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転生者は、プランを変更する

21000PVありがとうございます!

そしてあわせて評価、ブックマーク登録ありがとうございます!


嬉しすぎて舞い踊りそうな勢いです笑


よければ今後ともよろしくお願いします^_^


両手を広げジリジリと間合いを詰めてくるアルから、なぜか大きな炎が見える。

魔法の類は私には見えないからあれは恐怖が生み出した幻覚に違いない。

違いないのに。


「安心しろ……一瞬で終わらせてやらぁ!」


アルが歩いたところから黒い煙が立ち昇っているのは絶対気のせいではない。


「雑誌だけじゃなく私の人生も一瞬で終わる気がするのはなぜですかね…?」


「下手にソレを庇おうとするなよ?加減なんてしねぇからな…どうなっても知らねぇぞ!!」


「恐ろしく殺る気マンマンじゃないですか!」


バキバキと指を鳴らして怒るその姿は、まさしく鬼。

おいおい目がいっちゃってるよ兄ちゃん。


顔を引きつらせ一歩後ろに下がると、背中に何かが当たる。この感触は人間の足か?


(これでヤンキーなお兄ちゃんとかに睨まれることになったら詰んだわ…)


優しい人でありますように。


全身が緊張で強張ったその瞬間にそっと背中に添えられた手の感触。


「後ろはちゃんと確認した方がいいぞ。モブロード嬢。」


聞き覚えのある声に反射的に振り返る。

明かりを反射し淡く照らされる灰色の髪に宝石のように蒼い瞳。

やはりいつ見てもイケメンなこの人は。


「あー!クラウスだ!」


(クラウスさんだ!助かった!)


怒り狂う赤い鬼から逃れる絶好のチャンスに歓喜し、自然な動きでクラウスさんの横を陣取る。

突然のクラウスさんの登場に驚き呆けていたアルだったが、私がクラウスさんを盾にしたことに目敏く感づいたのか視線が更に鋭くなる。


「なんだ?これはまた随分荒れているな。」


「お前の顔を見たせいで余計に胸くそ悪りぃ!何しに来やがった帰れ!!」


「そうだそうだ!帰ってクラウス!せっかく面白かったのに!」


初めてエミリーちゃんとアルの意見が一致し、2人でクラウスさんを追い払うように手で払う仕草をする。

同じ動きをしているのはなんとも微笑ましいが、面白かったってどういうことだいエミリーちゃん。

私はなかなか生命の危機を感じていたぞ。


「帰りません。探しましたよエミリー様。」


「えー!探さないでって書いたメモ置いといたでしょ?今日エミリーはモブちゃんたちと遊ぶの!」


「恐れ入りますが、この後中央舞台で舞を披露するご予定が。」


「エミリーあれ嫌いだからイヤ!」


「そう言われましてもこの祭りは聖女様へ捧げるものですので…祭りの締めはエミリー様にご一緒いただかなくては。」


「ううう…」


小さく唸りながらクラウスさんから顔を背けて拒絶するエミリーちゃん。

クラウスさんはクラウスさんで申し訳ありませんと一言謝りながら苦笑する。


(まずい、このままでは……)


エミリーちゃんは100パーセントクラウスさんに連れて行かれてしまう。

さっきまでありがたかったクラウスさんの背中が、立ちはだかる大きな壁へと姿を変えた。

こんな会話を全く素直じゃないアルの前でされたら…。


「はっ、諦めろ諦めろ。テメェもさっさと行きやがれめんどくせぇ。」


「あー!番犬くんひどい!」


(行き過ぎたツンが原因でエミリーちゃんを遠ざけようとしてしまうじゃないか…。)


ここぞとばかりにエミリーちゃんを追い払うことに専念しだしたアルは言葉を続ける。


「せいぜい村の奴らにそのお姿とやらを見せてやればいいじゃねぇか。アイツら単純そうだしよ、泣きながら喜ぶんじゃねぇの?」


「それは否定しないよ!」


「ほんと清々しいくれぇに謙虚さが足りねぇなエセ聖女!」


「だって事実だもん。……それでもエミリーだって遊びたいの。」


拗ねたように、そして少し寂しそうに俯くエミリーちゃんの姿に涙がこぼれそうになった。

年齢で言えば私と変わらない幼い女の子なのに、遊びたいときに思いっきり遊べない窮屈さがもたらすストレスは計り知れない。


「エミリー様…。」


「ちゃんと最後は舞台に上がるから!ね?もう少しいいでしょ?」


彼女は頭がいい。

自分の役目も立場もその歳にして理解していて、おそらくそれがなによりも彼女を苦しめている。


エミリーちゃんが欲しがっているのはほんの少しの息抜き時間。


(ごめんアル……エミリーちゃんとの2人っきりのデートプランはまたの機会に用意するから。)


