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少年は、恋しがる

53000PV、9000ユニーク超えありがとうございます!


またブックマーク登録いただきましてありがとうございます!

本当に多くの方に見ていただけて幸せです^_^


今後もよろしければブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております!


「あれま?どこにしまったかのぉ。」


ノロノロとした動きでガラクタを漁る姿を見て深くため息を吐く。


あのジジイが探し物をしている間、オレはこいつの相手をしなければならなかった。


「モブちゃんがいない間はなにしてるの?やっぱりモブちゃん居なくて寂しい?」


「んなわけあるか。快適だわクソが。」


「ふふふ!そんなこと言っちゃって!モブちゃんがいなくなってからぼーっとしちゃってるんじゃない?失敗とかしてるんじゃないの?モブちゃんをついつい探しちゃったりだとかそういうことないの?」


「あ"!?オレがそんなことするわけ……」


さっきからピーピーうるさいコイツを怒鳴りつけようとするが、ふと考える。


そういえばアイツが王都へ行ってから、家にあるフライパンを全部焼け焦がして新しいのを買うはめになった。

それに頻繁に足の小指を机の脚にぶつけて悶えることも多くなった。


しかも外出する度にアイツの姿を探す癖がついたようで、ふとした瞬間に探してしまう自分に果てしなく虚しくなる。

………虚しくなる?


「断じて会えなくて落ち込んでるわけじゃねぇわクソが!!」


「なんだ!やっぱり思い当たることあるんだ!わぁーかっわいい!」


「ちっげーよ!死ねカス!あとテメェはいつまで探してんだクソジジイ!早くしろ!」


さっきから同じ場所をウロチョロしているジジイに喝を入れるため、腰をあげて移動する。

後ろから逃げるなとかほざく声が聞こえるが知ったことか。


「すまんのぉ。全く見当たらんのじゃ。どこしまったかのぉ。」


「人を呼びつけんなら前もって準備をしとけ!」


「いつもは準備しとくんじゃがのぉ。」


そう言ってバツが悪そうに頭を掻くジジイの上着は変に盛り上がっていた。

とてつもなく嫌な予感がする。


「……おい、その上着のポケット見たか?」


「ん?……おおこれじゃこれ!さてはアルフレッドくん、物を探す天才じゃな?」


「やっぱりな!嫌な予感したっつーの!つうかそんだけポケットが膨れ上がってたら気付くだろ普通!!さっきまでの時間返しやがれ!」


笑いながらオレの頭を撫でてくるジジイの手をはたき落とそうとするが体が動かない。


「おいテメェなに拘束魔法かけてんだ!」


「はっはっはっ。ワシの得意魔法じゃよ。ほれエミリーこれを受け取れい。」


「あ"!?オレに見せろよ!」


「ワシを殴ろうとした罰じゃ。」


投げられたものをうまくキャッチし、確認したアイツはニヤリと笑う。


「んだよその顔!」


「ふっふっふっ!じゃーん!」


オレの顔の前に突き出されたものを見て、思わず首を傾げた。





























◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



















「………でこの状態なわけっすか。」


「………。」


机に肘をついて自分の頭を抱える。

目の前には紙とペン。

部屋の周りには、グシャグシャに丸めた紙の残骸。


「どんなものかと思えば、まさかの文通っすか?時代遅れもいいとこっすよ。」


やれやれと首を振りながらオレが丸めた紙屑を拾っていく白蛇。


「珍しく意見が合うじゃねぇか…」


思わずため息を吐くと、数年ぶりにジジイがオレに茶を淹れに来た。


「分かっとらんなシラタマくん。文字で書くことで想いというのは伝わるものじゃ。魔法に頼らずラブレターを書くというのはなかなか洒落たことを思いつく人じゃな!」


「誰がラブレターなんて書くか!しばくぞジジイ!!」


「でも爺ちゃん、そいつのせいで旦那は凄まじく険しい顔して帰って来ることになったんすよ?しかもあの兄さんに話しかけられてもガン無視っす。オレだってわざわざ旦那の後を追いかけて迎えに行ったのに、その顔見た瞬間に置いて帰ろうと思ったぐらいっすから。」


「フォッフォッフォッ!そうかそうか!今まで文通なんてやったことないからのぉ……アルには難しいかもしれんがほれ!頭を絞るんじゃ!お前さん一応頭はキレるじゃろ?」


「………簡単に言いやがって………。」


「お前さんの母親は得意分野だったぞい!昔は父親にマメに手紙を送っていたものじゃ。」


本当かよジジイ。

額を机にくっつけると冷たくて脳が冷えるが…ダメだ。全く思いつかない。


「で?いつまでに書けばいいんすか?」


「……明後日の朝。」


「まだまだ時間あるじゃないっすか。こういうのは気楽に書けばいいんすよ。」


「それが一番分からねぇんだよ……気楽にってなんだってんだクソが………。」


「おっほ!覇気ゼロっすね!なんか新鮮で面白いっす!」


「シャキッとせんかアル!お前さんが手紙を書いたと知ったら、レイちゃんはきっと喜ぶぞい!」


背中を思いっきり叩いてキッチンに帰っていくジジイを睨みつける。


本当に喜ぶのか?こんな紙きれで。


喜ぶと言われて思いつくのは、妖精の夜渡りの日。

興奮に頬を赤らめて妖精を眺めるあの表情は……悪くはなかった。


そう思うと同時にズキッと痛む胸の奥。


泣いていないだろうか。

困ってないだろうか。

変な奴に絡まれてないだろうか。

少しは寂しいと、感じてくれているだろうか。
















………オレは今何を考えた?


「ダラァッセァ!!」


「え!?だ、旦那!?ヤバイっす爺ちゃん!旦那がついに壊れたっす!!爺ちゃぁぁあああん!!!」


余計なことを考えてしまった自分の頭を空っぽにすべく、全力で机に頭を叩きつける。

危なかった。いやアウトか。


エミリー(クソアマ)は腹が立つが的確に確信を突いてくるし、こういうことはオレより数倍上手い。

オレの前で一瞬で手紙を書き上げて、嬉しそうにお爺様とやらに手渡していた。


「アルフレッドくんはおそらく時間がかかるだろうから、明後日の朝まで待ってあげよう。」


「そうだね!頑張って書いてね番犬くん!えーとコツはね、素直になることだよ!」


「誰もコツなんて聞いてねぇよクソが!」


(素直に……)


きっとオレは疲れていた。

エミリー(あのおんな)のコツとやらを素直に聞くぐらいには疲れていたのだ。


なぜか意識が朦朧としながら今思ったことそのままにペンを走らせて、呆然と眺める。



























会いたい。














書いた文字はこれだけだが、実に腑に落ちる言葉だった。


「だっせぇ……」


本当にラブレターみたいじゃねぇか。

自嘲気味に笑って紙を丸めて捨てようと手を伸ばすと、手の甲に落ちる赤い液体。


「なんだこれ。」


「あああ!!!」


「あ"?うるせぇな…」


「爺ちゃん!旦那が!旦那がぁあ!」


「な、なにしとるんじゃアルフレッド!!血が出とるぞ!?さっさと止血せんか!」


ああ、血が出てんのか。

そのせいで意識朦朧としてんのか。

思いっきり打ちつけすぎた。馬鹿だなオレ。


血が出てると言われ自覚するとさらに血の気が失せる。

そのまま意識が遠のき、床にぶっ倒れた。


ここまでありがとうございます!


現代で文通はあまり見なくなりましたが、やはり直筆の手紙……特にラブレターなんていいですよね。

……貰ったことないですけど!


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