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転生者は、ついに遭遇する②

………うっわ本当にないわ。

マジでごめんよ少年。

再度私の黒歴史を思い出し青ざめる。

いくらこちらが具合悪かったとはいえ初対面の人にぶちまけられるその境遇、不運としか言いようがない。

私と同じく汚れを落とすためお風呂に入り、着ていた服は処分、そして私と色違いの服を着せられるとなれば……。うん、目だってそりゃ血走るよね。

その刺し殺されそうな視線からは逃げたいけど、これは私が悪いわ。

悪いことをしたと思ったら謝る。

これは異世界でも同じことだ。


「あの……その…ごめん。」


「…………」


「洋服ダメにしちゃってごめんね。……でもここまでおんぶしてくれてありがとう。」


「……チッ。」


少しでも誠意が伝わればと目を見て謝罪。

しかし舌打ちをしながら視線を私からそらしてしまった。

おお……許せないってことか。

これこのまま一生許してもらえなくてご近所関係冷え込むんじゃない?

ま、まさか土下座案件か?


「心配せんで大丈夫だよお嬢さん。アルは気にしてはおらんよ。」


「お、おじいさん…」


後から遅れてきたおじいさんは着替えている少年を見て察したのか、仏のような顔で私の頭を撫でる。


「そもそもワシらがお嬢さんの体調にもっと気を配れなかったのが悪かったのじゃ。今だってまだ全快ではないだろうに」


「あ、でもさっきだいぶスッキリ出せたんでそれは平気。」


「フォッフォッ!そりゃ良かった!こんな奴でもいい受け皿になれたようでよかったわい!」


「本当いい乗り心地で」


「おい調子のんじゃねぇぞテメェ!!このゲロ女!!二度とオレに近づくんじゃねぇ!!」


「ゲ、ゲロ女……」


「女の子に向かってなんということを!本当にしょうもない奴じゃお前は!ほれ!!帰って説教じゃ!」


「ふざけんなジジイ!!!!引っ張んじゃねぇ!服が伸びるじゃねぇか!!」


「おおそうだ!借り物じゃったの!」


「そういうことじゃねぇんだよクソが!」


2人で言い合いをしながら我が家を出て行く姿を見て思わず口が開いてしまう。

あ、嵐のようだった……。


「レイちゃん、ちゃんと謝れて、お礼も言えて偉かったわ。」


「でもお母さん、二度と近寄るなって。嫌われちゃった。私のせいでご近所付き合いしにくくなっちゃう。」


「あらあら?………ふふ、そうかしら?ありがとうって言われて嫌な気持ちになる人なんていないわ。」


赤髪である彼と特別仲良くなろうとは思ってはいない。だが、初めて会った同学年の子なのだから、顔を見れば挨拶できる程度にはしておきたい。

じゃないと寂しい。


(うん、良きお隣さんになるよう努力しよう)


「エ、エマ!!レイちゃんが!レイちゃんが!!」


そんなことを思っていると、頭に葉っぱを大量につけた父親が転がり込んできた。


…………めちゃめちゃ忘れてたわ。


「あらエドワード。レイちゃんは体調を崩して大変だったというのに、貴方は原っぱで居眠りでもしていたの?目を離さないと約束したわよね?」


「おふっ!冷たい視線が!!でもでも!レイちゃんが!なんか!すごいグロテスクな臓器みたいなものを持って微笑んでて!!」


「何言ってるの?また妖精に幻術でもかけられたんでしょう?お隣さんがレイちゃんをおぶってくれて帰ってきたから良かったものの…」


「れ、レイちゃん!?体調悪いのかい!?どうしたんだ!!なにがあったんだ!!というかお隣さん!?」


「……………話を聞きなさいエドワード。また眠らされたいの?」


………お父さんは幻術を見てたってことにしておこう。うん、私は知らない。

臓器持ってニヤニヤしてたなんて言ったらお母さんの病状が悪化しちゃうし…ってあれ?



そういえば。



(私、調合した薬どこにやったっけ…?)




































ポケットから、なんとも言えない色合いの液体が入ったビンを取り出す。それは背中に背負った彼女を母親に託した際に、少女の手から転がり落ちたもの。割れそうなものだったため反射的に受けとめてしまったが、思わず二度見をしてしまうほどの衝撃があった。


(最初は汚ねぇドブ水でも汲んでんのかと思ったが………)


コレには確かに()()が込められている。

以前自分が王都で見た高い薬と同じ、いやそれ以上の魔力がここには詰まっているのだ。


(なんだか分からねェがこれさえあれば……)


「なんじゃアル、静かになりおって。」


「………うるせェ。別になんでもねぇよ」


「うむ、いい子だったのぉ。ちゃんとお前さんの目を見て話してくれる子じゃ。」


「知るかよ」


そうだ。知ったことか。

アイツだってオレの姿を見て、怖がってたじゃねェか。


少年は、静かに手を握りしめた。

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