転生者は、提案する
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「さて俺たちはそろそろ戻らなければ。」
「そうだな。」
リチャードさんのつぶやきに反応するようにクラウスさんが頷き、的確に兵士さんたちに指示を与えていく。
「これは俺が始末する。お前たちは念のためもう一度村を巡回しろ。」
「あ……」
クラウスさんの言葉に思わず声が漏れる。
私の考えなどお見通しであろうアルは、何も言わずにすぐに私の手を取り大股で歩き出した。
「待っ」
「待たねぇ。お前忘れたわけじゃねぇよな?それは俺たちを殺そうとしたんだ。そんなやつ生かしておけねぇだろ。アイツの判断は当然だ。」
「そうなんだけど………」
「けどもだってもねぇ!この話は終わりだ!帰るぞ!」
なるほど、私の話を聞くつもりはないのか。
ふーんそうですか。
少し乱暴に手を引くアルに連れられるのが癪で、空いている手を近くの木の幹に回して抵抗を図る。すると案の定ある程度のところで進めなくなり、彼は私を非難するような視線を向けてくる。
「………なにやってんだ?なんで木を掴んでんだよ。」
「なんとなく。」
「へぇ…そうかよ。ほら、じゃあ気が済んだな。さっさと木から手を離して帰るぞ。」
「うん」
「おいなんでさっきより踏ん張ってんだ!全然分かってねぇだろ!帰るっつったら帰るんだっての!なんでそこで意地になってんだよテメェは!!」
「だってさー……」
「口尖らせんな気持ち悪ぃ!ッチ!あーもううぜぇ!そんなにそこにいてぇならいろ!俺は帰るからな!!先に帰るからな!!」
私の手を投げつけるように離し、ポケットに手を突っ込んでズンズンと先に進む。
その後ろ姿を無言で見つめていると、数十歩進んだ先でピタリと動きを止めて一度こっちを振り向く。
「………本当に帰るぞ。」
「うん。」
「んだようんって!!もう次はねぇぞ!!帰るからな!」
「うん。」
盛大に大きな舌打ちをしたアルが、再度帰るために歩き出そうと足を踏み出すタイミングで口を開く。
「あーあ。」
一瞬でこちらに戻ってきた。チョロい。
「だあああああああああ!うぜぇ!!なんだってんだ!」
「先帰るんじゃないの?」
「アホか!気になって帰れるか!!」
「さっすが私の幼馴染。よ、優男。」
私のにこやかな笑顔を見てもう一度盛大に舌打ちをすると、呆れたように私の顔を見る。
「で?なにが気にいらねぇんだ?」
「はいアルくん。お姉さんはね、既に降伏してる相手に対して殺生は良くないと思うんです。」
「甘すぎる。その脳内花畑を全部刈り取ってやろうか。」
「だが断る。確かに殺されそうになったのは事実だけどさ、みんな生きてるじゃない。」
「結果論だろ。」
「終わりよければ全て良し。そしてなんという偶然、私はペットが欲しいお年頃。」
「お前……まさか……」
そのまさかである。
日頃小さくて大きくなると強くて、けれどもアルよりは弱い(ここ重要)なペットなんて最高。ちょうどいいパワーバランス。是非とも私専用の護衛にしたい。
顔に若干呆れを滲ませたアルは長くため息を吐くと、キッと私を睨みつける。
「この楽観的単細胞物欲女。」
「うむ肯定しよう。」
「認めんな。うぜぇ。」
デコピンを食らわされるが特段痛くもない。
食らったおでこに触れているとその手を取られ、足早にクラウスさんに近づいた。
「?どうした。早く戻るといい。」
「このアホがその蛇をペットにするって騒いでうぜぇ。なんとかしろ。」
「「え"/エ"」」
魔物や妖精さんも含めた全員の声が綺麗に重なり、私を見つめる。
「その目はなんですか皆さん。」
「いやいや流石に…魔物をペットって…なぁ?」
「オレも自分より弱い主人に仕えたくないっす。」
「正直すぎませんか。」
「そりゃそうっすよ。いや確かにネェさんは面白くて最高っすけど、強い主人に仕えてこそ本望ってもんす。どうせ人間に仕えることになるなら赤髪の旦那がいいっす。1番人間っぽくないんで。」
「どう言う意味だ!本気で炭に変えてやろうかこのくそ蛇が!」
「そういうところが魔物っぽいっす。素質あるっすよ旦那。」
なんであんなにしばかれてたのに懐くのか理解不能である。
アルも盛大に顔をしかめて大きな舌打ちを繰り出した。
「魔物に好かれても嬉しかねぇよ!めんどくせぇからオレに振るな!潔く死ね!」
