転生者は、たどり着く
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「どうだい少年。楽しいかい?」
私の言葉に小さく頷く男の子。
表情は全く変わらないが、楽しいならそれでいい。
ふとランちゃんたちのほうへ視線を向けると、先ほどの女の子の手当をしている真っ最中だった。
「その格好、女盗賊一派よね?どうして1人でいるの?」
「うるさい!!い、痛いっ!」
「ほら動かないで。」
女の子は痛みで声を震わせながらも、鋭く私たちを睨みつける。
まぁ正確に言うと………
「オシテ。」
「はいはい。」
ブランコに乗っているこの男の子を、だ。
提案に興味を示した男の子は、私の手を取り足早にブランコまで移動して背中を押すように言ってきた。
そしてこの子の気がすむまで、ブランコで遊んであげている状況である。
(あれ、私、なにしてるんだっけ。)
首を傾げながらも男の子の相手をしていると、ランちゃんが再度女の子に問いかける。
「ここは女盗賊一派が支配しているはずでしょう?ここに踏み入れば貴方たちと戦闘になると思っていたんだけど。」
「……全部その化け物のせい。」
勢いよく立ち上がった女の子は、再度大きな刀を構えた。
「その化け物が!ネェさんたちを!!」
「落ち着きなさい!!」
「許せない!!殺してやる!」
怒りに震える少女を見て、ブランコを止める。
無表情で私を見つめる男の子と視線を合わせ、問いかけた。
「なにをしたの?」
「ソウジ。」
「掃除!?ネェさんたちをあんな目にあわせたことが掃除だって言うの!?」
男の子の言葉を聞い女の子は激高した。
それでも男の子は気にしていないのか、私にだけ視線を向けてくる。
「ダニー。」
「……ダニーと知り合いなの?」
小さく頷く。
「……頼まれたの?」
再度小さく頷く。
「ダニーなんてやつは関係ない!ソイツがやったんだ!!あんなに血がたくさん出て…助かるわけない!医療品なんてアタシらには手に入らないんだぞ!!」
震える手で刀を握りしめる少女は、きっと1人で仇を取りに来たのだろう。
まだ幼いのに、武器まで持って。
「ここで待ってて。」
男の子に待っているよう声をかけて威嚇し続けている彼女に近づく。
私は自分のポシェットからあるものを取り出して女の子に差し出した。
「はい。」
「っ?」
コレを初めて見たように大きな瞳を瞬きする。
説明をしようと口を開く前に、ランちゃんが大声を出した。
「はいって……貴方!これハイグレードポーションじゃない!」
「うんそうだよ。これ使える?」
「まぁ…呪いを解くわけではないから、何回かに分けて使えるはずよ。でも」
「じゃあランちゃん、その子の仲間のところに行ってあげて。もしかしたら助けられる人がいるかもしれない。」
「はぁ!?なに言ってんのレイ!!ご両親はどうするのよ!」
「もちろん、助けに行くよ。」
呆然とこちらを見つめる女の子の手にポーションを握らせ、安心させるように微笑む。
「大丈夫。ランちゃんはね、王都指定調剤師っていうのに任命されたすごい人だよ。このポーションをうまく扱える人だから。」
「待ちなさいレイ!貴方1人で行かせるわけには行かないわ!」
「1人でいかないよ。あの男の子に案内してもらう。」
「なに馬鹿なこと言ってるの!!どう考えても信用できないわ!」
「私のことは襲ってこないと思うよ。ブランコ押したし。」
「そんなことで納得できるわけないでしょう!?」
「なんでそこまで…」
オロオロと私とランちゃんを交互に見て、不思議そうに声をかけてくる女の子に親指を立てて笑いかける。
「ここにいる女同士、助けあって生きていかないと!そうでしょう?」
「貴方ねぇ……。」
呆れるランちゃんの横で女の子は俯き、小さな声で呟く。
「……ネェさんもそう言ってた。女同士助けあいが大事って…。」
ポロポロと綺麗な涙を零してポーションを胸元で握りしめる姿は、まだまだ幼い。
その様子を見たランちゃんもこれ以上はなにも言うつもりはないのか、深くため息を吐く。
「その子を頼んだよ。ランちゃん。」
「本当に5歳児とは思えないわね。………大丈夫なの?」
「この私を信じなさい。」
ドヤ顔で胸を大きく一度叩き、笑顔で2人を送り出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さてと。」
気合いを入れて後ろを振り返る。
男の子は言いつけを守り、ブランコに乗ったまま私をじっと見つめている。
「旧ギルド本拠地って知ってる?」
私の問いかけに小さく頷く。
「案内してくれる?」
しばらく私を見つめたあと、おもむろに立ち上がって歩き出す。
「コッチ。」
「よしよし。」
男の子は無言で歩き続ける。
その後ろ姿を見ただけでは、女の子のお仲間を掃除したようには全く見えない。
「あ、そうだ。私はレイ。」
「レイ。」
「そうそう。君の名前は?」
「コッチ。」
はい無視ね。オッケー。
子供2人が通るのにちょうどいいくらいの狭い道を進みながら、こっそり男の子の顔を盗み見る。
生気のない白い顔、虚ろな目。
服には血が飛び散ったような跡があることに気がついた。
あの記憶の男の子にほぼ間違いないだろう。
「キライ。」
「え?」
男の子がある一点を指差し、そのまま横にスライドさせると突然目の前で血が噴き出した。
その血飛沫の中で突然目の前に大きな獣が姿を現し、後ろに倒れこむ。
「な、な、な!?」
「ジャマ。」
その巨体を踏みつけ先に行く男の子に着いていかなければならないのに、足がすくんだように動けない。
「コッチ。」
一撃かよぉおおおおお!!!
私にはまったく見えていなかったこの恐ろしい顔の生き物は、多分魔物だ。
それなのにその生き物を一撃で仕留め、表情一つ変えないこの子は一体何者なのか。
私に見えるってことは人間なんだろうけど。
血の匂いで口元を押さえていると、しびれを切らしたのか私の手を取って勢いよく引っ張る。
ごめん魔物。踏みつけたけど祟ったりしないでね。
「あ、あのさ…私すっごい弱いしこういうの慣れてないから…できれば穏便に……」
顔面蒼白で訴えると、なにも映さない虚ろな目で凝視したのち小さく頷く。
「お?お?いいの?本当に?」
「ブランコ。」
「お、オッケー!ブランコ!また押してあげる!!」
私の言葉にまた小さく頷いた男の子は、ゆっくりと足を持ち上げ……。
ドゴォオオオオオオン。
壁を蹴り破った。
へいへい。
難しい言葉を使ったお姉さんが悪かったよ。
土煙が上がるなか、姿を現したのは門構えが立派な廃墟。
直感で分かる。
ここが、旧ギルド本拠地。
「ダニー。」
「ここにいるんだね。………よし、行こうか。」
私の言葉に頷いた男の子に続いて、私は旧ギルド本拠地に足を踏み入れた。