転生者は、協力を仰ぐ④
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「れ、レイちゃん……えっとその人は?」
目の前には困惑する父親。口に運ぼうとしていたアイスが溶け出しているのにも気づいていない。そうだろう、娘がいきなり知らない人を連れて帰って来たのだから。
「この人、ワンダさんっていうの。」
「はじめまして。ワタクシ、王都にて調剤師として活動しております、ワンダと申します。」
そう、この私の隣の冴えない瓶底眼鏡の女性こそ、収集の魔女ワンダ様である。あんなに綺麗な美人さんだったのが想像できないほどの地味さ加減だ。
「調剤師の方……。娘を送ってくださったんですか?ありがとうございます。」
「ええ。送ってきたのもありますが、お話ししたいこともありまして。」
「え?」
「少々、お時間、いただけますか?」
有無を言わせぬ雰囲気を作り出した魔女さんは若干強引に我が家に上がり込んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「すみません。我が家にお客様をお呼びするのに慣れていないものでして。……よければお茶でも?」
「いえ、結構です。回りくどいのは苦手でして、早速本題に入らせていただければ。」
「はぁ……どうぞ。」
(これ今目の前にいるのが魔女だってバレたら、父親失神するだろうな。)
私だけジュースを飲みながら、父親と魔女さんのやりとりを観察する。
「失礼ですが奥様は?」
「妻は体調を崩しておりまして。私だけで話を聞きましょう。」
「なるほど、ではお嬢さんのお話は本当だったということですね。」
「?どういうことでしょうか?」
「お嬢さんが私に弟子入りしたいと熱烈に志願されていまして。」
「弟子入り!?!?」
父親が私に勢いよく顔を向ける。
魔女さんの言葉に賛同するように軽く頷くと、動揺が隠しきれず無意味に椅子から立ったり座ったりと上下運動を繰り返している。
落ち着け。
「ええ、せめてワタクシがこの村にいる1週間だけでもとそれは熱心に。通常調剤師は弟子を取らないことは常識ですが、少し気になりまして理由を話していただいたんです。そしたら……奥様が重い病気に蝕まれているとお伺いしましてね。」
魔女さんは瓶底眼鏡を一度上へ押し上げ、言葉を続ける。
「どのような病かと思えば……なるほど。巷で有名な原因不明の病だったとは。」
「わ、分かるんですか…?」
「こう見えても王都では有名な調剤師でして。奥様はあそこの部屋の奥で休まれていらっしゃるのでしょう?あそこから桁違いの負の魔力が溢れ出ています。」
魔女さんが指をさした方角は確かに母親の療養部屋だ。魔女はそんなことも分かるのか。万能だな。すると父親は観念したように頷き、語り出した。
「ええ…おっしゃる通りです。妻は……エマは原因不明の病に侵されています。私が妖精牧場を営んでいるので、妖精の粉でなんとか進行を遅らせてはいるのですが。」
「なるほど。アレの気配がするのもそのためですか。」
「?あれとは?」
「ああいえ妖精のことです。妖精はなぜかワタクシを苦手としているようで、あまり近づいてきてくれないんです。しかし、お嬢さんは大層好かれているようですね。幼いのに驚きました。」
「レイは一年ほど前から牧場を手伝ってくれていまして。その影響か妖精には好かれているのです。」
父親が嬉しそうに私を見つめてくるので、なんだか痒くて視線をそらす。
「ええ、そして自身の母親を助けたいと強い意志を持ったお嬢さんのようですね。」
そして魔女さんも私の頭に手を置き、優しく撫でてくれる。
「お父様、もしよければワタクシに彼女を預けていただけませんか?」
「………。」
「彼女の意気込みを買って、ワタクシの知識をできる限り伝えていこうかと考えています。ワタクシ自身は1週間しかここには居られないので修行のような日々となるでしょうが、彼女なら耐えられるでしょう。それにどうやら不思議な力をこの子は持っているようです。」
「不思議な力……ですか?」
「ええ………それはそれは不思議な力を…ね。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後我が家に1人、訪れた人間がいた。
私の部屋で父親に聞こえないよう、小さく呟く。
「で?どうだったんだよ。」
「大成功だよアル。……全て計画通り。」
「うぜぇからその顔やめろ。」
両親の説得のため、魔女の家で解散となったアルに事の経緯を全て説明した。
「なんで魔女にオレたちの目的まで馬鹿正直に説明したんだよ?」
「成り行きで。嘘ついてもいい事ないし。それに魔女さんを調剤師として紹介しといた方が、ポーション作った時怪しまず飲んでくれそうでしょう?だから協力してもらったの。」
そう、前回ポーションを作った時。
具合悪くてなんにも考えてなかったが、どうやって飲ませるかノープランだったのだ。
せっかく作ったとしても怪しまれて飲んでくれなければ意味がない。
「確かにあのポーションの色はドブみたいな色だったしな。」
「ドブ言わんといて。」
たとえまたドブ色だったとしても、調剤師の太鼓判があれば安心して飲んでもらえるだろう。それが一番の狙いだった。
「それでも魔女さんがあんなにノリノリで役に入り込んでくれるとは思わなかった。」
「楽しんでるだけだろ。いけすかねぇ。」
「まぁまぁそれでも説得出来たんだし。これで1週間魔女さんと過ごしていればゴルゴンの肝も手に入って一石二鳥じゃない。あとはなるようになるって。」
敷きっぱなしの布団に飛び込み思いっきり伸びる。ホコリが飛ぶからやめろとアルに怒られるが気にしない。あーこのまま眠りたいわー。その思いに忠実に顔を布団へ埋める。
「明日からあの幽霊屋敷みたいなところに通うと思うとちょっと緊張するなー。たどり着けるかなー。」
「そこかよ心配するところ。………オレが転送魔法で一緒に連れてってやるから問題ねぇよ。」
「ん?どういうこと?」
「あ?」
思わず顔を上げて尋ねると、アルもお前何言ってんだという顔で聞き返してくる。
「え?アルも来るの?」
「あ"あ"!?当たり前だろうが!!馬鹿かお前!!!」
「だ、だってお呼ばれしたの私だけ…」
「知るか!!っつーかあんなビビってたところに1人で行かせるわけねぇだろ!なんでそこはテキトーなんだよお前!」
「う、うん。心配してくれてありがとう。」
「別に心配してねぇよクソが!」
「分かった分かった。」
(これは照れ隠しだな。だんだん分かってきたぞ。)
心配してくれた心優しい幼馴染に思わず笑みが零れる。
「それでもアルが居てくれるとやっぱり心強いよ。よろしくね。」
照れ隠しでアルが枕を投げつけてきて、本気の枕投げ大乱闘になったのはこの後すぐのことだった。