転生者は、迎えに行く
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すっきりと目が覚めた。
ろくに起こすことができなかった身体は嘘のように軽くなり、視界良好。
額に冷えピタのようなシートが貼ってあるのは……きっと我が友ランちゃんの優しさだろう。
『レイちゃん、気分はドウ?』
私を気遣っているのか小声で話しかけてくる妖精に、安心してもらうように一度頷く。
「疲れが一気に取れた感じだよ。心配してくれてありがとうね。もしかして結構寝てた感じ?」
『レイちゃん元気ー!ヤッター!』
『寝てたネテタ!もう夕方だヨ!』
「まじですか…なかなか寝たな。さすが私。」
私が話したのが嬉しかったのか、妖精の粉を撒き散らしながら興奮したようにあちこちから声が聞こえる。
明るい妖精たちに元気をもらい、気合いを入れるために頬を思いっきり叩く。
「………よし、会いに行くか。」
『誰ニ?』
「ダニーとかいう若造にだよ。」
ドヤ顔で決めた私の言葉に騒ぎ出す妖精たちを無視して布団から立ち上がり、研究室内を覗き見る。
窓の外は夕陽色に色づき始めていた。
静かすぎる部屋の中を警戒しながら移動していると、耳元で半泣きの妖精の声が聞こえる。
『レイちゃんイヤー!行っちゃダメー!』
「……からの?」
『ダメ!ダメなノ!!行っちゃイヤ!』
「あー……ダメか。」
いつもならこの「からの?」戦法でチョロい…間違えた、素直な妖精たちを上手く丸め込め…じゃなくて、説得できるのに効果はまるでない。
これは本当にダメなパターンである。
どうしたものかと悩んでいると、研究室の扉が勢いよく開く。
視線を向けるとそこには大きな買い物袋を持ったランちゃんが、驚いたように私を凝視していた。
「レイ!!」
ランちゃんが買い物袋を放り投げて近づいてくる。
「心配したのよ!?もう数時間もずっと目が覚ないし、ご両親を探してもどこにもいないし、ヒューズ先生もいないし!一体どうしたのよ!」
そんなに叫んでしまうほど心配かけちゃっていたなんて…ごめんねランちゃん。
これが終わったらなんか甘いもの買ってくるよ。
彼の優しさに涙が出そうになるものの、ちゃんと説明しなくてはと順を追って説明する。
「……なんかとんでもないことに巻き込まれてるわね。」
「私もそう思うよ。」
ランちゃんは渋い顔のまま私に問いかける。
「それで?まさか1人で行くつもりないでしょうね?」
「え?いや1人で来いって言われたし、1人で行くよ。」
「ねぇバカなの?危機感ゼロね!そんなんじゃ死ぬわよ!!」
剥がれかけていた冷たいシートをグリグリと私に押し付けながら、ポケットから小さな石を取り出す。
「?なにそれ?」
私の質問に一切答えず彼がその石を握ると、そこからなんとも聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「こちらクラウス・バートン。申し訳ないが今は手が離せない。伝言がある場合はピーっという音の後に」
「あ、あれ!?クラウスさん!?なにこれ!?」
「うるさいわレイ。兄さん、ランディよ。ダニーという男についてなにか知ってることがあれば教えてちょうだい。連絡待ってるわ。」
「兄さん!?え!?嘘でしょ兄さん!?」
「今気づいたの?」
「なにこの美男兄弟!この世界やばすぎ!」
「なに興奮してるのよ。本当にバカね。」
淡々とした表情で買い物袋からパンを取り出し、私に投げつける。
なんとか落とさずキャッチすると、彼は同じ種類のパンに噛みつきながら上着を羽織りだした。
「い、意味が分からないんだけど…どっか行くの?」
「何言ってんの。お父さんとお母さんを助けに行くんでしょ?ワタシも行くわ。」
「え!?」
確かにランちゃんに協力をしてもらうのも有りかと考えた。
やはり1人で慣れない土地を歩き回るのは不安要素が多すぎるし、それにやっぱり味方がいるのは心強い。
けれどどうしてもあの青年の言葉が気になるのだ。
「必ず1人で来ること。」
私の直感的な何かが、言う通りにした方がいいと警告している。
それに友達を危険かもしれない場所に連れて行くのは、なによりも心が痛い。
「その……ランちゃん、気持ちは嬉しいけど。」
「放っておいたら死にそうな友人がいたら、あなた…大人しくしてられるの?」
「いやそれは……無理だけど。」
「つまりはそういうことよ。ほら、そのパン食べて、さっさと移動するわよ。最も治安の悪い旧ギルド本拠地まで、このワタシが案内するわ。」
「なんと強引な……。」
でもなんと優しく、有難い言葉だろうか。
「さぁ、売られた喧嘩は買わないとね。」
ランちゃんに帽子を被せてもらいながらその言葉に頷き、両親を救うべく外へと飛び出した。
その後部屋に取り残された妖精たちは慌ただしく飛び回る。
『どうしよう!ドウシヨウ!』
『レイちゃんがピンチ!大大ピンチ!』
『助けなキャ!』
『でもミーたちじゃアイツには勝てないヨ!』
どうしよう。どうしよう。
1匹1匹が頭を抱え、懸命に考える。
妖精たちが行ったところで…すぐに握りつぶされて終わりだ。
むしろ妖精に好かれているということに反感をかって、彼女を危険に晒してしまうことになりかねない。
だとすれば、もう強力な助っ人をお取り寄せするしかない。
けれどたった1人の少女のために、あのダニエルに命をかけて立ち向かう生き物なんて存在するはずが…。
その瞬間、その場にいた全ての妖精の羽が小刻みに震えた。
1匹として言葉を発することはなかったが、一つの可能性を思いついたことによる興奮で妖精の粉が空中に舞い上がる。
いるではないか。
たった1人、天地がひっくり返ってもあの子を裏切ることがない、完璧な助っ人が。
『『迎えに行コウ!!』』
思い浮かぶ赤色を目指し、妖精たちは自身の羽を大きく広げて羽ばたいた。