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転生者は、妖精の勤勉さに感動する

4000PVありがとうございます!

あわせてブックマーク、感想などなどありがとうございます!


登場人物も増えてきて私が一番楽しんでます笑

引き続きよろしければブックマーク、評価、感想などお待ちしております!

ふわふわとした空間。

暖かいものに包まれているこの時間が、昔から好きだった。


(決めた。今日はこのままのんびりしよう…)


訪れた微睡みに身を任せ、さらに深い眠りにつこうと寝返りを打ったとき、微かに小さな声が聞こえた。


『レイちゃんー!オキテー!』


『朝だヨー!』


(知っとるがな……)


私は今二度寝で忙しいんだ。話しかけないでくれ。そんな思いのまま布団を深く被り直す。するとまた遠くから声が聞こえてきた。


「ごめんなさいね…あの子ったらまだ寝てるみたいで…」


「……そうっすか…じゃあここで待ってますんで…」


「ふふふ……よかったら起こしに行ってあげて。あの子もきっと喜ぶわ。」


「よろこっ…!…ん"ん"っ!……じゃ、じゃあ…その…お邪魔します…。」


……-誰か来たのか?

なんだかすごく聞いたことある声だったけど………いや無理眠い。無視しよう。

足音が近づいてくる気がするけど。

その足音が私の部屋の前で止まり、ガチャっと扉が開いた。


「…また包まってんのかコイツ。」


ボソッと聞こえた声は明らかに私に向かってだ。この声は誰の声だったか。しかし誰かさんが開けた扉のせいで冷たい風が部屋へなだれ込んでくる。


「寒い……扉…閉めて…眠い……」


もぞもぞと身体を縮こませ、より冷気から逃れるために布団を巻きつけて寒さをやり過ごす。


「扉を閉めて……だと……?眠い?」


あれ?なんかもっと寒くなった。

しかも…なんか忘れてるような……


「また明日にでも関所を訪れると良い。」


あ、やべ。

今日クラウスさんに会いにいく予定だったわ。


「こんな時間まで寝てるとは……いいご身分じゃねぇか?あ"?てめぇの前世は芋虫か!このクソ虫がぁああ!!!」


「ぎゃあああ!!!」


思い出したが、一歩及ばず。

激怒したアルに布団を巻き上げられた。


「庭の掃除をしてきたよ!エマ!……あれ?誰か来てるのかい?エマ?」


「おかえりなさいエドワード。ふふふ…ええ。可愛らしいお友達がね…」












◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇









所変わって村へ向かう道中。


「昼過ぎまで寝るなんて…ババアかお前。」


「すみませんでした…」


アルと約束した待ち合わせ時間は朝の10時。

アルに布団を没収されたのは12時。

あのあと結局ご飯を食べてから遊びに行きなさいと母親に言われ、アルと2人でご飯を食べたりしたから……結局今は13時。

反省の意を示すため、俯きながら少年の後ろをついて行く。


「ごめん……待ってたよね…申し訳ない…」


「………次やったら張り倒すからな。」


小さく舌打ちをするとアルは私の歩くスピードに合わせて、横に並んでくれた。

良いやつすぎてツライ。


『レイちゃんレイちゃん!』


『レイちゃんどこ行くノ?』


「あ?そいつらも戻ってきたんだな。」


「…そうだね。おはようみんな。」


鬱陶しそうに手で払う動作をするアル。顔の前に妖精が飛んでいるのだろうか。


『オハヨー!それよりレイちゃん!ミーたち素材見つけてキタヨ!』


『褒めてホメテ!』


「ホント!?さっすが我が友!」


「っ!!急にデケェ声出すな!!」


「ごめん……でも素材見つけて来てくれたって。見に行こうよ。…それでどこにあるの?」


『レイちゃんコッチコッチー!コッチにあるヨ!』


「いや見えてないから。」


「……妖精ならあっちに飛んでったぞ。」


「流石アル。頼りになる。」


うるせぇ!!と怒鳴る声を尻目にアルが指差した方向へ走る。道なりにしばらく進むと、目に映ったのはいつもの妖精牧場の大木。

何一つ変わった様子は見当たらないが……。


「……すげぇな……」


「え?なにが?」


「あ?これも見えねぇのか?この大木に」


『アー!!言っちゃダメー!!』


『ドッキリさせるノ!!ダメー!』


「っ!!突撃してくんじゃねぇ!口に入るじゃねぇか!!」


アルが凄まじいスピードでひとりでに動き出す。アクション映画さながらの回避力だ。ふつうに凄い……けど何も見えてない私にはシュールな光景だ。


「じゃれあってるところ申し訳ないんだけど、はやくネタバラシしてほしい。」


「じゃれあってねぇよ!!!」


『イイヨー!』


『ジャジャジャジャーン!!』


妖精の声が聞こえたその瞬間。大木の幹が金色に輝き、大木にモヤがかかりよく見えなくなる。


(なんか蜃気楼みたい)


