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転生者は、付き添う

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あれからぐっすりと眠っていたところを巡回しにきたランちゃんに叩き起こされて、自分のベッドで寝なさいと怒られて。

それでも私のすっきりとした表情を見たランちゃんに「レイにとっての一番の薬は貴方だったようね。」と言われてアルと共に赤面してから数日。


「はじめてくれ。」


アルの検査入院も終わってのはじめての訓練に着いてきて欲しいと、アル本人から言われて見学している最中である。


クラウスさんの言葉を合図に真剣を振り上げたアルは、的に見立てた藁の人形を間髪入れずに斬り伏せる。

身体を捻らせ遠心力を使って訓練場内を縦横無尽に駆け巡り、全ての人形を真っ二つしたアルの動きは最早人間とは思えない離れ業。


「そこまで。……なるほど。1分16秒か、悪くない。」


「…ふん。」


だというのに一切息を切らさない幼馴染の姿に、天晴れの一言である。

一応タオルを用意してアルのもとに駆け寄ると、手渡した後に褒めるように髪を撫でられた。


「アルお疲れ様。世界一の剣豪でも目指してるのかってぐらいに凄かったよ。」


「別に目指してねぇし。それよりモブ、お前体調は?」


「え?特に大丈夫だけど。」


「…ならいい。タオル持って離れとけ。具合悪くなったらすぐ言えよ。」


「??うん。」


アルの言葉通りに距離を取って彼を見つめると、今度はさっきとは異なった空気感に緊張が走る。

深呼吸したアルが剣を構えて全身に力を込めると、反応するようにアイビスの花の髪留めが眩く光り出した。


「……!…これは。」


いつのまにかクラウスさんの視線もこちらに向いており、深く考えるように顎に手を置いてしまう。

思わず首を傾げるとぐらりと視界が歪み、立ちくらみのような症状に眉間に皺を寄せると、すぐに私の様子に気がついたアルが構えるのを止めてこちらに走ってきた。


「おい大丈夫か。」


「え、あ、うん。」


「無理すんなよ、ゆっくり座れ。」


言われた通りに地面に座り、アルに背中を撫でられる。


「ほらこれ飲め。」


「あ、ありがとう。」


冷たい水まで入った水筒まで手渡され、まるで分かっていたかのような処置の無駄のなさに戸惑っていると、一度頷いたクラウスさんは説明のため口を開いた。


「すまなかったモブロード嬢。実は龍の墓場でアルフレッドが剣に魔力を込めた際、貴方の髪飾りが反応を示していたと彼から聞いてな。」


「……あ、そういえば。」


「忘れてたのかよ…。」


「本来、そんなことは到底起こり得ない。武器に魔力を込めたのなら当然、武器にのみ魔力が流れるのが普通だろう?」


「そ、そう…ですね。」


「あぁ。だが結果として言えば、アルフレッドがある特定の行動を取るとどういうわけか、貴方の髪飾りは共鳴して彼の魔力が流れてしまうようだ。」


目が点になるとはまさにこのこと。

思わずアルに視線を向ければ、彼は肯定するように大きく頷いた。


「最初みてぇにオレが魔力を込めただけなら反応しねぇみたいだが、二回目のあの技を出そうとすると反応が出る。」


「あの技って…必殺技(ギガスラッシュ)のこと?」


「そうか。ギガスラッシュと名付けたのか、あの技は。」


「……………あぁ、まぁな。」


「いいな、愛着が湧く。だが原因が分からないな。なぜ共鳴してしまうのか。」


「あの、共鳴しちゃうのってそんなに駄目なんですか?」


私を置いてきぼりにして頭を悩ませるクラウスさんに思わず尋ねると、彼は言い聞かせるように口を開く。


「そのギガスラッシュとやらの威力は大方想像がつく。素晴らしい技だろうが、その技を放つ度に彼の魔力が漏れ出して貴方の身体を経由してしまっては……」


「なるほど、威力が半減してしまうかもってことですね。」


