転生者の選択と、その結末②
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フカフカのベッドに腰掛けたランちゃんは大きく伸びをする。
「さて、どこから話せばいいのかしら。」
「どこからでもどうぞ。」
顎に手を置き数秒考えたランちゃんは人差し指と中指を上げて私に問いかける。
「じゃあいい話と悪い話、どっちから聞きたい?」
典型的なやつキタコレ。
究極の選択に悩んでいると面倒になったランちゃんが咳払いをした。
「聞いたけど時間ないからとりあえずいい話から話すわね。」
「じ、時間がない?」
「まぁ聞いて。あのピンクの髪の女の子と女盗賊一派、レイがくれたポーションのおかげで全員無事よ。」
「本当!?」
「えぇ。なかなか深い傷だったけど跡すら残ってないわ。本当にとんでもないポーションを作ったのね。で、そのお礼にってあの子から。」
手渡しされた巾着を開けると、キラリと輝く白い宝石が組み込まれたネックレスが入っていた。
「これって…」
「女盗賊一派の誓いの印よ。それを持ってれば裏世界の人間に狙われることはほとんどなくなるでしょうね。」
「なにそれすごい。」
「逆にいえば騎士団に見せると捕まるわよ。気をつけなさい。」
「なにそれ怖い。」
「晴れて犯罪者の仲間入りね。」
なんだかすごく複雑な気持ちになりながら再度巾着を確認すると、小さなドングリのような木ノ実が大量に入っているのが目に入る。
「あ、その木ノ実はあの女の子が一生懸命詰めてたのよ。レイにお礼をするために宝物をあげるんだって言ってたわ。なかなかいい効果をもたらす木ノ実だから、ポーション作りに役立つと思うわよ。」
「わぁ…嬉しいな。」
あの大剣を振り回していた女の子が頑張って木ノ実を巾着に詰めたかと思うと、可愛くてにやけてしまう。
名前も知らないあの子だけど、またいつか出会えるだろうか。
「さて、次。悪い話ね。」
「あ、うん。」
トントン拍子で進む話に急いで机に置いてあった私のポシェットに巾着ごとしまい、背筋を正す。
そのうちに彼はポケットに手を入れ、おもむろにこの間見せてもらった小さな石を取り出した。
「今から聞いてもらうのは王都騎士団の特例指令内容なんだけど。」
「え、それいいの?」
「バレなきゃ平気よ。」
「つまり犯罪じゃん。」
私の言葉を思いっきり無視したランちゃんがその石をおもむろに握りしめると、低く、感情をなに1つ感じさせない声色が部屋に響き渡る。
「ヒューズ・ノバク、魔族主従の罪で地下牢に幽閉とします。罪深い愚か者を決して外に出してはなりません。」
「ヒューズ・ノバクって……」
「そうヒューズ先生。兄さんの命を受けてレイたちを迎えに行った騎士団が、辛うじて生きていた先生を捕縛して裁判にかけたの。その結果がこれ。」
「地下牢に幽閉……」
「経緯はどうであれ魔物と交流を持つことは大罪なの。それも先生は魔物を主人として、命令に従い一般人を危険に晒した。当然といえば当然だけど、もう二度と陽を浴びることはないでしょうね。」
布団を強く握りしめて俯く。
脳裏にヒューズ先生と笑顔で会話していた両親の姿が思い浮かんだ。
「私の両親は知ってるの?」
「…………えぇ。レイが眠っている間に。」
無性に2人に会いたくなってベッドから起き上がる。
少しふらつくがドアへと歩き出すと、ランちゃんがさらに言葉を続ける。
「この声の主はテオ・モルドーラ。立場的には副団長ってところだけど、熱狂的な聖女信者で兄さんにいちいち食ってかかる面倒な奴。」
「…その人がどうしたの?」
「現場は部下に任せて自分は行かなかったみたいだけど、後日貴方の幼馴染が赤髪であることが報告されたわ。」
ゆっくり振り返り彼の方へ振り返ると、ランちゃんはさらに石を強く握りしめる。
「私はこれから悪魔の子を処分しに行かなければなりません。あと、そろそろエミリー様とご友人らしい平凡な少女も目を覚ます頃合いでしょう。一度ご挨拶に行かなければ…ね。」
「レイ、幼馴染と家族を連れてすぐに王都を出なさい。馬車は私が用意する。テオがここに来たら村へは帰れないわ。逆に王都から出ればアイツは手は出せない。時間がないって…こういうことよ。」
一度深く息を吐いたランちゃんが口にした内容は、信じたくない現実だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
急いで扉を開けて外に出る。
焦った様子を見て驚いた表情を浮かべているのは我が両親。
「ど、どうしたのレイちゃん!まだ寝てなきゃだめでしょう!?帰りは馬車しかないんだから、数日は安静にしていないと!」
父親が私に寝ているように促してくるが、それどころではない。
近づいて来た両親の手を掴んで後ろに立つランちゃんに声をかける。
「ランちゃん、2人をお願い。私はアルを探してくる。」
「分かった。馬車は一階物置倉庫の横にある裏口につけておくから、急いで。」
「え!?なんで!!?どういうことですかランディ先生!!」
ランちゃんに食ってかかる父親を交わす。
その瞬間になにかを理解したような表情の母親と目が合い、心の中で謝りながら見慣れた赤髪を探しに走り出した。
黒、茶色、黄色、白、青、……虹色?
