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転生者は、魔女と過ごす〜4日目②〜

「い、今なんて……!」


今この人は、なんて言ったの。


頭から冷水を浴びたように身体が冷え込むのが分かる。

思わず横から覗き込んでいたクラウスさんを突き飛ばし、魔女さんに詰め寄って再度問いかける。


「だ・か・ら!ジジイ1人死にかけてるって言ったのさ!小僧はただそれを看病してるだけさね!」


「私にも見せてください!!」


「はぁ?お前さんには魔力がないからこういった魔法道具は使いこなせないよ!」


そう言われても納得できない。


魔女さんの手元を無理やり覗き込むが、何も映っていない。ただ無力な自分の顔が映り込むだけだ。


(本当、肝心な時になんで!)


「それにしてもなんだい?このジジイは?」


「彼の祖父にあたる人物だ。体調が芳しくないとは聞いていたが…」


「フェッフェッ!だからあのガキも忙しないのかい!!唯一の家族が死にそうとありゃ、そりゃ一大事だねぇ!!」


クラウスさんと魔女さんの会話が頭上で繰り広げられるが、全て右から左へと流れていく。



何故。

一体何故。



その言葉だけが私の頭の中で永遠に行き来する。


「話と違う…!」


「?どういうことだモブロード嬢。」


「2週間は大丈夫だって!まだ時間はあるはずなのにどうして!」


「フェッフェッ!!………レイ……アンタ誰からその話を聞いたんだい?」


その冷たい音色に思わず身体が跳ねる。

私に目線を合わせるように屈み込み、顎を掴まれ無理やり上へと顔を上げさせられる。

魔女さんの瞳は好奇心と知識欲で満ちていた。


「前から疑問だったのさ!!魔法に関する半端な知識!妖精からの異常なほどの恩恵!しかも今回クラウスがお前さんと来たのも、妖精の導きと来たもんだ!!いいかい!?アイツらは一個体に執着するようなタマじゃないんだよ!特に、お前さんのように魔力をカケラも持たないような生き物にね!」


「手を離せ。」


好奇心に身を震わせる魔女さんの手を叩き落としたクラウスさんは、私と魔女さんの間へと入り込む。


「それ以上彼女を存外に扱おうとするならば、





















斬り伏せるぞ……収集の魔女。」








「フェッフェッ!!こんなに面白そうなやつ逃すものかい!!お前も分かってるはずだよクラウス!妖精を自在に操る……もしそんな()()()()()があれば大混乱だからねぇ!その力を見極めさせるためにワタシを紹介したんだろう?」


クラウスさんも魔女さんもなんの話をしてるのか分からない。どこから出したのか分からないけれど剣を抜こうと構えるクラウスさんと、そんな彼など眼中になく私へ熱烈に視線を送る魔女さん。アルのおじいさんが危ないこの時に、どうでもいいことで喧嘩しないでほしい。身体の内側がマグマのように熱くなり、もはや我慢ならなかった。


「そんなのどうでもいい…」


「……モブロード嬢?」


一度出てしまえば止められない。

激情のまま私は言葉を重ねた。


「こんな…アルが……あの子が苦しんで大変な時に………何にも出来ない私にそんな力があるわけないでしょう!?妖精さんが力を貸してくれるのは、私がたまたまあの子達の声が聞こえるから!魔力カラッポの干からびた私にも優しくしてくれるあの子達をそんな風に言わないで!」


泣くな。泣いても意味がない。


そうは思っても幼くなった反動で涙腺が緩んでいるのか、視界が徐々に歪んできた。


「それに何!?人が死にそうだって時に!世界が大混乱?知らないっての!!そんなこと言ってる暇があるなら私にゴルゴンの肝を頂戴よ!それでポーション作って!おじいさんを助けにいくほうがよっぽど大切なことなんだからぁあああ!!うあああ!!」


鼻水と涙が噴水のように溢れ出す。


泣きたくないのに。

泣いてる暇があるなら行動しろと、頭では分かっているのに。


猛獣のように泣きわめく私を見て、魔女さん……ワンダさんはため息を吐いた。


「はいはい……分かったよじゃじゃ馬娘。そんなに泣きわめくんじゃないよ。」


「ひぐっ………だっでぇ!ワンダさんがぁ!」


「あー、ワタシが悪かったよ!これで満足かい!?」


「よぐない"!!ゴルゴンの肝!今!よごぜぇえ"!!」


「ここぞとばかりに!まだやらないって言ってるだろう!少し落ち着きな!」


ワンダさんは私を抱き抱え、背中を摩る。

腹ただしいのになぜか安心してしまう自分が憎い。

せめてもの反抗心で鼻水を洋服に擦り付ける。


「お前さんに妖精を操るなんて、洗脳系魔法が使えるなんて思っちゃいないさ。そんなことをするようなヤツだとも思ってないよ。煽るような言い方をして悪かったねぇ…。」


「お前……本当に収集の魔女か?」


「お前さんはもっと空気を読むということを勉強しな!この脳筋男が!」


クラウスさんにツッコミながら私の顔を覗き込むように抱え直すワンダさん。


「あーあ……ひっどい顔だねぇ…仮にも女だろう?」


「こんな顔にしたのはワンダさんとクラウスさんだから……ズッ……責任とって…」


「そうだねぇ…しょうがないから手を貸してやるよ。ほらクラウス!お前さんも手伝いな!」


え、手を貸してくれる?


駄々をこねたが実際には予想もしていなかった展開に驚きで涙が引っ込むと、その様子を見たワンダさんが何かを企むかのようにニヤリと笑う。


「ゴルゴンの肝に関しては約束の日まで渡せないが……代わりにいいものをやるさ。使い方を教えてやるから、その少ない脳みそでちゃんと覚えるんだよ?バカ弟子(レイ)。」


いいとも。やってやるさ。


そんな強い思いを胸に、私は強く一度頷いた。

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