転生者は、少年に寄り添う
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見開かれた金色の瞳に私が写っている。
その顔はやはり想像通りデレデレだ。
これはまずい。顔面メルトダウンである。
「えっと……今すごいデレデレだから…。」
「…………………。」
アルは一言も話さないが、その綺麗な金色の瞳は私の顔をじっと逸らさず見つめている。
(だからイケメンな顔で凝視されるのも照れるんだってば。)
普段であればどうということはないけれど、あんな可愛いことを言われたあとだと表情筋が制御不能である。
ああダメだ。デレデレしてしまう。
これだからもうイケメンは。
「アルのせいだからね。」
勝手に照れているのは自分なのにアルに責任転嫁をしてしまう。
少しでも元の顔に戻そうと手で頬を上に持ち上げると、そっとその手を取られた。
「オレのせいで?」
「え?」
ボソッと呟いたアルの言葉を聞き返すと、一度深く深呼吸した彼は何かを決意したかのようにはっきりと私に問いかけた。
「オレが、お前をそんな顔にさせたのか?」
本当に分かってないな無自覚野郎。
それでも彼の瞳は答えを求めている。
だから私は正直に答えた。
「アルが寂しい寂しいって甘えてきたから私は今悶えてるんだよ。」
「………は!?」
だってしょうがないだろう。
構ってくれなくて寂しいと宣言されてニヤけない女子はいない。
クラウスさんに頭を撫でられてデレデレしてた?白玉と仲が良すぎる?
それでようやく2人になったのに不満そうな顔をしてて腹が立つだって?
このすべての項目に当てはまるのは間違いなく私だ。
私がアルを放って他の人と交流したのが気に入らないのだろう。
これはいわゆる、友人を他人に取られたとショックを受けて起こる現象。
思わず天を仰ぎ神に感謝する。
ああ神よ、私に尊い幼馴染を与えていただきましたこと感謝申し上げます。
「さ、寂しいなんて誰も言ってねぇだろ!勘違いすんな!!つうかどこ見てんだ!こっち見ろ!」
「ほらまた。あーこれは断言できる。私だって伊達に生きてきてないからね。」
「オレと年変わらねぇだろ!」
意地でも寂しかったと認めないつもりか。
これも今までの苦労があってなかなか甘えられなかった影響なのかなんなのか。
だがそっちがその気なら私にも策がある。
それにいい機会だ。
「そんな心配は無用だということを教えてあげよう。」
「あ?」
逃さないようにアルの手首をぎゅっと掴み、思いの丈をぶつけた。
「確かにクラウスさんに頭撫でられるのは好きだけど、あれは確実に動物を愛でてる感じじゃない?それだったらアルが撫でてくれたほうが本当に褒められてる感じがして嬉しい。」
「…………は?」
「そしてクラウスさんの顔は確かに好みだけどアルのイケメンぶりもなかなかだと思うな。顔はもちろんだけど、私の黒歴史にドン引きしないし、なんだかんだ私のワガママに最後まで付き合ってくれるし。性格までイケメンとかずるいよね。本当かっこいいと思う。そのまま行けばそんじょそこらの女子のハートを射止めまくりだから、女ったらしにならないようにある程度自粛してね。」
「お、おいまてやめ」
だんだんと頬を赤らめてきたアルは逃れようと力を入れてくるが、逃しはしない。
こっちだって恥ずかしいがやめてたまるか。
君はもう少し思われていることを自覚したほうがいい。
「白玉に至ってはアルの方がずっと仲良しじゃない。たまに家の中の出来事で喧嘩したりしてるけど、あれ私入れなくて疎外感半端ないんだからね。あーあ…私と1番仲良しだったはずなのにイチャイチャしちゃってさ、私だってヤキモチ妬いてるんだからお互い様。」
「や、やきもちって…」
「あとはなんだっけ?あ、不満そうな顔か。そりゃ不満だよ。アルが全然こっち見てくれないし話してくれないし。まぁ結果的には可愛いアルの本音が聞けて私も嬉しくて舞い上がっちゃって」
「分かった!もういい!!分かったから!」
顔を真っ赤にして私の口を抑えるアル。
やれやれようやく折れたか。
私の勝利を確信し、アルの手を口元からどかす。
「それで?他に言いたいことは?」
「勘弁してくれ…。」
湯気が頭から発生させうずくまってしまったアルの様子にやりすぎたかと苦笑する。
いやでもアルは人から好意を向けられることに慣れていないし、私のちょっとした態度で孤独を感じさせていたのなら可哀想だ。
