転生者は、友達を得る
57000PVありがとうございます!
またブックマーク登録、評価、感想をいただきありがとうございます!!
ありがたやありがたや……モチベーション爆上がりです!
今後もブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております^_^
気がつけば毛布を掛けられて横になっていた。
なんども瞬きをして視界をクリアにしようと試みるが、まるで夢の中にいるかのようにフワフワとしていて落ち着かない。
なにこれ気持ち悪っ。
ぼんやりとした意識のなかで顔を横に向けると、こちらに背中を向けて何かを一心不乱に書いている少年の姿が目に入る。
なんとなく、直感的に幼馴染のアルだと思った。
「アル……」
顔を見て安心したくて、服を摘んで軽く引っ張る。
しかし振り返った人は想像していた幼馴染ではなく、白衣を着たイケメンのランディさんだった。
「あらお寝坊さん、調子はどう?」
「…気分は少し良くなりました。」
「そう…ならよかった。もう具合が悪くなるなら先に言いなさいよ!びっくりしたじゃない!それに後始末大変だったんだから!」
そう言って私の頭を撫でてくれるランディさん。
人肌がちょうど良くてうっとりするが、冷静になって考えるととんでもなく恥ずかしい間違いをしたことに赤面する。
身長も髪の色も全く違うのに、どこをアルと間違えたのか教えて欲しいレベルだ。
「すみません…。でもこれで信じてもらえますか?」
「もっちろんよ!あんなの見せられたらね!」
鼻息荒く興奮するランディさんに思わず笑ってしまう。
すると彼は思い出したように声をあげた。
「ねぇねぇこれ見て!」
私に机の上が見えるようにずれると、そこには小さい分量ながら大量の青色のポーションが置かれていた。
「ん?なんですかこれ?」
「貴女がすごいのを作ってくれたから、ついつい頑張っちゃったのよ!」
得意げに青色の液体……MPポーションを掲げるランディさんは得意げに言い放つ。
「あの原液は魔力濃度が高すぎて使いにくいから、ちょっといじらせてもらって改良してみたのよ!そうね……名付けて!MPポーショングレネード!」
「MPポーショングレネード!?」
その名前はなぜかとても聞き覚えがある。
確かそれって…。
「ふふん!これはね」
「ポーションを投げつけた相手のMPを吸い取ることができる、超貴重アイテムですね!?」
「え?」
驚いたように私を見るランディさんの、その反応から見て確信する。
なにこの人、めっちゃ有能じゃん。
感動してポーションをそのまま眺めていると、ランディさんは私の顔を覗き込み言葉を続けた。
「すごいわね!!」
「え?」
「見ただけでこのポーションの効力を言い当てるなんて!!ますます見直したわ!」
「……え、いや。」
「もう!照れなくていいわよ!ワタシが説明する前に効果を言い当てたんだから!自信持ちなさい!!」
そう言われてはっとする。
私は別にこのポーションを見て、効能を判断したわけではない。
ランディさんがMPポーショングレネードという名を叫んだから、前から知っている情報が勝手に口から出てきただけ。
つまり、私はMPポーショングレネードという名をもともと知っていたのだ。
「ランディさん。」
「ん?なに?」
「そのMPポーショングレネードによく似たポーションって、他にありますか?」
「ないわね。理論上、これは強個体の魔物にも充分通用する一級品よ?結構優秀なワタシでも、貴女と妖精が作ったMPポーションがなければ作れなかったんだから。」
その言葉をキッカケに、一気に脳内から溢れ出すように映像が蘇る。
重厚感溢れる戦闘BGMに合わせて、私の身体は興奮と緊張で震えていた。
「やばいやばい。どうしよう強すぎ。」
挑発的なエモーションを繰り返す相手に大苦戦である。
体力はそんなに多くないから大丈夫だろうとタカをくくっていたが、使用魔法がエゲツなさすぎやしないか。
HPを一瞬で1まで減らす魔法や、攻撃力の高い闇魔法。
しかもいくら頑張って耐えて相手のMPを半分くらい減らしても、相手自身のMPを回復させる大回復魔法がえげつない。
あれだけ準備していたのに防戦一方だ。
こちらの回復ポーションが切れたら間違いなく負ける。
戦友たちが脱落していった気持ちが痛いほどわかった。
「クリアさせる気あるのかちくしょう……!」
歯を食いしばって必死に頭を回転させる。
せっかくここまで来たのに終わるわけにはいかない。
