助っ人は、大魔王?
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あれからも妖精たちの指示を仰ぎ、やっとのことでこちらに剣を構えた兵士さんたちを見つけることができた。
『レイちゃん本当にダメ!あの兵士たちの後ろに魔物がいル!見えてないんでショ!?死んじゃうヨ!』
たしかに見えてないが、死ぬつもりもない。
「後ろ!!」
妖精たちに言われた通り魔物のいる方向を伝えたのだが。
(火に油を注いだ感じ…?)
大柄な男性の脇に抱えられ、緊迫感した雰囲気のなか思わず唾を飲み込む。
「つーかなんで俺が魔物ってわかったんすか?変化見破れるのはメディサマぐらいなんすけどねぇ?いやぁあっぱれっす。」
見破るもなにも見えてないです。
そんな私の心情など知らず、感心したようにパチパチと拍手するような音が聞こえる。
「いやぁ人間の女のフリって疲れるんすよねぇ。まとめて相手することになったのはアレっすけど、バレてよかったっす。」
私を抱える兵士さんを庇うように周りにいた兵士さん数名が前へと出て威嚇をし、抱えてくれている兵士さんは小声で私に耳打ちした。
「ここは俺たちが時間を稼ぐ。君は隠れていなさい。」
「ええーまじっすか?ヤル気満々すねー。」
「当然だ。貴様のような化け物を野放しにするわけにはいくまい。」
「またまたそんなこと言っちゃって……ここは大人しく退場してくださいよ。」
そういうやいなや前に出ていた兵士が左右へ思いっきり吹っ飛んだ。
途端の出来事で頭が真っ白になるが、私を抱えてくれていた兵士さんはなんとか一発しのいだようである。
「おお、やるっすねお兄さん。」
「黙れ魔物め。この剣の錆にしてくれる。」
「そういうことあんま大声で言わない方がいいっすよー?すぐ死ぬ人間が言うセリフナンバーワンっすから。」
吹っ飛ばされた兵士たちもよろよろと立ち上がり、剣を構え直して突撃する。
兵士は6人がかりだというのに、聞こえてくる音色はまだまだ余裕そうである。
「ヒュー、怖い怖い。お兄さんたちあんまりっすよ。村に迷い込んだ可哀想な蛇1匹に一斉に斬りかかるなんて。」
「はぁはぁ…アイツ舐めきってますよリチャードさん。完全に遊ばれてる。」
「そうだな…。だが神は我々を見捨ててはいないようだ。」
リチャードさんと呼ばれた兵士さんが軽く微笑しながら辺りを見回すと、そのほかの兵士さんたちも驚くように辺りを見回す。
え、なに?なんかあるの?
『イケイケー!レイちゃんを守レー!』
『時間を稼ゲ!』
そんな言葉が聞こえた私は戦いの邪魔にならないよう静かに後ろに下がり、小さな声で妖精たちに話しかける。
「と、特別隊…現状報告を求めます。どうぞ。」
『今ここに結界を張って魔物の動きを鈍らせてるヨ!』
『魔物たちにとってミーたちの魔力は毒だからネ!』
『応援が来るまであの人たちにはレイちゃんを守ってもらわないト!』
「え、やだ君たち最高。大好き。愛してる。」
ワァ!レイちゃんに告白されタ!という妖精たちの歓喜の言葉を聞きながら思わず心の中で叫ぶ。
なんと勤勉な、そして仕事ができる妖精たちであろう。
私よりよっぽど役に立っている。
「そして応援とは?もしかして誰か呼んで来てくれてるの?どうぞ。」
『モチロン!もうすぐ来るヨ!』
「イケメンかよ。」
『ワァーイ!張り切ってお取り寄せしちゃうゾー!』
その言葉を発するとともに、兵士さんたちが動揺したように後ろへ後退する。
そして以前にも体験したような突風が吹き荒れた。すぐにリチャードさんが私の元に駆け寄り、飛ばされないよう守ってくれる。
「な、なんだ!?」
「は?ゲートっすか?なんでこんなところに」
『『『イデヨ!大魔王ー!!』』』
ドンッと腹の底に響くような低音とともに衝撃波がやってきて、一気に砂煙が舞い上がる。
ゴホゴホとむせ返りながら、私の心中は穏やかではなかった。最後に聞こえた妖精のセリフ、いでよ大魔王って。
(なにをお取り寄せしたの。)
砂煙の中心部でゆらりと立ち上がる人影。
それがゆっくりと私の方へ近づいてくるのが見え、リチャードさんは剣を構えようとするが驚きで動けなくなる。
「な、なぜお前が…」
「あ"?なんだっていいだろうが……オレが用があんのはその面倒事製造マシーンのクソモブだけだ。そこどけ。」
こ、この暴言は……
バクバクと鳴り響く心臓に手をやりながら恐る恐るリチャードさんの背中から顔を出すと、見慣れた赤色が私を睨みつけていた。
「このクソが…!どんだけ人を」
「アル!」
この緊迫した雰囲気の中で圧倒的存在感を放つ幼馴染に駆け寄り思わず抱きつく。
「ぐっ!おま!首絞めんな!」
「本当妖精たち最高!!会いたかったよ私の癒し!!!」
なにが大魔王か。
私の精神安定剤じゃないか。
ちょうどいい抱き心地に感激しながら身体を離して、呆れたような表情を浮かべるアルの肩を強めに掴む。
「ねぇ聞いてよ!ちょっと本気で死ぬかと思った!本当やばかった!私思った以上に雑魚で泣きそうになった!」
「だから言ったじゃねぇかよ!……まぁこれに懲りたら今後オレから離れんな。そ、そしたら守ってやらないことも」
「あ、そうだ。ここ危なかったわ。アル逃げよう!」
「本気で殴るぞテメェ……!」
赤い顔で怒りに震えるいつも通りのアルの様子を見て、私もだいぶ冷静になってきた。
ぽかんとしている兵士さんたちも連れて逃げないと。
「な、なんなんすかアンタ。妖精のゲートから出てくるなんて、まるでおとぎ話の勇者みたいに…」
その声を聞いて不愉快そうに眉間に皺を寄せたアルは私の手を取りながら振り返る。
「オレを勇者と一緒にすんじゃねぇよ。ったく、とんだ害獣が紛れ込んでやがったな。……おいお前、このトリ頭のこと見張ってろ。」
「トリ頭……」
「し、しかし。」
トリ頭呼ばわりされ呆然とする私をリチャードさんの方へ突き飛ばし、その後手をバキバキ鳴らしたアルは悪魔のように笑う。
「オレがくるまでコイツの面倒を見てくれた礼はしねぇとな?光栄に思え下等生物。このオレがテメェの相手をしてやるよ。」
「………へ?いや、その…」
「遠慮すんじゃねぇよ。たっぷり遊ぼうぜ?」
(た、確かに大魔王かもしれない。)
さっきまで余裕たっぷりに話していた魔物の怯えたような裏声に、妖精の言っていたことはあながち間違いではないのではと思った。
味方だけど本当ごめん。
絶対に敵に回したくない男、アルフレッド。
彼の強さを肌で感じたのはこの時が始めてである。