転生者は、違和感を感じる
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いつの間にやらえらいこっちゃ!
多くの方に見ていただけて本当に嬉しいです^_^
少しおふざけは控えめとなって来ますが、楽しんで読んでいただけると嬉しいです!
ストーリー進めるぞー!
「どうだいヒューズ…なにか分かったかい?」
しかめっ面で私のカルテをじっくりと見たヒューズ先生は、父親の問いかけに大きく頷く。
「こりゃあ、魔巣欠陥だな。」
「マソウケッカン……?」
聞きなれない単語に家族一同首を傾げると、ヒューズ先生は一度咳払いをして私に人差し指を突き出した。
「魔巣ってのは俺たちが生まれながら持っている魔力を精製し蓄えておく臓器のことだ。この世界に生きている人間にはあって当たり前だが……検査結果を見るにレイちゃんにはコイツがほとんど存在しないと言っていいだろう。」
「存在しない!?」
「そんな!!レイちゃんは!?レイちゃんは大丈夫なんですか!?」
両親がヒューズ先生に詰め寄るが、彼は一度深く深呼吸する。
決意を固めたような表情に、こちらも身体が強張る。
まさか2度目の人生も早死のパターンか?
不気味なほどの静寂が病室を包み、先生がカルテを閉じると同時にはっきりと私たちに告げた。
「……全くもって問題ない!!」
数秒瞬きして頭の中を整理する。
先ほどとはまた違った静寂が病室を支配する中、父親が恐る恐ると挙手をするとヒューズ先生は依然と真剣な表情で質問を促した。
「あ…あの……え?問題ないの?」
「ない!」
「普段の生活に支障は…?」
「周りがサポートすれば問題ない!」
「その程度ってことは…本当に問題ないんだ……」
「おう!よかったな!」
ここで初めてヒューズ先生がにこやかに笑い、こちらにピースをしてきた。
なにそのピース、うぜぇ。
思わず服を握りしめて震えながら俯く。
そんな重々しい表情で告知する内容じゃないよ!拍子抜けだよ!!
いやよかったけども!!
余命あといくばくかとか言われなくてよかったけども!!どうすんのこれ!?
なんか変な雰囲気になっちゃったよ!?
「な、ならよかったです……ありがとうございます。」
さまざまな感情をなんとか飲み込んで、引きつった笑みを浮かべてなんとかお礼を言う。
私の言葉を聞いて我に返った両親は安心したように深くため息を吐くと、全力でヒューズ先生をど突いた。
「いってぇええ!!」
「そんな顔するな!びっくりしただろうが!!やめろ!!」
「そうですよヒューズさん。今度同じことしたら土に還しますからね。」
「ご、ごめんて!!エマちゃん目!目が死んでる!!ごふぁ!!」
うわぁ……母親の拳が先生のお腹にめり込む瞬間を見てしまった。
若干可哀想になりながらも眺めていると、先生が両手を挙げて降参しながら言葉を続けた。
「ごほ、あ、そうだ!確かに問題はないが、いくつか注意しなきゃならんことがあるんだ!」
「注意しなきゃならないこと?」
そんなことがあるなら先に言ってくれよ。
そんな私の表情に気づいているのかいないのか。両親がピタリと動きを止めたところで、先生は一度咳払いをする。
「おう。絶対ってわけじゃないが、念のためだな。これからそれを説明する。」
なんだ、真面目な話が出来るじゃないか。
そう思い私も背筋を正すと、こちらを見た先生がニカッと笑う。
「ちと5歳児には話が難しいからな、レイちゃんはどこかで時間を潰しといてくれや。俺はエドワードたちに説明するからよ。」
「え?いや」
「大丈夫!病院の中は安全だからよ!ほらほら!」
中身は成人しているので大丈夫ですなんて言えず。
言われるがまま背中をグイグイと押されて外に出される。
「あ、あの!」
「………またな。」
振り返った先には親指を立ててにこやかに笑う先生。