よく見るため目を凝らそうとすると。


「っ!!待て!!」


強い力で引き寄せられ、アルに頭を押さえ込まれる。その瞬間に凄まじい突風が発生し、思わずアルにしがみつく。


「な、なに……?」


「クソが!すぐに()()()を閉じろ!!」


『大丈夫ダイジョウブ!取り出すだけだヨ!』


「聞こえてねぇのか!!今すぐ閉じろっ!」


「待ってアル。よく分かんないけど、取り出すだけって言ってる。」


「取り出す?なに言って!!」


ドクン。


なにか鼓動のような音が響き渡ると、さっきまでの突風が嘘のように静かになった。

サワサワと穏やかな風となり、あれほど強風だったというのに牧場は荒れた様子はない。


『オマチドウサマ!』


「おお……」


見える。見えるぞ……私にも。

さっきまでなにもなかったのに、目の前に植物や鉱石のようなものが置かれていた。


『セイレーンの涙、体力の花、化け鼠のヒゲ!それぞれ15個!!タイリョータイリョー!!』


「こんなに…たった2日でどうやって手に入れたの?」


『世界中の仲間に協力してもらったノ!レイちゃんが喜ぶかと思っテ!』


……お前ら仕事出来過ぎ。


間近でよく見ようと動こうとするが、なぜか動けない。それもそのはず、私を抱えたままアルも呆然とその光景を見つめているからだ。驚いているのだろうが…いささかこの体勢はいただけない。


「アルくんよ。」


「…………あ?」


「庇ってくれてありがとう。もう離してくれて大丈夫だよ。」


第三者から見ればアルに抱きしめられてる状態。しばらく考え込み、ようやく理解したのかアルは顔が真っ赤になった。


「は!?!な!?!!!」


「ぐぇ!逆逆!!力緩めて!内臓出る!」


ギギギっとブリキのように腕の力を弱めるアル。その隙間からするりと身体を滑らせ、大きく伸びをして空気を吸い込む。庇ってもらったとはいえ整った顔が近くにあると緊張するし、危うく殺されるところだった。


『アラアラ?アルから()()()()()()()がするヨ?』


『もしかして?モシカスル?』


「アイビス?なにそれ?」


「っ!!!」


聞きなれない単語が聞こえ、思わず妖精に聞き返す。私の言葉に反応するように、アルの肩が大げさに跳ねる。


『エー?レイちゃんアイビスも知らないノ?』


『アイビスっていう花があってネ!』


「なにがアイビスだクソバエどもが!!変なこと言ったらぶっ殺すぞ!!」


さっき妖精たちを避けたときとは桁違いのスピードで拳を振るう。キャー!コワイー!と妖精たちははしゃいでるけど、なかなか殺気があって怖いんですけど。

なに?そんなに知られたくないの?

アルは目を血走らせながらドスが効いた声で周囲を威嚇している。


「1匹残らず焼却処分してやらぁ…!」


「発言が物騒!!そ、そんなよく分かんないものより妖精さんたちが持ってきたものを見てみようよ。」


知りたいけど、目の前の般若の顔を見たらそんな気失せるわ。私は知識欲より命の安全を優先する女だ。


『ワーイ!見てミテレイちゃん!』


『ミーたち頑張ったんだヨ!』


妖精たちの声を聞きながら、目の前に出された素材たちを手に取って見る。

大きな紅い蕾をつけたこの植物はおそらく、体力の花。そしてもはや針のように鋭く尖ったこれが、化け鼠のヒゲ。そして青くキラキラと輝きを放つ勾玉がセイレーンの涙だろう。どれもこれも高価そうなものばかりが並んでいる。


『妖精王サマにお願いして取ってきたんだヨ!』


「妖精王?」


『レイちゃんが欲しがってるって伝えたノ!そしたらイイヨーって!』


「妖精王まで絡んでやがるのか!?」


驚くアルの服を引っ張り、念のため確認する。


「結構偉い人だったり?」


「名前のままだ……妖精の王。妖精はもともと一つの生命体だったって話は聞いたことあんだろ?それの本体…コイツらの母親みたいなヤツだよ。」


「なにそれ初めて聞いた。」


「ちょっとは勉強しろよ!それでも妖精牧場経営者の娘か!てめぇは!!」


アルに頬を引っ張られ怒鳴られる。

だって聞いたことなかったんだもの!


「ね、ねぇ……あとで断罪とかされたりしないよね?大丈夫だよね?」


『妖精王サマそんなことしないヨ?』


『でもレイちゃんが大きくなったらお話したいッテ!』


「へ、へぇ……そりゃ光栄なことで…。その時はアルも一緒に行こうね…。」


「あ?なんでオレまで!!てめぇ1人で行けや!!」


「無理無理!!妖精王とか絶対見えるはずないのにお話しなきゃいけないとかハードル高すぎて死ぬ!アルがいないと不安だから嫌だ!!そばにいてよお願いだから!!」


「っ!だからなんでそういうことを平然とした顔で!!」


(せめて妖精見える人がいないと到底行けない!!)


……将来決まった妖精王との会談に頭がいっぱいだった私は、また胸を押さえながら唸っているアルに全く気づいていなかった。


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