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転生者は、魔女と過ごす〜最終日〜

2000ユニーク超え、そして12000PVありがとうございます!


ブックマーク登録などなどもありがとうございます!


これからもよろしくお願いします( ^∀^)


「まぁ、こんなもんかねぇ?いいんじゃないかい?」


昨日から引き続き魔力放出の特訓を行なっていた私にワンダさんが呟いた。


「ほ、本当ですか!?」


「おめでとうモブロード嬢。日にちが少ないなか、よく頑張ったな。」


基礎中の基礎の特訓を続けて早数日。

お風呂にも入らず取り組んだ甲斐があったものだと涙ぐむ。


(死亡フラグ回避ラインにようやくたどり着いた!)


「これなら吐き散らしたとしても死にはしないだろうねぇ!フェッフェ!」


うん、死なないならもう何も言うまい。


なにしろ時間が足りないのだから、そんなのは高望みだ。私が吐き散らかす程度で人の命を救えるポーションが作れるのなら安いものではないか。

そう思えるようになった私の心は、もはや鉄よりも硬く、動じない不屈のものになっていると思う。


「特訓はこれ以上やっても意味はないから、明日のポーション作りのために早めに寝たほうがいいんだけどねぇ!」


ワンダさんは部屋の隅まで移動すると、足で床板を蹴り上げる。するとなんと地下へと続く階段が姿を現した。


「ど、どういう仕組み…」


「フェッフェ!ハッピーかいレイ?お前さんを最高の場所に案内してやるよ!」


額のゴーグルを装着したワンダさんは、私を見下ろしながら歪な笑みを浮かべる。


「さぁ…ここはワタシの城の心臓部、保管室への入り口さ。お前の求めているモノもそこにある。ワタシの後ろを付いてくる覚悟はあるかい?」


求めているモノが、そこに。


ワンダさんに負けず、私もドヤ顔で 答えた。


「まずトイレに行ってスッキリしてからにしたいんで、私に5分ほど時間をください。」




























魔女の家、最終日開始。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇










「結局長い時間トイレにこもるなんて……何考えてるんだい!」


「すいません。緊張するとトイレ近くなっちゃうんです…しかもワンダさんのトイレは洋式なんで落ち着くというか…。」


なかなか最低な会話をしながら、歩き続ける魔女と少女。


まっすぐ下へと伸びる階段の先は、暗闇に包まれていてどうなっているのか分からない。

頼りになるのはワンダさんが持つランプの灯りと、彼女の背中のみ。


「まぁ数時間は移動しっぱなしになるから、漏らされるよりはマシだがねぇ…」


「えぇ…そんな長い間移動するんですか?こんなよく分からない空間を?なんでそんなところに保管室作ったんですか…。」


「より安全な場所を確保するためさね!ゲートの中にある異空間ならば、ワタシのかわいいコレクションたちが奪われる心配はないからねぇ!」


そのかわいいコレクションたち、保管室の肥やしになってそうだな。


ふと後ろを振り返ると私たちが入ってきた入り口が、だいぶ遠くで光り輝いているのが見える。


「そんなに時間かかるのにクラウスさん置いてきて良かったんですかね…子犬みたいな顔で私たちのこと見てきましたよあの人。」


「アイツはダメに決まってるだろう!あの超人に場所なんて教えたらワタシのモノが奪われちまうじゃないかい!」


「……ソウデスカ。」


あの人を1人で家に置いておく方が不安だけど。

クラウスさんは天然なのか脳筋なのか、平気で物をぶっ壊したり意味の分からない行動をしたりするから怖い。


「それにいいんですか?私を保管室まで案内してしまって。」


「フェッフェッ!1人じゃ保管室の入り口を見つけることすら出来ない雑魚に知られたところで、痛くも痒くもないねぇ!」


……あとでクラウスさんにチクってやろう。


そんなたわいもない会話をしながら降りていくと私たちの前に不思議なくぼみがある壁が浮かび上がった。

ワンダさんは手に持っていたランタンをくぼみにはめ込み、私に警告する。


「さぁレイ、行くよ!」


「え…なにが…」


ワンダさんが指をパチンと鳴らすと、真っ暗だった周辺が急に明るくなる。強い光に目が眩み、慌てて両手で光を遮った。


「ぎゃああ!目がぁあ!目がぁあ!」


「何やってんだい!バカな子だねぇ全く!」


「いやこんなことになるなら早く言ってくださいよ!リアルで目がぁあって言うことになるとは思いませんでした!」


「私が上でゴーグル付けた時点で察するだろう普通!鈍いヤツだねぇ!」


「それで理解できる人間がいるなら逆に紹介してください!」


ワンダさんに文句を言っているうちに強い光が収まってくる。恐る恐る手をどかすとそこには異様な光景が広がっていた。


「空っぽの檻?」


私たちが降りている階段の周りを囲むように、なにも入っていない無数の檻が宙に浮かんでいるのだ。


そして感じるとてつもなく嫌な予感。


その檻一つ一つからなぜか突き刺さるような視線を感じる。


「驚いたかい?その檻は特製品でねぇ、ワタシが三日三晩眠らずに作ったのさ!万が一部屋にあった魔法陣を突破するようなヤツがいたら、捕獲してやろうと思ってね!」


「捕獲してどうするんですか?」


「さぁね?その時のワタシの気分次第さ!とにかく今は襲われることはないから安心しな!!コイツらは暗い空間じゃないと動けないんでね!」


「へ、へぇ…。」


風がないのにカタカタと金属音がする不気味さに涙が出そうです。