ここははっきりと伝えてるのが正解だろう。彼が素直じゃない分、私が素直すぎるほうがバランスがいいはずだ。
そう自分を納得させ、話を切り替えようと冗談を交えてアルの背中を軽く叩く。
「今回は私の理性が勝ったからよかったものの、今度そういう可愛いこと言ったら嬉しさのあまり全力で抱きついて髪の毛わしゃわしゃするから覚悟しててね!」
この私の言葉に反応したアルはゆっくりと顔を上げて、呟く。
「じゃあやっぱりオレの言葉でお前はあんな顔をしたんだな。」
「あ、そんな気持ち悪い顔してた?」
お見苦しいものをと謝ろうとするとアルがそっと私の頬へ手を伸ばし、私の頬をつつきながら口を開いた。
「……あの顔を見せんのはオレだけにしとけ。」
「ええ……そんなに?」
私の問いかけに苦笑したアルは慣れたように私の手を取り、今度は2人横に並んで結界の中心部を目指した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
場所にして関所から子供の足で20分。
まぁまぁの距離を歩いたものだがようやくそこにたどり着いた。
円形状の広場の真ん中に、石碑。
結界の中心部というだけあって空気は澄んでいる…ような気がするし、神聖な場所……っぽい気もしてきた。
「……やるか。」
「今更だけどなんで道分かったの?」
「本当に今更だな。……結界の魔力の流れを追ったんだよ。まぁお前に言ってもわかんねぇだろうけど。」
「あ、じゃあさもし私が迷子になったら魔力がないから誰もすぐに見つけてくれないってこと?」
「………普通はそうだが、そんなこともねぇ。」
「?魔力を辿れないのに?」
「オレなら見つけられる。」
「探してくれるの?」
「ああ。仕方ねぇからオレが1番に迎えに行って説教してやる。つうかまず、よっぽどのことがねぇ限りオレから離れんな。」
なにそのかっこいいセリフ。
エミリーちゃんにとっておけよ。
私が無言でアルの顔を見つめると、照れたように私の頭にチョップをくらわせてきた。加減がされててあんまり痛くない。
「ああもううぜぇ!さっさと終わらせるぞ!」
アルは気を持ち直すように深く深呼吸をして目を閉じる。
そうだ、集中しなきゃだよね。
邪魔しないようにとアルから手を離して少し移動しようとするが、凄まじいスピードでまた手を繋がれた。
「言ったそばから離すんじゃねぇよ!」
「いや離れたほうが集中できるでしょ。」
「お前がいなきゃ意味ねぇ!」
「え?意味がないの?」
私の言葉にグッと詰まった様子のアルだったが、それでも手を離すことはせず言葉を続けた。
「……なんにも考えなくていいから横にいろ。手を離すな。分かったか。」
「………まぁそれでいいなら。」
私の言葉を聞いたアルは再度目を閉じて手のひらを空へと向ける。
その瞬間風の向きが変わった。
なにが起こっているのかは分からないが、多分結界を補強しているのだろう。
やる事がなくアルの顔をガン見していると、後方から声が聞こえてきた。
「ほう……見事だな。あの時の結界以上だ。」
「旦那ぁ…ネェさん……置いてかないで欲しいっすよ……。」
「あ、多分白玉とクラウスさんだ。」
手を繋いだまま振り返るとクラウスさんがなにかを引きずるようにこちらに歩いてくる。白玉の声が聞こえるので、引きずってるのは恐らく白玉だろう。
私の声に反応してアルが少し手に力を込める。なんだ?離れると思ってるのか?
離れるなと言ったのはアルなのに。
アルを安心させるように繋いでいない方の手でアルのプニプニの頬を突きながら、後方の彼らに声をかける。
「白玉とクラウスさん、今アルが絶賛お仕事中なんで邪魔しないでくださいねー。」
「おいなにしてやがるクソモブ。」
私がずっとアルの頬を突いているのが気になるのか、片目を器用に開いて私に注意してくる。
「まぁまぁ気になさらず。私はアルのとなりにずっといるからね。」
「…………分かりゃいいんだよばーか。」
私の言葉に嬉しそうに、いつもよりだいぶマイルドな悪態をついたアルの表情は、思わず写真に撮りたくなるほどかっこいい微笑みで。
不覚にも胸が高鳴った。
「……なんすかあの雰囲気。近寄りがたいんすけど。」
「世間でいういい感じか?にしても見ろ。この結界もとても質がいい。恐らくモブロード嬢を護りたいという気持ちが全面に押し出されているんだな。これなら敵意を持って近づいた者は一瞬で灰になるな。」
「さすが旦那っすね…。ネェさんへの過保護っぶりが尋常じゃないっす。」