転生者は、お祭りに行きたい
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アルのチョップを受けて悶え苦しんでいる私はさておき、アルはどことなくエミリーちゃんを馬鹿にしたように笑う。
「へぇ?聖女っつうわりにはなかなかいい性格してるよなお前。向いてねぇんじゃねぇの?」
「えーそうかな?エミリー結構自信あるよ?そんなこと言うキミだって英雄の素質があるらしいけど全然そういう風に見えないよね!!むしろ魔王とかのほうがぴったりかも!」
「おーそうだな。勇者とかめんどくせぇもんになるくらいなら魔王になってお前を泣かすほうが楽しそうだ!!」
「わぁ!アルくんひどーい!モブちゃん、ちゃんと犬にはしつけをしないとダメだよ?」
「誰が犬だゴラァ!!!」
完全にアルをからかって楽しんでいるエミリーちゃんは確かになかなか黒い笑みを浮かべていた。
そしてアルはエミリーちゃんに想いを寄せているとなると…これは尻に敷かれるな。
叩かれた頭をさすりながら、なんとなくこんな情景を想像する。
ツンとはしているものの、離れないようにアルと手を繋ぐエミリーちゃん。
そんなエミリーちゃんに振り回されながらも、彼女に声をかけようとする男全員を睨み付ける我が幼馴染の構図。
思わず立ち上がり、拳を上に突き出して天を仰ぐ。
「実に良き!!尊い!!」
「?どうしたのモブちゃん?」
「知るか。戻ってこい馬鹿。」
私の左手を強く掴まれ強制的に座らせられ、額に強烈なデコピンをお見舞いされる。
痛い。けどこちらの世界に戻ってこれた。
アルにお礼を言うと頭をガシッと鷲掴みにされ、グシャグシャと撫で回される。
「あはは!やっぱり面白い!モブちゃん一緒にお祭りまわらない?番犬くんも一緒でいいから!」
「も、もちろん」
「誰が番犬だエセ聖女が。ぜっってぇ行かねぇ。そして帰れ。」
この流れでまさかの!?
アルはどうでも良さそうにしっしっと手でエミリーちゃんを追い払う仕草をしてしまう。
一体全体なにをしてるんだ君は。
その手をぐいっと引っ張り顔を近づけて睨み付けると、アルが大げさにたじろいだ。
「ちょっとアル?せっかくのエミリーちゃんの誘いを断るの?」
「な、なにがせっかくだ。行かねぇったら行かねぇ。」
彼はプイッと顔を私から逸らすが、納得がいかず頬を掴み私と強制的に視線を合わせる。
その後だんだんと赤みを帯びてくる頬にさらに私は確信した。
どこまで素直じゃないんだ我が幼馴染よ。
想い人からのお誘いを恥ずかしいからという理由で断るなんて。
ここは絶好のチャンスなんだぞ。
「愛しのエミリーちゃんからの評価を落とすつもりなのか…?ダメだ…ただでさえライバルがいっぱいいるのに。ここは大事な局面に違いない。」
「……ちょっと待て。お前なに言ってんだ。」
ボソボソと呟いた私の独り言があまり聞こえなかったのか、眉をひそめて問いかけてくる。
だが変に伝えるとまた暴走して、この間のような大洪水になるかもしれない。
我が家を水浸しにするわけにはいかない。
私はじっとアルを見つめた。
私の妄想で描いたあの光景の影響か、かなり気合いが入ってしまうが致し方ない。
頬を軽く赤らめている可愛い幼馴染のため。
野暮かもしれないが…私が一肌脱ぐことにしよう。
その想いを胸にエミリーちゃんのほうへ振り向くと、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「エミリーちゃん!もちろん行くから!死んでもアルを連れて行くから!」
「本当?エミリー嬉しいなぁ!」
「おい!オレは行かねぇって!」
このお馬鹿さんめ、まだ言うか。
(なら仕方ない、明確な理由が欲しいというのなら私が作ってやろう!)
大切な幼馴染のこの絶好のチャンスをモノにするため、私は全力でアルに抱きつき説得にかかる。
「っ!おま!離れろ!」
「お願い!!お祭り行きたいの!超行きたいの!!行かないと爆発しちゃうくらい行きたい!!」
「意味分かんねぇよ!!そんなに行きてぇなら家族と行けばいいだろうが!!それかもう爆発しろ!」
それはそうなんだけど!おっしゃる通りなんだけど!
あああもう!届けこの想い!
ぎゅっと力を込めて腹の底から全力で叫ぶ。
「私は!アルと!一緒に!行きたいの!!」
部屋の中で私の声がこだまする。
ピタッと時が止まったように静かになり、アルが目玉が飛び出るくらい大げさに目を見開く。
私は自身の考えがアルに伝わるよう、瞬き1つせず見つめ返す。
(さぁ、私を使え!キミは仕方なく私についてくるという名目でエミリーちゃんと愛を育むのだ!!)
遠慮なく幼馴染を使うがいい!!
そんな想いが伝わったのか。
ボンっという効果音とともに顔を真っ赤にさせて、頭から蒸気を発生させたアルは静かに視線を逸らした。
……よし。勝った。
ようやく素直になった幼馴染の様子に安堵し、アルから身体を離す。
(お礼なら…エミリーちゃんと付き合うことになったその時に、何か奢ってくれ。)
やりきった満足感に止まらぬドヤ顔。
さぁエミリーちゃん。
我がイケメンな幼馴染に狙われる覚悟は出来ているか?
その勢いのままエミリーちゃんに視線を向けると、
「わぁお!最高!!」
大輪の花が咲いたかのように眩く嬉しそうな笑顔で、私に親指を立てた。
一方アルはというと。
愛しの彼女と出かけられることが未だに信じられないのかなんなのか。
その後熱に浮かされたようにぼーっとした表情で、帰るまで魂が抜けたような状態だった。