慌てて視線を逸らし再び前を向くと、ワンダさんに頭を鷲掴みにされる。


「なんだいなんだい!ビビってるのかい!?」


「ビビってません。生命の危機を感じて震えているだけです。」


「フェッフェッ!!そうかいそうかい!」


そのまま乱暴に一、二回撫でたあとワンダさんは前を向いて歩き出した。


「まぁ覚えておきなレイ。こういった魔女の罠っていうのは光に弱いのさ!」


「ワンダさん以外にも魔女さんっているんですか?」


「はぁ?いるに決まってるだろう?」


「……でもワンダさん以外の魔女さんとは関わるつもりはないので大丈夫です。」


その言葉に急に歩みを止めるワンダさん。

私は止まれずに長い彼女の足に鼻を強打した。


「ちょ、いたっ。」


「お前さんにそのつもりはなくても、人生どうなるか分からないだろう?魔女っていうのは知識欲の塊だからねぇ…レイのような人間がいると分かれば攫ってでも手に入れたくなるもんなんだよ。」


くるりと振り向いた拍子に私の手を攫う。

そして彼女は今まで見たことがないくらいに綺麗な笑顔で微笑んだ。


「魔女に狙われたその時は、何も考えず、相手の目を見て、最高の微笑みをかましてやりな。こんな風にね!さぁやってみな!」


ワンダさんに言われるがまま、にぃーっとお互い笑顔のにらめっこ。

第三者から見れば、なんとも異様な光景だろう。


「フェッフェッ!!上手いじゃないかい!……まぁその前に、アンタの番犬が相手を咬み殺すことになりそうだけどねぇ!」


「……?犬なんて飼ってないです。」


そうかい!と豪快に笑うワンダさんの手は暖かくて気持ちよくて。


なぜか一度目の人生の祖母の手を彷彿させるような感覚だった。


「さて、残りはあと半分ってところかねぇ!いくよレイ!」


「……はい。」


この約束の7日間が終わった後も、また会ってくれるだろうか。


なんとなくこの手を離したくなくて、少し強めにワンダさんの手を握り返した。































それからどのくらい経っただろうか。

かなり長い時間を経て、ようやくそれらしい扉の前にたどり着いた。


「やれやれ…我ながら長い階段を作っちまったもんだよ!」


苛立つように足蹴りして扉を開けたワンダさんは、慣れたように部屋の中を詮索する。


一方私はといえば。


(うわぁ……へんな動き。)


ただ広い空っぽの部屋の中で何かを避けながら進んで行くワンダさんの後ろ姿を眺めていた。


「ここにワンダさんのコレクションがあるんですよね?」


「植物、鉱石、魔物!ワタシのコレクションは全てここにしまってあるのさ!レイ、アンタはこの部屋に入るんじゃないよ?まぁ魔物に喰われたいなら別だがね!」


「え?放し飼いにしてるんですか?勘弁してください扉閉めますよ。」


「フェッフェ!冗談だよ冗談!最近のヤツはジョークも分からないのかい!嫌な世の中だねぇ!おっとレイ!これも珍しいヤツでね!ワタシのお気に入りなのさ!」


「ドヤ顔してるところ悪いですけど、なにも見えてないのでなにがお気に入りなのか分かりません。」


「おやまぁそれは残念だねぇ!」


いつものように豪快に笑いながら目的のものを探すワンダさんに、ふと疑問が浮かんだ。


「ワンダさん。前にゴルゴンの肝を妖精さんたちに持ってきてもらった時は、私でもちゃんと見えたんですけど…。魔力が通ってなければ大丈夫なはずなのに、なんで見えないんですかね?」


「はぁ?それはワタシの魔力が込められているから当然だろう?盗まれないように1つ1つに魔法をかけているのさ!」


「あーなるほど魔法かけているんですか…ちなみにどんな?」


「フェッフェッ!想像にお任せするよ!…おっ、やぁっとあったよ…!」


パンパンッとワンダさんが手を叩くと、突然四角い箱が部屋の中に現れた。それを乱暴に掴み、私の方へ投げつけた。


でも忘れてはならないことが2つ。

彼女が魔女であるということ。


「物を投げちゃいけなへぶらっ!!」



そして私がただの雑魚であるということ。



顔面にクリティカルヒットを喰らった私はなすすべなく、そのままブラックアウトした。













「フェッフェッ!相変わらず危機管理能力がゼロだねぇ?」


完全に伸びきった少女を抱き抱えて、彼女は一度パチンッと指を鳴らす。

すると魔女の身体はグンっと上へ引っ張られ、一瞬で元の部屋へと戻ってきた。


「長かったな。」


「おやまぁ…まだいたのかいクラウス!」


クラウスは書類をカバンに詰め込み、地上に戻ってきた魔女を見つめる。


「貴方はこのゲートの所有者だろう?わざと時間をかけたな。」


「フェッフェッ!別にいいだろう?どうせ今日までなんだからね。…ちょうどいいから、この伸びきった馬鹿たれを家まで送ってやりな!」


魔女から少女を受け取り、気遣うような視線を送るクラウス。


「なんだいその目は!その子がワタシを必要とする時が来たら、また会えるだろうさ!さぁとっとと出て行きな!言っただろう!ワタシはグリフォンの羽を取りに行かなきゃいけないんだからね!」


魔女に追い立てられるように玄関まで移動させられる。


「なにか伝言があれば聞こう。」


「そうだねぇ……」



"如何なる時も、微笑こそ女の最大の武器"。



そう伝えな。


「……いつまでも笑顔でいろということか。分かりにくいな。」


そのクラウスの言葉に答えることなく、扉を力任せに閉めた魔女。


その瞬間。


魔女の家は跡形もなく姿を消した。


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