転生者は、対峙する③
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我ながら無謀なアイデアだったと思う。
でもしょうがないじゃないか。
あれ以外思いつかなかったんだから。
必死に足を動かして外を目指す。
こちらに聖剣使い、つまりクラウスさんが来ているならばそこまで走り抜けるだけだ。
あとは丸投げすればいいはずなのに、極度の緊張感の中で凝り固まってしまった筋肉は言うことを聞いてくれない。
というかそもそも、運動神経がよろしくないのになぜ鬼ごっこにしてしまったのか。
「そーれ。」
「ヒィ!!!」
だからこんなに遊ばれるハメになる。
全力で走る5歳児の姿が面白いのか、絶妙な距離感を保ちながら周辺を破壊していくダニーに苛立つ。
「ようするにキミを傷つけなければいいんでしょ?ならまわりを壊して足止めするのはありだよね。」
違うでしょう!?
そうじゃないでしょう!?
魔法に頼るなって言ってるでしょうが!
そう叫んでも知らぬ存ぜぬで、私が怪我しない程度にモノを吹っ飛ばす。
息も絶え絶えになり物陰に隠れて出口を探すが……この廃墟、無駄に広くて現在地が全くわからない。
行きに緊張しすぎてどこのルートを通ったか全く覚えてなかったのがいけなかった。
なんで鬼ごっこにしちゃったんだよ本当に。
「ほーらほら、どこ行ったのー?」
私がどこに逃げ込んだのか気づいてるくせにおちょくってくる様子を見るに、どうなっても騎士団が来る前に私を捕まえる自信があるのだろう。
ケラケラと笑いながらゆっくりと歩いてくるのは確信犯である。
「あ、休憩しちゃダメだよ。」
そんな声が近くで聞こえたかと思えば、私を隠してくれていた残骸が宙に浮いて粉々の木片と化した。
「うおおおお!?」
「いいねその反応!ほらほらそっちに行くと危ないよ?魔法陣が見えないって本当に不便だね。」
「おっかねーーーー!!!」
追い詰められた私は窓から逃げようと手をかけるが、ビクともしない。
意味が分からずガタガタと動かしていると、先ほどと同じように首元を掴まれて猫のように持ち上げられた。
「はい終了ー。」
ぶらんぶらんと足が宙ぶらりんになり、身動きが取れない。
私が顔を歪めると嬉しそうに笑って、おもむろに顔を近づけて来た。
「びっくりした?実は獲物に逃げられないようにちょっとした仕掛けをしているんだ。中に入るのも外に出るのもボクの許可がいるんだよ。まぁ、この仕掛け以上の魔力を込めれば話は別だけど。」
「え……それって……」
「つまり、魔力ゼロの哀れなキミがココに入ってきた時点でもう逃げられないってことさ。」
その言葉に我に帰った私は、愕然とした。
「ちょちょちょ!?それ!私の負け確定!!」
「ボクは勝ちが確定した勝負しかしない主義だって言ってるでしょ。人の話聞いてないの?」
「それにしてもだよ!?……それ、キミ圧倒的不利だけどいいの?って聞いてくれてもいいんじゃない!?」
「えー……この子なに言ってんだろうバカだなぁ…とは思ったけど。」
「優しさが足りないっ!!」
「キミは思考力が足りないね。まぁ、バカのほうが見てて面白いからいいんじゃない?それよりそろそろ行こうか。」
まさしくその通りと顔を手で覆い隠していると、聞こえてきたダニーの発言に顔が引きつる。
「ま、待って!落ち着こう!一旦落ち着こうよ紅茶でも飲みながら!」
「もう散々構ってあげたでしょ。」
「なんで私がワガママ言ってるみたいな感じになってるの!?」
いくら暴れてもダニーの動きを遅くすることすら叶わない。
むしろ大人しくしなさいとお尻を叩かれ戦意消失。
ああ、私ってほんと雑魚。
どうしよう。
私このまま連れてかれるのかな。
ジワリと涙が滲み、もう泣き叫んでしまおうかと思ったそのときヒューズ先生がダニーの前に立ちはだかった。
「はぁ…もうなんなのおじさん。」
「やめるんだダニー。」
「ええー…またそのくだりやるつもり?口説い。」
苛立ったダニーはヒューズ先生に手をかざすと、先生は血を吐き出して倒れこむ。
「先生!!」
全身を震わせながら拳を握る先生は、咳き込みながらも目線をダニーに向けて口を開く。
「ダニー……お前には感謝している。あの時、お前があの場所で俺に契約を持ちかけていなかったら……心をなくしたビリーを抱いて自ら命を絶っていただろう。」
「…………なにが言いたいの?」
ヒューズ先生は先ほどまでの虚ろな表情から一変し、意志ある生気を宿した瞳でダニー睨みつける。
「お前が俺を利用するために生かしたおかげで、その子に出会えて……人生の目標を持つことが出来たよ。俺は、ビリーをもう一度抱き締めるその時まで死ぬわけにはいかない。」
ヒューズ先生は手をゆっくりと持ち上げ、地面に思いっきり手をつける。
すると突然地響きとともに、先生の後ろから強風が部屋へと吹き込んできた。
あまりの激しさに思わず目を瞑る。
「言ってることとやってること違くない?その身体で一気に魔力を失ったら、死ぬよ?」
「…………全ては妖精の導きのままに。」
「あーあ、こんなに妖精を部屋に入れられたら後で掃除が大変じゃ……」
言葉を不自然に区切り、初めて警戒したように一歩後ろに下がるダニー。
一体なにが起こっているのか。
強風はどんどん強くなり、ダニーに掴まれていなければあっという間に飛ばされていただろう。
『レイちゃん!!!やっとここまで来れタ!!』
耳元で可愛らしい声がこだまする。
妖精の幻聴まで聞こえてくるなんて、私はついに死ぬらしい。
目を固く閉じていると走馬灯のように今までの記憶が溢れ出し、涙が溢れる。
そして頭の中に浮かんだ赤髪の少年がこちらに手を伸ばす姿の映像に、思わず繕うように叫んだ。
「助けて!!アル!!!」
「オレはここだ。モブ。」
その刹那、ダニーに掴まれていたはずの身体がフワリと宙に浮き勢いよく抱きしめられる。
『『イデヨ!!勇者ー!!』』
耳元では未だに妖精たちの声が聞こえ、身体は暖かいなにかに包まれている。
(げ、幻聴じゃない?……ということは本当に勇者が?)
目を開けてみると、お腹には手が回されており誰かに抱き込まれているようだ。
恐る恐る後ろへ視線を向けると飛び込んできたのは。
「…………なにやってんだよクソモブ。」
「……………アル?」
ここにいるはずのない、我が幼馴染だった。
ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
やっと2人の再開まで漕ぎ着けました!
長かったなチクショーー!!
皆さんお待ちかね(?)のアルのターンとなりますので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします!