転生者は、平和な日々を堪能する
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母親とおじいさんの病を治して幾分か経ったある日。
私はというと妖精牧場にある一本の大木の根っこに腰かけていた。
『レイちゃんモットモット!』
「え、嘘早くない?私まだ数分しか休憩してないんだけど。」
『でもデモまだあっちは足りないヨ?』
『公平にすべきダー!訴えるゾー!』
「またそんな物騒なこと言うんだから…。誰もやらないなんて言ってないでしょ兄弟。さぁ、どこが足りないって?」
『アッチ!』
「ばっちこいや。」
太ももを叩き気合いを入れて、立ち上がった私は重い紙袋を持ち上げてぬかるんだ地面の方へと移動する。腕がプルプルするほど重たい袋には虹色に輝く小さな粒が大量に入っており、その粒は適当に撒き散らして地面に馴染ませることで効果を発揮するのだ。
その効果というのも。
『ワーイ!みんな喜んでル!』
『ミーたちのオウチ、もっとステキにするノー!』
一度撒くだけであら不思議。
植物たちがぐんぐんと成長し、さらに単なる沼地も栄養たっぷりなヘドロに変化させてしまう優れもの。肥料のような効果をもたらしているこれは、巷では元気玉と呼ばれている。
なんでもこの元気玉はなかなかの代物らしく、特別なお祝い事があった時にしか使わないという…植物や妖精からすれば特上のお菓子のようなものらしい。
無事に目的を達成した暁には妖精の住処を豪華にすると、なんとも漠然とした約束をしていた私だったが結局どうしたらいいか分からず。
母親の病気が完治したとお医者様から診断を受け、全力の感謝の舞を踊り続ける父親に相談した結果がこれだ。
「え?妖精たちの住処を豪華に?それなら植物たちに栄養が行き渡るようにあのオヤツをあげることにしよう!!レイちゃんという奇跡がもたらした幸せに感謝しなければ!!あぁ!レイちゃん!エマ!二人とも愛してるよ!さぁ、一緒に舞い踊ろう!」
「ふふ、私も愛してるわ。でも舞うのは遠慮するわね。」
そんな会話があったものの、母親は病が完治したばかりだから重労働は厳禁。
そして父親には母親のリハビリに付き添っていてほしいという私の願いにより、私がこの作業を行うことになったのだが。
(思った以上に自分の体力がなくて悲惨。)
4歳という幼い身体ではこの庭一面に撒くという作業は想像以上に辛い。日にちを分けて地道にやっていくほかなく、少なくともこの1週間は同じ作業を繰り返している。
『オイシイ!』
『タノシイ!』
『『イイカンジー!』』
「そうかいそうかい。」
(妖精たちがとても喜んでいるからやり甲斐はあるけれど。)
額の汗を拭い、一度大きく伸びをする。
バキバキっと4歳児から到底聞こえてはならない音がした気がするが、放っておこう。
この元気玉のおかげで我が家一帯の空気が浄化されたのか、空気がとても美味しい。
あぁ、なんと平和な日々。
『レイちゃんなにしてるノ?』
「ん?のどかな時間を噛みしめているんだよ。」
『へー!じゃあイタズラしちゃおうカナ?』
『いいネ!イタズラしちゃウ?』
……それ本人の前で言ったらダメじゃない?
そうは思ったもののふとしたいたずら心が私にも芽生える。
そうだ、私も妖精たちをびっくりさせよう。
地面を弄るふりをして静かに、そしてバレないように泥団子を作る。足元の泥は質のいい泥だ。立派な泥団子を作れることだろう。
あとは適当に投げて誰かに当たれば面白い。
神経を研ぎ澄まし、妖精がいそうなところをなんとなく探す。
すると何かの気配を後ろに感じた気がした。
(ふっ、そこにしよう!)