そして先ほどの形のまま動いていない両親が一瞬見えて、無情にも扉が閉められた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
遅い……気がする。
時間を潰してとは言われたが、やけに最後の光景が気になって扉の前で行ったり来たりを繰り返す。
話し声が聞こえるかと思って扉に耳をつけるが、何も聞こえない。
時計がないためどのくらい待ったのか分からないが、ちょっとした注意事項を説明するだけでそんなに時間がかかるのだろうか。
(退屈だな…)
診断室の扉に寄りかかりため息を吐くと、ふと感じる視線。
なんとなく横を向くとさっきまで誰も居なかった椅子に、少年が体育座りで座っていた。
黒髪で長い袖で口元を隠している様子は、どこか常人離れした雰囲気を醸し出している。
「やーっと気づいたんだ。遅いよ。」
「あ、え?私?」
「そうだよ。ボク、ずっとここに座ってたのにさ。流石に鈍感すぎじゃない?」
ニヤニヤとしながら、彼はこちらに一歩足を踏み出す。
それに比例して、私は無意識に一歩横へずれる。
「え、今から警戒してるの?バカなの?」
「初対面な人にバカとか言われたくない。」
「ふーん?まぁどっちでもいいや。キミ、暇でしょ?ちょっとボクとおしゃべりしようよ。」
「申し訳ないけど私は忙しいの。また今度ね。」
「嘘だー。さっきからそこをウロチョロしてるだけじゃん。なにしてるの?」
「両親が出てくるのを待ってるの。」
……って会話しちゃってるし。
いつのまにか私の横で同じように扉に寄りかかる少年に、思わず眉が寄る。
この子、一体何がしたいんだ?
病院にいるということは、具合が悪いのかもしれない。
顔色は青白いし、身体はヒョロヒョロだし。
あ、もしかしたら入院していて遊んでくれる子供を探しているとか?
一度そういう方向に思考が持っていかれると、もうそうとしか考えられない。
なんとなくおざなりにするのもと思い、彼のおしゃべりに付き合ってあげることにした。
「ねぇ、キミ、具合悪いの?」
「いや全然。ただ…なんか特殊な体質っぽくて、ちょっと調べにきただけ。」
「へぇ?奇遇だね。ボクもいわゆる特殊体質なんだよ。どんな症状なの?」
「なんか魔力を精製する臓器?とかなんとかが足りないらしいよ。私もよくわからないんだけどね。キミは?」
「ボク?ボクはちょっと身体が弱くてね、定期的に薬を摂取しないといけないんだ。黒い薬をね。」
「黒い薬?大丈夫なのそれ。なんか危ない薬とかじゃなくて?」
「平気平気。」
どうとでもないという風に袖を振って否定すると、私の顔を覗き込んでくる。睫毛長っ。
「ま、ボクの話はさておき。この病院に調べにきたってことは、いつもは違うところに住んでるの?」
「そうそう。王都から離れた小さな村にね。ここから数日くらいかかるんだよ。」
「ふーん村か。そっかそっか。」
興味深そうに相槌を打つ少年。
「行ったことある?」
「ん?さぁどうかなー。ボクはいろんなところに行ったことがあるから。」
「へぇ?例えば?」
「砂漠の中心にあるイかれた森…とかね。」
「なにそれ?どこ?」
「わーお。ま、知らないならいいや。とりあえず雑魚なキミには縁のない場所だよ。」
「遠慮ないな。否定はしないけどさ。じゃあ選ばれし者のみが行ける場所とかそんな感じ?」
「お、いい線いってる。そんな感じだよ。」
気がつけば向かい合って少年と話し込んでいた。
独特の世界観を持つ少年は、今まで対峙したことのないタイプだった。
掴み所のないこの話し口調は、どこかで聞いたことがあるような気がするけど。
どこだっけな。
「あーところでさ、キミに一つ確認したいことがあるんだよね。」
「ん?確認したいこと?」
人と会話しているのに考え事をしてしまったことに苦笑しながらも、少年に続きを促す。
彼はニヤリと笑うとすぐに口元を袖で隠して爆弾を投下した。
「キミってさ、
収集の魔女に会ったことあるでしょ?」