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転生者は、魔女と過ごす〜1日目〜

「フェッフェッ!ほらほら手が止まってるよ小僧!早く動かんか!」


「てめぇクソババァ!覚えとけよ!」


(この親戚のおばさんの家に遊びにきた感じはなんだろう。)


ハート柄の前掛けをつけて庭の草むしりさせられているアルを眺めながら、魔女さんに入れてもらった紅茶を飲む。


「ワンダさん、紅茶美味しいです。」


「フェッフェ!そうかいそうかい!お前さんは素直で可愛げがあるねぇ!レイ!!菓子も食うかい?」


「まじですか。いただきます。」


「おい!いい加減にしろよこの野郎!なんで馴染んでんだよクソが!!」


「適応力が私の長所だと自負しているからね。」















魔女の家、1日目開始。














◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「それにしてもワンダさん。昨日の姿まるで別人でしたよ。あれも魔法ですよね?」


「そうさ?ああやっていろんな奴に化けて望んだものを手に入れるのさ!!いい案だろう?」


なるほど。確かに使い勝手の良さそうな魔法だ。紅茶を振舞ってくれるいい人だから、犯罪者ということを忘れてしまいそうになる。


「おいクソババァ!草むしり終わったぞ!いつから放置してんだあの庭!ふざけんじゃねぇ!!」


「なにをそんな不服そうな顔してるんだい?招かれざる客なんだから働くべきだろう?」


「こんなふざけた前掛けまで寄越しやがって…!!」


「おやおや!よく似合ってるじゃないかい!ああそうだ!ついでにそのまま部屋の掃除もしておいで!」


「なにがついでだクソが!!絶対やらねぇからな!」


(なんだかんだ馴染んでるのはアルもじゃないか。)


なんとなく微笑ましいやりとりを横目で見ながら紅茶を飲み干す。魔女さんとアルのやりとりをずっと見ていたいけど、アルは私のために着いてきてくれたのだからそろそろ可哀想だ。


「ワンダさん、私が掃除しますよ。」


「はぁ!?」


「おやおや?レイ、アンタがやってくれるのかい?」


「いえいえアルは私を心配して着いてきてくれたので、私が連れてきたようなものです。……アル、そこで休んどいてね。」


「お、おいまて!」


「フェッフェ!そうかい!なら掃除道具はそれを使いな!」


そう言って指を鳴らすと目の前にピカピカの掃除道具が出てきた。魔法って便利。

特になにもない部屋だが汚れがこびりついている。気合いを入れるため腕をまくり、出してもらった新品の箒を取ると赤髪が視界に入ってくる。


「アル?」


「お前はそっちやれ。オレはこっち側やるから。」


「え、でもアルのいる方がホコリが」


「いいから!!そっち適当に掃いとけ!」


「は、はい……」


ズンズンと足音を立ててホコリが溜まったエリアに向かうアル。

足元が崩れそうな勢いで進むから、若干不安だ。


「そんな綺麗好きだったのか…」


オカン気質強すぎだな。


「フェッフェッ!そうかいそうかい…!」


なにを考えたのか深く頷きながら私たちの様子を見る魔女さんは、とても楽しそうだった。































掃除が終わったのはそれから3時間後のことだった。


「フェッフェ!!全くよく働いたねぇガキども!!ほれ、褒美の菓子だよ!!」


「ふっっざけやがって……!なんで掃除でこんなに疲れなきゃならねぇんだ……!」


「いただきます。……そんなこと言いながら結構ノリノリだったよねアル。」


全員で床に座りながらお菓子を頬張る。

私はそんなに大変ではなかったが、アルが変わってくれたエリアは魔法陣が敷かれていたらしく。時々爆発音が聞こえたり、アルの怒声が聞こえたりと忙しそうだった。それでもちょっと楽しそうに見えたのは間違いではないと思う。


「フェッフェ!!お前さんがワタシの保管室に近づいたからさ!バカだねぇ!」


「保管室?それってワンダさんのコレクションが保管してある場所ってことですか?どこに…」


「っ!!このバカ!!」


私の言葉を止めようと全力で口を抑えにきたアルに驚き、言葉を止める。するとバカ笑いをしていた魔女さんも一瞬動きを止め、ゆっくり私の方へ視線を寄越す。


「レイ。やっぱりアンタは魔法陣が全く見えないようだねぇ。」


「え"……」


「フェッフェッ!!残念だったねぇ小僧!せっかくこの部屋のすべての魔法陣を発動させて、安全を確保したのにねぇ?」


「え?え?どういうこと?」


私1人だけなにも理解しておらず、おそらく頭上にはてなマークが浮かんでいることだろう。それを見た魔女さんはニヤリと笑い、私に説明をしてくれた。


「万が一ワタシの保管室に近づいた不届きものがいた場合に備えて、誰にでも見えるように魔法陣を敷いたのさ!」


「ま、マジですか………」


「まさかアンタから掃除したいと言い出してくれるなんてねぇ?警戒心なんてまるでないお嬢さんだね全く!この小娘を守るのは骨が折れそうだ!同情するよ小僧!」


「お前に同情なんてされたかねぇよクソが!」


自分がそんな危険な状態にいたとは知らなかった。のんびり紅茶とか飲んでる場合じゃなかったわ。


(そういえばこの人魔女だった…)


我ながら自分の呑気さに呆れる。


「え、えと……その…」


「まあ別にアンタか魔法陣が見えなくてもどうということはないさ!単なる暇つぶし!色々と質問に答えてもらえればそれでよし!」


「はぁ…まぁそれならいいですよ」


「ダメに決まってんだろうが…!…お前…いい加減にしろよ?そろそろ学習しろこの単細胞!!」


頭を鷲掴みにされ、ミシミシと頭蓋骨が悲鳴をあげる。


「だ、だって単なる暇つぶしって!」


「だからなんで疑わねぇんだよ!コイツはお前を魔法陣に近づけようとしてたんだぞ?ちょっとでも触れたらお前みたいなノロマなんて一瞬であの世行きだ!」


「おおお…すごい言われよう。……私を殺すつもりだったんですか?ワンダさん。」


「いや?とんだ誤解だねぇ?あの掃除道具には防衛魔法が掛かっているんだ!そう簡単には死なないよ?フェッフェッ!」


「……だってアル。」


「お前何にもオレの話聞いてねぇな!鵜呑みにすんなって言ってんだよ!!」


ず、頭蓋骨が割れる!!目玉飛び出る!

思わず涙目になると焦ったように力を緩めるアル。


「フェッフェッ!箒に防衛魔法が掛かっていたのはお前も気づいているだろう?…安心しな!クラウスからの紹介のガキは殺せない!アイツにワタシが殺されちまうさ!」


「………ッチ」


「アンタが嘘をついたりしなければこんな手荒な真似は今後しないさ!」


改めてよろしく頼むよ?


魔女さんは新しい玩具を見つけたように楽しそうに笑った。

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