うわ見てあの心底嫌そうな顔、本気だ。
「ほらあんなこと言ってるよ?あんな顔してるよ?私の方が良くない?ねぇ?ねぇねぇねぇねぇ」
「えー……ネェさんは個人的には嫌いじゃないっすけど………あ!オレの番だったらそりゃもう大歓迎すy」
「なにが番だふざけんな今すぐ心臓抉り取って便所に流してやるこの軟弱クソ蛇ゴミダルマが覚悟しろ!!」
「な、なぜにそこまで!?」
息継ぎもなしに暴言を吐き散らし、今にも暴れだしそうな幼馴染の手を引っ張りなだめようとするがビクともしない。
さっきとは逆の構図だ。ワロタ。
にしても猫が威嚇しているように赤髪も逆立ち殺気がダダ漏れである。やば、めっちゃキレてるんですけどこの人誰かなんとかして。
救いを求めるようにクラウスさんへと視線を向けると、顔を引きつらせながら近寄ってきてくれた。超人のクラウスさんの顔を引きつらせるなんて本当にとんでもない幼馴染だな。
「落ち着くんだ。蛇を伴侶とする必要はないだろう。モブロード嬢ならもっといい相手が見つかる。なんなら知り合いを何人か紹介しよう。」
「わーおそうじゃない。なんで私この歳で結婚相手紹介されなきゃならないんですか。」
「今なんつったクソ真面目白毛!」
「ほらーもー飛び火するー。すぐ飛び火するー。ちょっと落ち着いてよー話が超絶迷子ー。」
この状態を見かねた常識人リチャードさんになだめられ、再度話を元に戻す。
「じゃあこうしません?アルが魔物さんの主人になって、私にペットとして貸し出す。」
「コイツは肉片残さずオレが処分するから却下だ。」
私とアルのにらみ合いを制するようにリチャードさんが咳払いをすると、私に問いかけた。
「そもそもその…お嬢さんはなんで魔物をペットにしようと…」
「なにかと便利だからです。」
「というと?」
「この魔物さんが協力してくれれば、相手がある程度強い人でもバッタバッタ倒してくれる。それにこの魔物さんを村へ寄越した相手に魔物を倒せたことがバレてしまうと後々大変なことになりそうじゃないですか?」
「確かに始末した大蛇も偵察が目的と言っていたからな。……報告がないとなると上位魔物が襲撃してくる可能性もなくはない。」
顔をしかめながら考え込むクラウスさんに、ここぞとばかりに畳み掛ける。
「ならなおさらこの魔物さんに嘘の報告をしてもらった方がいいと思います。」
「しかし魔物は主人と強い主従関係で結ばれている。そう簡単に虚偽の報告など…」
「そうっす。オレはメディサマを尊敬してるんでそんなことできないっす。」
「へぇ……じゃあやっぱり私のペットにしましょう。魔物さんも妖精さんの魔力があると力が弱くなるみたいなんで。妖精牧場が近くにある私の家で、言うことを聞くようになるまでしつけすればいいですし…」
「了解っす!嘘の報告なんてへっちゃらっす!バリバリ働くんでそれは勘弁っす!」
凄まじい手のひら返しを見た。どんだけ妖精が苦手なんだよ。
(なんかメディサマとやらが可哀想になってきた……)
「ッチ……なら監視役はオレにしろ。このバカに任せたらロクなことになんねぇよ。オレの家はモブの家も近ぇし、妖精からある程度恩恵も貰えてる。変なことしたらすぐに処分できるしな。」
「おお、いいっすねその瞳。自分の欲に忠実なのは魔物として大事なことっす。」
「うっせぇ黙れ舌抜くぞ。」
「ヒッ」
なんだかんだ息が合っているようだし、いいコンビになるのかもしれない。
アルが断固として私が魔物さんの面倒を見ることを認めない以上、もう彼のところでもアリなような気がしてきた。だが魔物さんがアルを人間として見ていないところに些か不快な気分になる。
「魔物さん、アルは確かに口は悪いかもしれないけど照れ屋さんなだけだから。可愛い可愛いただの人間の男の子だからね。」
「可愛い言うな!!」
終始キレているアルは置いておいてクラウスさんとリチャードさん、そして兵士さんたちに視線を向ける。
「確かに少年は妖精のゲートを通ってここに来てくれた。妖精からの恩恵を受けていることは間違いない。」
「だがまだ幼い子供だぞ。」
「実力は俺たち以上だ。」
さまざまな意見が飛び交う中、クラウスさんが出した結論は。
しばらく更新できずすみませんでした…。
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