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転生者は、ついに遭遇する

ブックマーク、評価ありがとうございます!

楽しんでくれると嬉しいです!

どこ◯もドアがほしい。今すぐに。

もしくはこの場を打開できるような………スーパーパワーを私にくれ。


「さぁ、レイちゃん?ちゃんと………出来るわよね?」


(に、逃げたい!!)


蛇に睨まれた蛙。

まさにこの状況を示した言葉だ。

冷や汗が流れ出る私と、そんな私を睨みつける今にも血管が破裂しそうなこの少年。

たまったもんじゃない。

実は私、レイ・モブロード。

すでにやらかしているのである。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


誕生日を迎えたその日。

私は失神した父親を尻目に妖精の力を借りて初めてポーションを調合した。

結論から言うと、ポーションの調合は大成功だった。色はドブみたいなすごい色をしていたけど、使う魔力の質によってポーションのグレードは変化するようだから、魔力の塊のような妖精の魔力を使ったポーションは最高級の出来栄えになるのは当然である。……色はやばいけど。


ただここに大きな問題が発生する。

大きな魔力を扱えるようになるには、通常自分自身を鍛えて魔力の放出に耐えられるようにしなければならない。しかし、私はそもそも魔力がカラッポの枯れた器。そんな器で高濃度の魔力に触れるとどうなるか。


そう、副作用が発生するのである。


吐き気!めまい!頭痛!腹痛!喉の痛み!将来への不安!!……最後のは冗談だが、それらが一気に私に襲いかかってきた。


(こ、これはキツイ……!)


だがこのポーションを早く母親に飲ませたかった私は、最悪の体調の中家へ帰ろうと歩き出す。この牧場から家まで一本道、そしてたかが3分程度の道のり。下を向き、一歩一歩踏みしめていけば家まで行けると、なぜか私はそう思った。まさしくこれが悪手。大人しく横になって、父親が回復するのを待つべきだったのだ。よろよろと歩く私の後ろから、トドメが刺された。


「おお、君はモブロードさんの家のお嬢さんだね?」


(こんな時に村人初エンカウント!)


近づいてきた気配は2つ、声的には1人はおじいさんだな…いやしかし顔を上げれば確実に終わる。かといって口を開けばそれこそ出てくる。……なにがとは言えないが、初対面でやらかすわけにはいかない。

ゆっ……………くりと体を後ろに向け、下向き加減に頷く。もちろん、体を労わりながら。


「おお、やっぱりそうだったか。ワシらは今日からとなりに引っ越してきたんじゃよ。」


話しながら近づいてきたおじいさんは私の頭をヨシヨシと撫でてきた。


やめてください。出てくるんで。なにがとは言いませんが出てくるんで。


そんな思いが伝わるわけもなく、おじいさんは話を続ける。


「ほれアル。お前も挨拶せい。」


視界の端でおじいさんがもう1人を私に近づけさせた。


「ふざけんな!こんな根暗そうなやつとヨロシクするつもりなんてさらさらねェよ!」


「ふざけてんのはお前じゃバカタレが!お嬢さんは緊張しとるのが分からんのか!これだから女心の分からんやつは!」


おじいさん。オタクの息子さんの紹介とかどうでもいいんで。ぶちまける前に撤収したい女心を分かってください。いや、ぶちまけるつもりはさらさらないけども。


「チッ、うるせぇジジイ!こいつもどうせ不吉な赤髪だとオレをバカにしてんだ!ウザってェ!」


……え、今なんていったの。

思わず具合悪いのを忘れて、ガバッと顔を上げる。私が思いっきり顔を上げたのが意外だったのか、さっきまで吠えていた少年は沈黙した。思った以上に互いの顔が近いが、構わず凝視する。瞳は金色、顔は幼さが残るが文句なしのイケメン。そして髪は、赤色。


『魔王の大好物の赤髪のニンゲンがいると街が危険だから、迫害対象になってるってもっぱらのウワサだヨ!』


『特に赤髪は魔力が豊富だから大変タイヘン!!』


かつて妖精たちが話していた内容が走馬灯のように駆け巡る。

あ、関わると寿命縮まるやつかもしれん。

しかし、顔を思いっきりあげてしまった私に選択肢はなかった。

お腹は絶不調、吐き気はMAX。この私を引き止めたこと、後悔させてやる。

少年の肩を思いっきり掴み、冷や汗たっぷりの顔で睨みつける。


「な、なんだお前!!掴んでんじゃねぇ!張り倒すぞ!」


「こんのバカタレ!女の子にそんな口を聞く奴があるか!」


「ど、どでも……いいから……」


くぐもった私の声を聞き、ようやく異変に気付いた2人は不思議そうに視線を向ける。

少年の肩をさらに力を入れて掴む。

少しばかり後退するイケメンに遠慮なく詰め寄り、言葉を続ける。


「お、おんぶ……して…」


「は、はぁ!?なんでオレがお前を」


「じゃないとこのまま………吐く。」


「ふざけんじゃねぇ!!お前マジで喧嘩売ってんだろ!」


暴言は止まらないが即座に私をおんぶし、私の家の方角へと走り出した。

その流れ作業、まるでおんぶの匠。


「フォッフォッ!!女の子は丁重に扱うんじゃぞアル!」


「うっせェジジイ!!そこで干からびやがれ!っおい!お前の家あそこだろうが!堪えろ!死ぬ気で堪えろ!!」


「も、む……うっぷ」


「お、おおおおおい!!!やめろ!吐いたらシバくからな!!いいな!シバくからな!」


私をおんぶしてるというのに凄まじいスピードで我が家に辿り着き、ドアを足で蹴りノックをする少年。

ゆっくりと開く扉に足を入れ、思いっきり開く(行儀悪いな)。


「引き取ってください!!!」


(いやほんとその一言に尽きるだろうね。)


「え、ど、どなた?……後ろにいるのは……レイちゃん?」


人生2度目とはいえ、

ここでは私はまだ4歳ホヤホヤ。

母親の声ほど安心するものはなく。


「お、おかあ………」


限界だった。


「「あ"。」」


「…………てんめぇえええええ!!」


レイ・モブロード。4歳の誕生日。

歳を重ねるとともに黒歴史が誕生した瞬間である。

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