転生者は、ふたたびやらかした
よろしくお願いします!
ゆーっくり本編は進みます笑
「レイちゃん、本当に1人で大丈夫なの?」
「うん平気。探検に行くの。」
「や、やっぱり僕も一緒に着いて」
「行ってきます。」
「レイちゃぁあああん!!」
「家の周りだけよ。すぐ戻ってくること。」
「うん。」
そう一言両親に告げた少女の後ろ姿を見ながら、そっと呟く。
「……心配だね。」
「ええ、でもあの子はあんなに妖精に好かれているもの。きっと妖精たちが守ってくれるわ。」
少女が通った道には妖精の粉がふわふわと浮かび上がっている。
「……なぜだろう。最近レイちゃんがとんでもない子なんじゃないかと思うときがあるよ。」
「ふふ、そうね。まるで人生2回目みたいな感じよね。」
その読みが当たっているなんて、思いもせず。
気づかないうちに妖精に集られてる娘の姿を見て、2人は確かに幸せを感じていたのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
牧場から家までの道のり。
その緩やかな道で這いつくばり、ひたすら草木を掻き分ける。
「特別隊、なにか発見しましたか。応答願いますどうぞ。」
『ナイナイー!』
『こっちもナイナイー!』
「そっか、ありがとう。」
深くため息を吐き、立ち上がる。
あ、やべ、泥がついてる。
膝の泥を叩き落とし、腕を組み、姿の見えない協力者に声を掛ける。
「さて皆さん。何か言いたいことがあればどうぞ。」
『『レイちゃんのドジっ子ー!』』
「……ほんとすみません。」
結局あの後体調不良のため寝込んだその翌日。
1人で探検したいと言い出した、その訳は。
もちろん、体調不良になった原因であるあのポーションを探すためである。
「極めて由々しき事態であるため、緊急会議を開きたいと思います。」
『ユユシキー!ユユシキー!』
『会議ダー!』
「静粛に願います。」
探した。そりゃもう探した。
家の中、牧場、そして道。
妖精たちにも手伝ってもらったあのポーションは全く見つからない。
「はぁ…一体どこにあるのか……」
『アー!レイちゃん落ち込んでル!』
『元気出しテ!ホラ!変なカオー!』
「いや見えてない見えてない」
せっかく母親の病気を治せると思ったのに、やはり人生はそう上手くはいかないものらしい。
『ミーたちもビックリ!』
『魔力の流れがあるはずナノニ、全く見当たらないネー!』
妖精たち曰くポーションには魔力の流れがあり、彼らはそれを読み取ることが出来るらしい。
それなのに……
『こりゃビックリ!!マーッタク!!!見当たらないネ!』
『フシギ不思議!』
「そんなことあるの?」
『ワカンナーイ!!』
『もうダレかが使っちゃったのカモー!』
「まじですか…」
前途多難すぎないか。
思わず目頭を押さえ、再度深くため息を吐く。
「おい」
「いやぁほんとどうしよう。あれもう一回作る………とか?…また具合悪くなること確定じゃん…無理無理。」
『アー!!レイちゃん!』
「なに?……それにあのポーションが他の人の手に渡るといろいろと面倒なことになりそうだよね…妖精の魔力を使って作ったポーションとか絶対やばいよね。取り調べされること確実だよね。」
『モー!!レイちゃんウシロー!』
『レイちゃんのおバカー!』
「バカって…そこまで言わんでも……ん?…な、なんだこの視線は……」
この突き刺さるような視線、なんとなくつい最近経験したような……。つい最近というか、昨日というか、24時間前というか……。
(ま、まさか…………)
まるで体が錆びたかのようにゆっくりと後ろを振り向く。
目に入るのは昨日初めて見かけた金色の瞳と、目立つ赤。
「妖精の魔力を使ってポーションを作った………だと?」
「あ、えっと…」
「さっきから人の家の前でペチャクチャとデッケェ独り言を!!嫌がらせかこの野郎!!」
青筋を浮かばせ私に一歩近づいた瞬間、なぜか驚いたような表情へと変わり、少年の体が不自然な形で固まった。え、なにしてるの。
「おいテメェ!!なにしやがった…!!!」
「いやこっちのセリフ。なにしてるの。」
「とぼけんじゃねぇ!!コイツらに拘束魔法を使わせただろうが!クソっ!離しやがれ!」
「拘束魔法?そんな物騒な魔法使ってるの?誰が?……もしかして妖精が?」
しばらくの沈黙。
さっきの驚きの表情に加え、金色の瞳をこれでもかというくらい見開き私を見つめる。
おお、そんな顔でもイケメンはイケメンだな。あまりにも理解できないことが多く、思わずそんなことを考える。
「…………まさか……見えてねぇのかよ。……目の前の魔法陣…。」
あれ?これ…………やらかしたかもしれないわ。
遠くの方で『レイちゃんのアホー!』と小さく聞こえたような気がした。