心の中でアルに一言謝罪を入れた私はエミリーちゃんに近づき、そっと手を繋ぐ。

戸惑う様子の彼女を笑顔にするにはどうすればいいか。そんなもの簡単だ。


「ね、エミリーちゃん!あそこのお店行こうよ!」


「「え?/は?」」


彼女が息抜きできるように、精一杯アシストしてあげればいい。


「なんかよく分からないけど、エミリーちゃんはこの後予定があるんでしょ?だったら急いでまわらないと。」


「いや…」


「エミリーちゃん、その舞は何時からスタートなの?」


わざとクラウスさんからの静止に被せ、エミリーちゃんに問いかける。


「え、えっと後1時間ちょっと…かな。」


「うわっ本当時間ないじゃん。じゃあギリギリまで有効に使おう!」


「モブロード嬢。」


今度は少し語尾を強めて私に待ったをかける。


「エミリー様を気持ちを汲んでもらえるのは有難いが、普段ならまだしも今日のような外部から人も訪れる大きな祭り事の際に彼女の護衛ができるものは私以外いない。しかしこの後ずっと君たちとともにいることはできないのだ。エミリー様には安全な場所に居てもらわなければならない以上、これは譲れない。」


うーん正論。

確かに聖女の生まれ変わりであるエミリーちゃんを守るお勤めを果たすべくやってきたクラウスさんからすれば、これは当然のこと。


だか悪いな。

エミリーちゃんの尊い笑顔を守るため、私も折れるわけにはいかない。


「分かってますよクラウスさん。お仕事お疲れ様です。でもちょっと勘違いしてますよ。」


「なに?」


ドヤ顔で人差し指を立てて堂々と言い放つ。


「貴方に匹敵するほどの最高の騎士なら、もう1人ここにいるじゃないですか。」


そのまま人差し指をとある人物の方へ向ける。

それはもちろん。


「私の幼馴染、アルです!」


「……は?オレ?」


珍しく気の抜けた返事を返すアルは、まさか自分に話題が向けられるとは想像していなかったのだろう。

何を言い出すんだコイツという若干の哀れみの目をアルから向けられるが……クラウスさんは違う。


「彼……か。」


「私の幼馴染はとっても強くて、面倒見がいいんですよ。知ってますよね?」


「ああ。」


「何かあったら転送魔法とかなんやらでエミリーちゃんを安全なところへ移動できるでしょう。」


「……そうだな。収集の魔女の家まで転送できるのだったな。大したものだ。」


「そうでしょう?それにクラウスさん。」


一呼吸置いてクラウスさんに満面の笑みを向ける。


「そもそもですよ?アルがとてつもなく英雄の素質があると太鼓判を押したのは誰でしたっけ?」


「………私だな。」


「ね?貴方はすでにアルの凄さを理解しているはずですよ。そんなアルを今ならなんと今日一日貸切状態!そしてエミリーちゃんもギリギリまで遊んだとしてもアルの転送魔法で一瞬で舞台まで移動可能!こんなお得な話がありますか!?」


「しかしそれでは彼の負担が大きすぎないか?君はいいのかそれで?」


クラウスさんがアルに確かめると、1つ浅くため息を吐く。


「コイツは言い出したら止まらねぇよ。それにここで断ってあとでモブがピーピー喚くのもうるせぇしな。…オレが見張り役を引き受けてやってもいい。」


「さっすがアル!男前!」


「うるせぇ!黙れ!散れ!」


「そうか…」


顔を真っ赤にしたアルに怒鳴られたがこれで決着はついた。


「それはなんとも心強い。」


「へへ、そうでしょ?すごいでしょ?この騎士さん。」


「まぁそれもそうだが…」


クラウスさんが私の頭の上に手を優しく乗せ、柔らかく微笑む。


「貴方がいるのならば、悪い方には転がるまい。」


「?それってどういう」


「エミリー様をよろしく頼む。エミリー様、あと1時間だけですよ。」


わざと私の言葉に被せるように言葉を発したクラウスさんは最後にもう一度微笑むと、私たちに背を向け祭りの中心部へと消えていった。

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