転生者は、再度お祭りを堪能する
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クラウスさんから許可をもらい特別に得た1時間は、それはそれは濃い1時間となった。
「ねぇねぇ!エミリーあそこ行きたい!」
エミリーちゃんがとあるお店を指差せば。
「おーけー。それじゃ早速、転送魔法よろしく頼みます相棒。」
「この節穴!!明らかに歩いた方が早えだろうが!そもそも店が見えてんのになんでわざわざ魔法使わなきゃなんねーんだよクソが!」
「えーラクしたかったのに。」
「テメェがラクできてもオレが疲れんだよクソモブ!!」
「転送魔法も使えない番犬くんなんて必要ないから置いていこうよモブちゃん!」
「調子のんなよこの緑頭……ゴミ捨て場に転送してやろうか!?あ"!?」
可愛らしい言い合いをしながらも、怒り狂うアルから全力で逃走したり。
「わぁ!マモノパンだって!色が紫色で気持ち悪い!どんな味がするのかな?美味しくなさそう……。」
エミリーちゃんがそんな疑問を口にしながらチラッと私の方を見れば。
「う、うん……アルにはエミリーちゃんの騎士としてこの後も頑張ってもらわなきゃならないからね……ここはレイ、行きます!」
「は?誰も食えなんて言って」
「ぐっは!まずっ!えぐ!内臓出そう!」
「わぁ!一口でいくなんて大胆だね!流石モブちゃん!ねぇどう?すごく不味い?」
「んなこと食わなくても分かるわ!そしてお前は毎回毎回学習しねぇなクソモブ!人の話を最後まで聞けって言ってんだろうが!おいエセ聖女!笑ってねぇでコイツの魂戻すの手伝いやがれ!」
深読みが祟って自ら死にそうになったり。
「エミリーちゃん!好きです!よかったら僕と付き合ってください!」
「わぁ!ありがとう!…………ところであなた誰?」
祭りの雰囲気に便乗してエミリーちゃんに告白してくる輩がいれば。
「ど、どうするのアル?ねぇ行っちゃう?略奪しちゃう!?うっほ!私全然手伝っちゃうよ!?」
「全体的に何言ってんだお前は!!察しろ!葬式中みたいな顔してんだろうがあの男!いいから放っといてやれ!………ソワソワすんな気持ち悪りぃ!頭かち割るぞ!」
私をうざがったアルに張り倒されたりとそれはもう大波乱である。
確かに祭りは存分に満喫できた。
しかしその代償として、クラウスさんにエミリーちゃんをお届けする頃には。
「……?声変わりか?おめでとう。」
「んなわけねぇだろ。なにがおめでとうだクソがくたばれ。」
怒鳴り過ぎてアルの声はハスキーボイスに変化。
「節々が痛い。」
「だからババアかお前は!……ッチ、言わせんじゃねぇよ!」
「ツッコミは自己責任でお願いします。」
一方私は凄まじい筋肉痛に悩まされることとなった。
エミリーちゃんはまだまだ元気そうなのにおかしい。やっぱり家に引きこもっているとこういうところに反動が来るのかと痛感する。
要約すると……はしゃぎ過ぎた。
「しかしエミリー様があんなに喜ばれているのは久しぶりに見たな。ひとえに君たちのおかげだ。」
「私は何も。ただお祭りを満喫しただけでしたし、これでエミリーちゃんも楽しんでくれていたならなによりです。」
「見事に面倒ごとしか起こしてねぇのにドヤ顔すんな。いっぺん頭の中調べてもらえ。」
すかさずアルにツッコミを入れられたがそれはさておき、お祭りは本当に楽しかった。
ここでの祭りは多少の違い(魔法とか魔物とか)はあるけれど、老若男女問わず楽しめるイベントということは前世の世界と変わりないらしい。
(今日はぐっすり寝られるな。)
悲鳴を上げている筋肉については明日には治っていると信じよう。
若いからきっと大丈夫。
そんな風に自分を労っていると、前世でいう巫女装束のような格好をしたエミリーちゃんが私たちの方へ歩いてきた。
「モブちゃんも番犬くんもありがとう!今日はほんと楽しかった!」
「私もエミリーちゃんとお祭りで遊べて楽しかったよ。」
「せっかくだからエミリーの舞、見て行ってくれるでしょ?ど真ん中の席を用意してあげる!」
「うっそほんと!?見たい見たい!アル見に行こうよ!」
「…はぁ。ここまできたら付き合ってやるよ。」
私とアルの返事を聞いて美しく微笑んだエミリーちゃんは大きく一度頷いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
エミリーちゃんの舞が始まるまであと少し。
私とアルは用意してもらった席でエミリーちゃんの出番を待っていた。
座席はなんと最前列のど真ん中。そして後ろを振り向けば大トリの舞を一目見ようと村内外から続々と人が集まりだしていた。
「へぇ、やっぱりすごいねエミリーちゃん。人気者だね。」
「あ"?あんな奴が人気者なんてこの世も終わりだな。」
「まーたそんなこと言う。素直じゃないんだから。」
「うるせぇクソモブ。」
そんな掛け合いをしながらゆっくりと手足を伸ばし、思わず大きなあくびをしてしまう。
「おい寝んなよ。たとえ寝たとしても起こさねぇからな。」
「いやこれから我らのエミリーちゃんの出番なのに寝れないよ。」
「嘘つけ。既にほぼ寝てるじゃねぇか。………ッチ、ゆりかごみてぇに頭振るんじゃねぇよ鬱陶しい。やっぱ寝ろ。目当てのモンが始まったら頭ぶん殴ってやる。」
「うっす……ありがとう。」
ぶん殴られるのは嫌だが結構限界だ。
5分くらい真剣に仮眠しよう。そうすれば眠気もきっと飛んでいくだろう。
思ったら即行動。
寝る体制へと移行するべく、アルの肩に寄りかかる。
「は!?おい!寄りかかってくんな!!」
無茶言うな。
私は寄りかからないと寝れないタイプなんだよ。
協力してくれ。
しかしアルの肩は突然ビシッと石のように力が入ってしまったため、なかなかいい寝心地のポジションが見つけられない。
いい位置を見つけるために何度か頭を移動させていると、ますますアルの身体が固まってしまった。
力を抜けという意味を込めて頭をグリグリ肩に押し付けると、諦めたようにアルが深いため息を吐いたことでちょうどいい高さに落ち着いた。
「うんいいね……この位置キープで。」
「テメェぜってぇあとで覚えとけよ……!」
不穏なワードが聞こえたような気がするがもうどうでもいい。
夢の中に片足を突っ込み、もうあとは深い眠りに落ちるだけだというその時。
「あ。」
「んだよ!もう早く寝ろ!頼むから寝ろ!」
アルにちゃんと伝えてないことがあった。
酷い眠気に今にも負けそうだが、その前に伝えなくてはとなんとか口を動かす。
「今日……一緒に……ありがとう…ね。」
アルとお祭り来れて、楽しかったよ。
また一緒に来ようね。
最後まで言えたかどうか定かではない。
恐らく言えず夢の中に入り込んでしまったのだろう。
だって遠くの方で。
「……………ああ。」
あまりにも優しく、そして素直すぎる返事が聞こえたから。
こりゃ起きたらもう一度言うの忘れないようにしないと。
そう思ったのを最後に、私は深い眠りへと落ちていった。
ゆるくほのぼのしておりますが、次回物語がちょっと進む予定です。