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転生者は、対峙する②

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「ねぇ、ただの一般人が、どうやって呪いを解いたのか教えてよ。」


首元に鋭利な刃物を突きつけられているような感覚に襲われる。

息が吸い辛くて苦しい。


「な、なんのこと…」


「分からない?どうやって不治の病を治したかを聞いてるんだよ。」


ガタガタと情けなく身体が震え、思わず瞼を強く閉じた。


「あれ?怖がる必要はないよ?ボクはすっごく、キミという存在に興味があるんだ。こんな面白そうなモノを簡単に壊したりなんかしないよ。」


私の頬へ彼はゆっくりと手を伸ばす。

すると耳元でバチっと何かが破裂するような音がして思わず目を開ける。

すると彼の右手が血だらけになっていた。


「な、な、な!?」


「あーやっぱり妖精に気に入られてるんだ。」


「いやそんなことより手!」


「あれ?心配してくれるの?この程度すぐに治るからさ。」


シューっと煙が上がると傷口がひとりでに蠢いて修復されていく。

思わず飛び出しそうな悲鳴を口を押さえることでなんとか飲み込む。


「気持ち悪い?」


「純粋に痛そう。」


「妖精はボクからキミを守ろうと必死なのに、随分とお気楽な感想だね。」


手を左右に振るともう完全に元どおり。

手を握って感覚を確かめているダニーを見て、再度この少年の異常さを痛感する。

そしてまたゆっくりとダニーが私に向かって手を伸ばしたタイミングで、低い声が彼の動きを止めた。


「ダニエル。」


ダニーは面倒くさそうに顔を歪め、振り返る。

私も声がした方へ視線を向けると。


「ヒュ、ヒューズ先生!!」


白衣に手を突っ込んで私とダニーを見つめる、ヒューズ先生の姿があった。


「なに?空気が読めないおじさん。」


「どうしてかは分からないが、こっちに騎士団の連中が向かって来ている。」


「うっわ、そんなことを言いに来たの?騎士団の奴らが来てもなんにも出来ないって。ボクが負けるわけないでしょ。」


「聖剣使いも一緒だ。」


「……はぁ?」


この日一番に呆れた声を出したダニーは、苛立った表情でヒューズ先生を睨みつける。


「そんなわけないよ。勘違いじゃないの?アイツ村から出れないはずだよね?」


「間違いない。本人だ。」


「ッチ、聖剣は面倒だな。……しょうがない。じゃあ移動しようか。」


苛立ちげに発せられたダニーの言葉に反応したヒューズ先生は私を指差し、反論する。


「待て。この子をこれ以上連れ回すな。」


「いやいや、なに言ってるの?まだ肝心なところが聞けてないんだから。あ、そうだ。せっかくだしボクのオモチャにしてあげよう。その方が効率いいし。」


「やめろ!!」


私とダニーの間に割って入り、私を背中に隠すようにしてくれる先生に衝撃を受ける。

それはダニーも同じようで、数秒フリーズする。


「なにかのジョーダン?」


「大真面目だ。」


その様子を見たダニーは両手を挙げ、わざとらしくビックリしたような表情を浮かべて言葉を続けた。


「へぇ!!赤の他人の子どもを心配する余裕があったなんて、知らなかったよ!」


「っ。」


「その熱意、自分の息子に向けたほうがいいんじゃないの?」


先生は石になったように固まった。


「息子?」


「このおじさんには可愛い可愛い息子がいるんだよ。キミだってさっき会ったでしょ?」


その一言で私の脳内にある1人の男の子が浮かび上がり、小さくその名を呟く。


「………ビリー。」


「当たりー。ご褒美に面白い話を聞かせてあげる。」


ソファに胡座をかいて座ったダニーは、横目で動けなくなったヒューズ先生を見ながら話し出した。


「このおじさんの奥さんと息子のビリーは、不治の病を患っていた。ずっと家から出られず、家の中から外の公園を眺める日々。しかも可哀想なことに、ビリーの症状は進行が早かったんだよ。あっという間に寝たきりになってしまうほどね。」