なんだその髪色は喧嘩売ってるのか。
とにかく面白いぐらいに赤髪だけが見当たらない。
数十分前までずっと横になっていた私にとって、この捜索は凄まじく心臓に負担がかかる。
早い所アルを見つけて馬車に乗らなければならないのに、私のポンコツぶりは健在で。
「ここ何処ですかーーー!」
迷子になった。
ちょっとカッコよく走り出した私を殴りたい。
おそらくアルは自分の髪色を気にして目立たない場所にいるんだとは思う。
(それにしても見つからなさすぎだろう!)
どこにいるんだあの子は。
荒い呼吸を整えるため扉に手をつけると、そこには『屋上』の文字が大々的に書かれてあった。
……まさかベタに屋上にいたりして。
最後の力を振り絞って扉を開けて屋上へと駆け上がる。
「アルくんやーーーーーい!!」
奥の扉までたどり着き、開けると同時にアルの名前を叫んで座り込む。
もう疲れた、無理。走れない。
それでも確かに人の気配を感じたため顔を上げて確認すると、驚いた表情を浮かべた幼馴染と目が合う。
その後数秒見つめあったあと、案の定アルの怒声が飛んで来た。
「なにやってんだお前!!」
「行方不明なアルを探してたんだよ。村に帰るよ。」
「はぁ!?お前その体調で帰れると思ってんのか!?まだ万全じゃねぇだろ!ナメてんのか!」
「いや本当はゆっくりしたいんだけど!なんか怖い騎士団の人がこっちに来てるらしいから、早く帰ろうって話!!」
「騎士団?あぁ…あいつらか。」
そう言ってアルは下を見下ろす。
私も若干屁っ放り腰になりながら見下ろすと、立派な鎧を身に纏った男性たちが続々とこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「ちょ!?え!?近っ!!もうそこまで来てるの!?」
「一緒に逃げても間にあわねぇだろ。オレがアイツら引きつけとくからお前は両親と一緒に先に出とけ。」
「はい出ましたアルの死亡フラグ建設。私はそういった類は一切認めません。」
「あ"?ふらぐ?何言ってんだお前。」
鼻息荒く両手を組んで駄々をこねるように座り込む。
「アルが一緒に来ないならもう無理。歩けない。」
「あ"?テメェなにわがまま言ってやがる!しばくぞクソモブが!!」
「ぜーーったい嫌だ!!アルと一緒じゃないと嫌だ!そもそもアルが側にいろって言ったくせに!もう離れるのは嫌だ!!!」
「……っ。」
再度下を盗み見ると、青く長く伸びた髪を1つに束ねた細身の男性がなにやら指示を出している姿が見えた。
その後ろには大軍と言わんばかりに騎士たちがズラリと並んでいる。
そんなに逃がしたくないのか。
数の暴力とはまさにこのこと。
「……ふらぐとかなんとか意味わかんねぇこと言いやがって。」
一度大きく息を吐いたアルは私をまっすぐ見つめた。
「オレだって、もう離れるつもりはさらさらねぇよ。」
外の騎士たちの雄叫びが聞こえると同時に、アルは彼らに向かって手をかざす。
その瞬間閃光が走ったかと思えば下は深い深い白い霧に包まれた。
(な、なにやったの?)
下と騎士たちと同じくらいパニックになりながら口を呆然と開けて眺めていると、力強く手を引かれてアルと額がぶつかる。
「オレと一緒に逃げるってことは自分で赤髪の仲間だと宣言するようなもんだ。もう王都にそう簡単に来れなくなる。」
「また人生を賭けた鬼ごっこか、受けて立とうじゃないの。」
「はっ、随分と刺激的な鬼ごっこだな。」
いたずらっ子のように笑みを浮かべたアルにつられ、私も同じように笑いかける。
「そうだね。……もし余裕があったらおんぶしてくれたりすると非常に有難い。」
「その図々しさを直せたらおぶってやる。」
人生を賭けた鬼ごっこでも、2人なら怖くない。
互いに頷いたのを合図に、勢いよく足を踏み出した。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
更新が遅れてしまい申し訳ありません…。
予約投稿ってどうやるんだ!?なにこれ!?え!?文消えてる!?
みたいな悲劇が起こりもう自分で投稿することにしました笑笑
機械はもう信じません。笑笑
また以前のような更新ペースに戻していきますので、今後ともよろしくお願いします!