またやり直しなんて今度こそ心がめげる。
気持ちを落ち着かせるために持ち物を確認してみると、あるアイテムが目に止まったのだ。
「こ、これだ!!」
この闘いの前に調合レベルをSランクまで上げておき、かつ私の推しに上手く交渉しないと手に入らない、MPポーショングレネードが。
「一個しかないけど……ええい!一か八かだ!力を貸してくれぇええええ!」
「ねぇちょっと?どうしたのよ?」
ランディさんにおデコに手を当てられて我に帰る。
「まだ具合悪いの?」
「いえ。大丈夫です。」
そう?と不思議そうに首を傾げるランディさんに曖昧に笑ってごまかし、再度ポーションの方に視線を向ける。
浮かび上がってきた映像のポーションと、やはりとてもよく似ている。
しかも効果まで同じときたら、これはなにか意味があるのではないか。
「その顔は気になって仕方ないっていう表情ね。」
「え?」
「分かるわ。このポーションはさっき貴女の言った通りの効果を持つはずだけど、やっぱり実際に使ってみないとね!」
「いやあの」
「大丈夫!この子の力を信じましょう!」
「わー、圧がすごい。」
興奮した様子で無理やり私にポーションを持たせ、颯爽と両手を広げ叫ぶ。
「さぁ!ワタシのMPを吸い取ってごらんなさい!!」
「さては変態ですねランディさん。」
「早くしなさい!!」
キラキラと期待に満ちた青年の想いを裏切るわけにはいかなかった。
仕方ない。投げてあげるか。
少し距離をとって野球のピッチャーさながらにポーズを決める。
「行きますよー!おりゃ!」
ちなみに言っておくが、私はただの凡人で特段肩がいいわけでもない。
だから。
「ここにいたのかランディ!いつまでレイちゃんを独り占めしてんだ!」
「え!?ちょ!」
投球がずれて、私とランディさんの間にある窓から突然顔を出したヒューズ先生にぶち当たったのは、仕方ないことなのである。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ヒューズ先生、大丈夫ですか?」
「お、おう……」
あの後ズルズルと脱力したように伸びてしまったヒューズ先生をなんとか部屋に入れ、横にさせる。
「ヒューズ先生が急に飛び出してくるからですよ。」
ランディさんが少しむくれながら先生にお茶を出すと、ヒューズ先生がばつが悪そうに頭を掻く。
「だってよ、迎えに行ってもあの場所に居なかったから焦ったんだぜ?もし親友の娘さんが男の毒牙に襲われでもしたら俺のせいだろ?」
「女には興味ないわよ。」
「え?」
「なんでもないです。」
むくれたように顔を背けるランディさんに苦笑すると、ヒューズ先生はその勢いのままランディさんの後ろにある残りのポーションを手に取った。
「とにかくこれは没収だ。……まだ子供なのにこんなもの作れるなんてな。」
ボソッとヒューズ先生が呟いた内容に、ランディさんが激しく反応する。
「こ、子供って!!わ、僕はもう16です!!それに先生がなんで没収するんですか!」
「っ!じゅ、16でもまだ子供だ!俺みたいな大男でも伸びちまうんだぞ!?こんな危険なもの見過ごせるか!ボスに告げ口されたくなきゃ言うことを聞け!」
「そ、そんなぁ……」
ガックリと肩を落とすランディさん。
そんな彼の様子を見て安心したようにため息を吐いたヒューズ先生は、私に向かって微笑んだ。
「さぁ、ご両親のところに帰ろう。」
「はい。」
帰る支度をしながらヒューズ先生が違う方向を見ているタイミングを見計らって、まだ落ち込んでいるランディさんに耳打ちをする。
「また会いにきてもいいですか?」
「…え?ふふ、貴女ならいつでもいいわよ。この部屋で寝泊まりしてるから、なにかあればいつでもいらっしゃい。」
「えへへ、光栄です。」
にこやかに笑い、ランディさんの前に右手を今一度差し出す。
「改めまして、レイ・モブロードです。これからよろしくお願いします。」
大きく目を見開いたランディさんは堪え切れないように小さく吹き出し、左手でしっかりと握り返してくれる。
「ランディ・バートン。敬語なんて使わなくていいわ。こちらこそよろしくねレイ。」
「行くぞレイちゃん。」
ヒューズ先生から声をかけられ駆け足で近寄る。そして扉から出る前に、ずっと思っていたことを新しくできた友人に向かって叫んだ。
「さっきまでの言葉遣いの方が自然でかわいいと思うよ、ランちゃん。」
「っ!……それはどうも。この口説き上手。」
舌を出しながらも照れている彼は、心強い私の味方となる。