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転生者は、協力を仰ぐ③

ボロボロの大きなソファが一つ部屋の中心にポツンと置かれており、その椅子を取り囲むように壁中に奇妙な絵が飾られている。それ以外には何もない、実に殺風景な部屋だった。


「ほらモタモタするんじゃないよ!」


大声で叫びながらギシギシと悲鳴をあげるソファに全体重を預ける魔女。長い足を組み、額につけていたゴーグルを外す。そして壁にめり込んでいたタバコを取り出して煙をふかした。


「で?なんだい?ワタシだって暇じゃないのさ!今度はグリフォンの羽をもぎ取りにいかにゃらんのでね!!」


「さらっと宣言するな。グリフォンの羽など手に入れたら死罪だぞ。」


「死罪ぃ?それがなんだってのさ!そんなの怖がってたら魔女なんてやってられないね!……アンタまさかそんなくだらないことを警告しに来たんじゃないんだろうね?」


「まさか。魔女を心配する暇があるならば他のことをするさ。」


器用に片目を釣り上げニヒルに笑う魔女。

タバコの香りが部屋中に立ち込めたところで、クラウスさんが手で煙を仰ぎながら話を切り出す。


「相変わらず収集をするクセは抜けてないのだろう?」


「まぁそうだねぇ!気に入ったやつはぜーんぶワタシのもんにするんだ!」


「ならばゴルゴンの臓器も所有しているか?可能であるならばこの子達にいくつか恵んでやってほしい。」


「…………はぁぁあ?」


魔女は上半身を起こしクラウスさんを凝視する。もともと大きかった瞳はこぼれ落ちそうなほど見開いている。


「ドッキリかい?」


「ドッキリなどではない。私はそんな嘘はつかん。」


クラウスさんにお任せするばかりではなく、私からもお願いしなければと声を出す。


「はい。……あのゴルゴンの肝を恵んでくれると大変ありがたいです魔女さん。」


その結果魔女さんに強烈な視線を向けられビビる。……アルを若干盾にしているのは不可抗力だ。決してわざとではない。


「……クククッ………フェッフェっ!しかもそこの赤髪(ガキ)じゃなく、()()がそれを言うのかい!?」


耐えかねたように爆笑して、ついにはソファから落ちる。床を転がり出したため、クラウスさんに肩を押され部屋の隅まで移動させられる。


「気に入られたようだな。機嫌が良くなるとああなるんだ。」


「どんな魔女だよ!!」


一通り笑い転がり、軽く目元を拭きながら立ち上がった魔女はアルを盾にしてる私を覗き込んだ。


「それで?魔物の臓器なんて不気味な物を欲しがるお前さんの名はなんていうんだい?」


「……レイ・モブロードです…。」


「そうかいそうかい!こんなに笑わせてもらったのは久しぶりだから特別にゴルゴンの肝をくれてやる!!……だがタダっていうのはつまらないしね……?」


ビシッと細くて長い人差し指を立てて、私を見つめてくる。


「……そうだねぇ!ゴルゴンの肝を渡すまでの1週間、お前さんがワタシの城(ここ)で生活できたら…にしようかね!」


「っっざけんな!!」


アルが魔女の方へ手をかざすと植物のようなものが床から伸びて絡みつく。食虫植物のような口が威嚇するように歯をカチカチと鳴らしている。


「フェッフェッ!!なんだいなんだい!この寂しい魔女の話し相手になってくれと頼んだだけさね!何をそんなに噛み付いてくる必要があるんだい!」


「あ"あ"!?知るかんなもん!!さっきから聞いてりゃ……腹立つんだよてめぇ!!魔力吸い取って元の干からびた姿に戻してやるから感謝しなクソババァ!!」


「ああんだって!?なんならワタシがお前の魔力を吸い取って今すぐ剥製にしてやろうかい!?」


ただでさえ古い魔女の家が小刻みに揺れる。

ポルターガイストのように揺れる奇妙な絵が、なんとも恐ろしい。


(これ私に見えてないだけで、互いに魔法を撃ち合おうとしてるんじゃ……)


「やめないか2人とも。そんなに大量の魔法陣を発動させれば大惨事になるぞ。…………モブロード嬢が。」


「今すぐやめろ2人とも。」


若干食い気味に2人に言えばすぐに揺れは収まった。そしてある程度冷静になってくると現在の状況を読み込むことができた。


「まず魔女さん。普通4歳児が1週間も行方不明になれば誘拐沙汰です。両親に心配をかけたくありません。」


「へぇ?ゴルゴンの肝は諦めるかい?」


「そういうわけにもいきません。それに私が魔女さんの家に1週間お泊まりとなると、多くの人に魔女がこの場所にいることを知られる可能性があるので貴方にとってもこれは利益にならないと思います。。」


「ふーんそうかい。じゃあどうするんだ?」


「なので1週間、私がこの家に通うというのはどうですか?それなら話し相手にもなれるし、人にも知られにくい。なにより私も気兼ねなくゴルゴンの肝をいただけるので。」


「おまっ!」


私の言葉に驚いたアルは肩を掴み、激しめに揺さぶってくる。


「なに考えてんだお前!!相手は魔女だぞ!?」


「魔女だけどゴルゴンの肝をくれるなら、ある程度条件は飲まなきゃ。それに時間がないからね。」


「それは……!でも!」


「大丈夫だよアル。私を信じて。結構人を見る目はある方だと思ってるから。というわけで、あの変な植物の魔法を解除して。怖いから。」


安心させるように笑顔を向け、強制的に黙らせる。


(それになんとなくアルに雰囲気似てるから、なんだかんだ上手くやれそうな気がする)


「フェッフェ!いいねぇ!女は度胸!!…………気に入ったよレイとやら。1週間ワタシのところに通い続けられたらお望みのものをくれてやるさ!」


「言いましたね?ではその取引を受けるにあたりまして……」


我が家に来て両親の説得を手伝ってください。


そういうとアルは頭を抱え呻き、魔女さんは腹を抱えて笑った。



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