わざとらしく涙を拭う仕草をしたダニーは、瞳を細めながら袖で口元を隠す。


「なんとかできないかと考えて研究室に籠ったおじさんは、ついに黒魔術に手を出したのさ。」


「黒魔術?」


「簡単に言えば…魔物の血液を自身の体内に混ぜることで驚異的な生命力と魔力を手に入れることができる。」


なにそれすごい。


口を半開きにして呆けていると、突然指を鳴らしてにこやかに笑う。


「ところがどっこい!入れた魔物の血液がうまく適合しないと、精神の崩壊を招く大きな落とし穴があるんだよ。ビリーは残念ながら不適合!そのおかげでキライなものを全て破壊するようになっちゃったんだ。おめでとー、殺戮マシンの完成だね。」


「違う!!ビリーは、あの子は違う!」


「んーどうかな?試しに騎士団たちと戦わせてみる?」


「やめろ!!」


「そうだねー。そんなことしちゃったら完全にこちら側として指名手配されるね。あーあ、可哀想なビリー。」


ダニーに詰め寄る先生だったが、一度ダニーが睨みつけるとまるで上から押さえつけられているかのように地面にひれ伏した。


「そっちこそやめてよねー。誰のおかげでビリーが生きてると思ってるのさ。ボクが制御してあげてるからでしょ?それなのに邪魔をしてくるなんて理解不能。図が高いよ。」


「…頼む。ビリーをけしかけないでくれ。」


「いいよ……とでも言うと思った?ダメに決まってるじゃん。せいぜいそこでボクのために頑張って働くビリーの姿を眺めているといいよ。あ、そんなビリーの姿を見たくないなら今すぐここで死ぬ?」


先生はうな垂れるように地面にひれ伏す。

その様子を見て、私は2つ理解したことがある。


1つ、ヒューズ先生は息子さんを守るために道を誤った不器用な父親であるということ。


2つ、ダニーのペースに持っていかれると脱することはほぼ不可能であるということ。


ヒューズ先生はもうこの世の終わりみたいな表情だからさっきの問いに頷きかねないし、ダニーも絶賛お怒りモードで彼のターン継続中である。


はっきりいって帰りたいし、被害を受けるのも御免被るのだが……。


「もし頷いたら、今度こそ許さないよヒューズ先生。」


気がつけば口から言葉が飛び出していた。

驚いたようにこちらを見るヒューズ先生に、私はさらに続ける。


「私の両親にまだ謝ってないくせに。」


「……俺はもう会わせる顔がない。」


「先生の顔なんて知ったこっちゃないですよ。四肢捥いででも連れ帰らないと、理由も分からず裏切られたと両親が泣く姿を見て結局私が後悔するんです。私の人生計画を台無しにするつもりですか?」


「人生計画?」


興味深そうに私に問いかけるダニーを横目で見ながら、深く息を吸い込み身体全身を使って大きな声を出す。


「私は!!後悔しない人生を送ると決めた!!好きなことをして、大好きな人たちに囲まれて楽しく生きて100歳ぐらいで死ぬ予定なの!」


そして大きな音を立てて一歩踏み込み、面白そうにこちらを見つめるダニーを鋭く睨みつける。


「ビリーを騎士団にけしかけるなんて、そんなんされたら残りの90年以上後味悪すぎて夢に出てきそうだわ!!自己中心的と言われようがなんだろうが、絶対にそんなことさせないんだから!!邪魔されてたまるもんですか!!」


「わーお、本当に面白いね。ますますキミが欲しくなっちゃったよ。」


口元を袖で隠しながら私に一歩近づくダニー。

よし、完全にヒューズ先生から私に意識が向いた。

震える足を叩き気合を入れて、勢いよく自分自身を指差した。


「そんなに私が欲しいなら、魔法・体術・心理戦・ビリーに甘えず、己の足で捕まえてみな!!」


「すごい安全を確保してきたね。プライドはないの?」


後ろからなにか聞こえるが知ったことではない。

全速力で外に向かって走り出す。


人生を賭けた鬼ごっこが、幕を開けた。


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