「あなたにお届け!くらえ全力泥団子爆弾!」
『ワァ!』
振り向きざまに全力投球。
妖精たちの驚きの声にしてやったりと得意げになったが、私は少し疑問に思った。
魔力皆無の私に果たして妖精の気配を感じることができるのだろうかと。
そして泥団子を投げた先に見える赤は、なんだろうと。
金色の瞳が驚きに見開かれたかと思いきや、一瞬で鋭くつり上がる。
(あ、あれ?)
感じた気配は妖精なんて生易しいものではなかったようだ。
「食らうのはてめぇだ!!死にさらせドロ女が!」
「い、いぎゃああ!!リリースされたぁあ!!」
私が投げた泥団子が凄まじい勢いで跳ね返ってきた。
よ、避けるしかない!!
そんな次元のスピードではないのに、咄嗟に防衛本能が働いた私は少し右へと体を動かしてしまった。
「あ。」
「へぶろっ!」
そのせいで女子にあるまじき声を発しながら、顔面に直撃するはめになってしまうとは情けない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ジャリジャリする。」
「自業自得だろうが!!人に泥なんか投げんなクソが!!」
彼の怒りは最もである。
調子に乗った私が悪いのだが…
このままでは終われない。
「グスッ……」
「あ?…お、おい…」
「泥だらけだし…ほんと口の中がジャリジャリするし…グスッ……へぶろって…言っちゃうし…」
「いや…だから……は?おいまてまて。」
「……ズズッ」
「だああああああ!!!オレは跳ね返しただけだろうが!なんだよこの雰囲気!ッチ、おい拭いてやるから顔あげろ!」
そう言ってアルはしゃがみこんで俯く私の肩を掴んだのを感じ、ニヤリと笑みがこぼれる。
この時を………待ってた。
「甘いな!!くらえ泥爆第二弾!」
「うお!」
卑怯と言われようが一矢報いる。
そんな思いで繰り出した泥団子はギリギリのところでアルに避けられる。
くそ、これでも当たらないか。
「てめぇクソモブ……!調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
「ふははは!この私が泥団子を顔面にくらったぐらいで泣くような女だと思ったか!甘い!甘すぎるぞ少年!!」
「キャラ変わりすぎだろうが!」
「顔面に当たれば全身に当たったことと同じ!!もはや怖いものなどありはしない!アル、君をこの境地に導いてやろう!!」
『ワー!小物臭がスゴイ!』
幸いなことに私の足元は泥。
いくらでも攻撃することができるんだ。
数打ちゃ当たるとはよくいったもの。
それになにより、私は思いっきり遊びたい気分だ。
そんな私の思いに気づいたのか気づいていないのかアルもやる気を出したのか。
自ら泥エリアに足を踏み入れ、腕をまくり指を鳴らす。
「そんなに泥だらけになりたきゃ手伝ってやるよ……!本気で泣きついてきてもしらねぇからな!!」
「望むところ!くらえ!泥団子連弾!」
「なんだそのヘナヘナな球は!!ほら沈めクソモブが!」
「ライフで受ける!うぐうぇっ!一撃重すぎ!容赦ない!」
『キャー!!レイちゃん避ける気ゼロだネ!キタナイヤダー!アハハ!』
「ならこれはどう」
「おらぁ!」
「おっと技名すら言わせてくれない!!ならばきたれ!妖精ガーがふぉ!」
「なにが妖精ガードだ!もうお前の周りには1匹も飛んでねぇよ!!見事に全弾被弾してるじゃねぇか!アホか!」
2人して熱中して泥団子を投げあい、遊び続けること約2時間。
我ながらよくそこまで白熱したと思う。
その結果顔に少し泥が付着した少年と全身が泥まみれになった少女のおかしな構図が出来上がり、私もアルも妖精もおかしくなって吹き出した。
泥団子ってロマンが溢れてますよね。
ひさびさに作りたくなったので主人公たちに遊ばせてみました。
いろいろとやらかした気がしますが後悔はしてません笑