
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「大人しく王都から出るって話だったの忘れたの!?なにやってたの!?」
「ごめん、私が馬車の場所を忘れちゃって」
「やっぱり……そんなことだろうと思って妖精を籠から出して正解だった。」
「すごい。ニュータイプか。」
「どうでもいいから早く乗る!」
急かされるように背中を押されて扉を開けると、なぜかぐるぐる巻きにされている父親と本を読んでいる母親がすでに待っていた。
なぜ父親がぐるぐる巻きなのか、触れるべきか触れないべきかに悩んだ末。
「……おまたせお母さん。」
「あっれぇ!?ダディのこの状態になんとも思わないの!?」
「ランディ先生の判断でぐるぐる巻きにしたのよ。お帰りなさい2人とも。え、アルくんどうしたのその頬!大丈夫なの!?」
「あ、あぁ……特に…。」
「ダメよすぐに治療しないと!エドワード、足元の救急箱取ってくれる?」
「無理だよエマ!!ほら見て!?僕ぐるぐる巻きだから!!」
「そうだったわね。じゃあ足をあげてもらえれば大丈夫よ。」
「いやこの拘束を解いてくれればいい話だよね!?」
とりあえずアルの治療を母親に任せて後ろを振り向き、ランちゃんにお礼を言う。
「ランちゃん本当にありがとう。でもここまでしてもらって大丈夫なの?」
「問題ないわ。私を処罰すれば兄さんが黙ってないもの。持つべきは最強の兄ね。」
頭を数回撫でられ、私の耳元に顔を近づけた彼は小さな声で呟いた。
「これから馬車には幻影魔法をかけてあげる。村に着くまでは決して顔を出さないで。ワタシの半身が村まで責任を持って送ってあげるわ。」
「半身!?」
「魂の一部よ。とはいえ免許はちゃんと取ってあるから安心して。」
「そういう問題じゃないよね!?魂の一部って大丈夫なの!?」
「私たち兄弟の得意魔法だから平気よ。さぁそろそろ行って。兄さんがいればいつでもまた話せるわ。」
「……わかった。本当にありがとう。」
にこやかに笑うランちゃんに抱きつき感謝を伝える。
一度私に気合いを入れるように大きく背中を叩いたランちゃんは、勢いよく扉を閉めた。
寂しいがまた会える日を信じて、今は村に帰ろう。
ゆっくりと進み始めた馬車にとりあえず安堵して再度アルたちの方へ振り返る。
「え、なにその顔。どうしたの?」
「……………ッチ。」
母親に手当てしてもらっている幼馴染と、ぐるぐる巻きのまま座席に座っている父親が、これでもかというほど目を細めて私を見つめていた。
「結構レイちゃんはやり手なのね。でも浮気はダメよ?」
にこにこと笑っている母親だけ場違いである。
ねぇ、さっきから気になってるんだけどその浮気ってなに?どこからきたの?
そしてついに耐えきれなくなった父親が全身をくねくねさせながら絶叫する。
「あのさぁ!!レイちゃんが天使なのは知ってるし身に染みて理解してるけど!!それにしても男が群がりすぎだよ!!なんなの!?僕は絶対認めないからね!!絶対に!!」
「っはぁ!?なんでこっち見んだよ!オレよりあの男だろ!?アイツあの野郎の写真を隠し持ってんだぞ!なに放っておいてんだよ!」
「はぁ!?どういうことレイちゃん!!ダディ初耳なんですけどぉ!?」
「……無事に王都を抜けられるといいね。」
「そんなことで誤魔化されるダディじゃないからね!?」
一応追われているというのになんとお気楽な光景なのだろうか。
(というか追っ手が来ないのはなぜ?)
疑問に感じながらも疲れが勝り、喚く父親を無視しながら瞳を閉じた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
思わず深いため息を吐いて目前の敵を睨みつける。
「おやおや、やってくれましたね。」
クラウス騎士団長の弟が馬車を用意しているのだろうと踏んで、外に見張りをつけていたのだが。
「貴方たちまで邪魔してくるとは思いませんでしたよ。あの誓いの証はそんな簡単に渡していい物なのですか。」
見張り組は、頬に赤い紅をつけ背丈ほどの大剣を振り回す女盗賊一派の集団と交戦中。
あの笛の音色に嫌な予感がしたが。
なるほど、あの少女の交友関係は普通とは程遠いようである。
茶色の三つ編み少女は大剣をちらつかせながら挑発的な笑みを浮かべ、隣にいたピンク色の髪の少女に声をかける。
「ほら見てリリー。天下のテオ・モルドーラ様の眉間にシワが寄ってるよ?獲物にでも逃げられたのかな?ダサいね?」
「そうだねネェさん!へーんだ!ザマァみろ!」
「うるさいですよ。路地裏でひっそりと暮らしていれば良いものを。騎士団に手をあげるとは愚か者め。」
そんな私の言葉を聞いてピンク色の髪の少女が立ち上がる。
「女同士、助けあって生きていく!!レイはアタシらの恩人で家族だ!助けの笛の音色には必ず駆けつけるんだから!」
少女が大剣を構えると、周りの女どもも再度大剣を構える。
なんと無謀な。
これだから野蛮な輩は気に食わない。
粛正するのは簡単だ。
だが騒動に気づいた周りの住人や観光客が、野次馬としてどんどん集まってきている。
これ以上大事になると王の耳にも入るだろう。
そうなればますますエミリー様は王都にいらっしゃることができなくなる。
(ここは引くか。)
「時間稼ぎをしに来る相手と戦ってもこちらにあまり利益はありません。今日のところはここまでとしましょう。今回そちら側についたこと、後悔されませんように。」
部下に傷ついた仲間の回収を指示して歩き出す。
レイ・モブロード。
聖女エミリー様のご友人でありながら、悪魔の子や女盗賊一派と関わりを持つ人物。
その割にはあの男が直々に保護命令を下すぐらいには親しくしている危険人物だ。
「レイ・モブロード嬢がダニーという人物に狙われている可能性がある。早急に保護に迎え。私の半身も同行させる。」
クラウス騎士団長が幻影魔法を使い、魂の半分をここ王都に飛ばしてきたときには驚いたものだ。
「お言葉ですが…そのようなことを伝えるために力を使われるのは如何なものかと。聖女様を守ることのみに専念するべきでは?」
「そのようなこと?」
聖剣を握りしめたクラウス騎士団長の半身は告げる。
「相変わらずだなテオ。お前のその考え方に対する説教は今はやめておくが、彼女は重要人物だ。もしなにかあれば…とんでもない獣が放たれることになるぞ。」
重要人物?
何も知らないくせに一体何を言っているのか。
私はそんな人物など記憶にないし、そもそも彼女がエミリー様の横にいてはこちらの計画が破綻してしまう。
(必ず、排除する。)
誇り高き騎士は、己の剣を握りしめることでなんとか苛立ちを抑えた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
いや分けるとは言ったけど分けすぎぃ!!
すみません…私が書くと長くなるんです…。
次回は魔王軍側の視点でお送りします^_^