「え。」


「え?」


「ちっっげぇよ!!お前の身体に負荷がかかるってことだ!!!」


「あ、そっち?」


「普通そうだろうが!!頭沸いてんのか!」


「ごめんごめん。でもそれは問題ないよ。」


「はぁ!?」


何言ってんだと驚くアルに思わず微笑む。

だって正直目眩と言っても妖精と比べれば微々たるもの。

恐らく何回か繰り返せば慣れるであろう程度だったし、それに。


「アルの魔力が私の身体に流れるなら心強いし、むしろ大歓迎。」


「なっ!!?」


「なんだか一心同体って感じで照れちゃうね。」


「いっ、どっ!!?」


「ほう。良かったなアルフレッド。」


良かったどうかは分からないけれど、私の言葉を聞いて顔を真っ赤に染め上げたアルは、勢いよく顔を背けた後に口をモゴモゴと動かす。


「そ、そういう問題じゃねぇだろ…!なんでそうなるんだよ……!」


「まぁまぁ、とにかく私ってばアルもご存知の通りこういうの慣れてるから。心配しなくて大丈夫だよ。どうせなら一緒に特訓しちゃう?」


「お前って奴は…!!!」


何故か睨みつけられたけど顔が真っ赤だから全然怖くない。

首を傾げてアルの言葉の先を促すと、彼は荒く咳払いをして私を指さした。


「だったら遠慮なく使わせてもらうからな!!今更後悔しても知らねぇぞバーカ!!」


「あはは!後悔なんてするわけないよ、いくらでもどーんとこい!!」


「そうやって調子乗るんじゃねぇぞ!!具合悪くなったらすぐに言いやがれクソモブが!!おいクソウス訓練再開だ!付き合え!!」


「あぁ、気合が入るな。」


「うるせぇ!!別にいつもと変わんねぇわクソが!!」


ちからこぶを作って笑いかけるとペチン、と叩かれた。

そのまま彼はプンスカ怒りながらクラウスさんを引きずって訓練場に戻って行ってしまったが、さりげなくこちらを心配してくれるあたりやはり優しい子だと思う。

ニコニコ笑顔で見送っていると、ふわりと花の香りがして可愛らしい声が聞こえてきた。


「レイちゃんどうしたノ?どうして笑ってるノ?」


「ん?アルが可愛いなぁと思って。あ、気持ち悪かった?」


「ウウン!!レイちゃんが嬉しいナラ、ミーたちも幸せナノ!」


「そんなことよりホラホラ!お花を摘んできたヨ!」


「レイちゃん見てミテー!」


「うおっ、花がたくさん!ありがとうみんな!」


ぽんぽん、と宙から降り注ぐは野花の嵐。

ほのかに花の香りがしたのはこのためだったのかと納得する。

素直に喜びを示した私の反応に、嬉しそうな妖精たちの声が響いた。


「レイちゃん喜んでル!!嬉シイ!!」


「ホラ!ミーたちが言った通りデショ!お花咲いてるトコロ、いっぱい知ってるんダカラ!」


「そうだね。ありがとう、マリーちゃんも喜ぶよ。」


実は今日の訓練が終わったら、まだ眠りについているマリーちゃんのお見舞いに行かないかとアルと話していたのだ。

アルは承諾してくれたものの、お見舞いのお花をどうするかと悩んでいた時に妖精たちが準備したいと立候補してきたのだが…まさかこんなに用意してくれるなんて。


(持つべきものは友と博識な妖精たちだな。)


空から永遠に降り注ぐ可愛らしい花を拾いあげて束ねながら、そう思った。









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「で、なんで次に振り返ったら花まみれになってんだ…!!」


「あはは!あのアルの驚いた表情最高だったよ!妖精さんたち爆笑してたもん!あはは!」


「知るか!っつーかそういうテメェが一番笑ってるだろうが!!」


「ごめんごめん、なんだか可愛くて。」


「可愛いって言うな!!」


病室に向かう廊下でプリプリ怒るアルを宥めながらも、それぞれの両手にいっぱいのお花を抱えて足を進める。

束ねてみたらお花の量が多すぎて持ちきれなかったので、アルに手伝ってもらっているのだ。

こんな量のお花を短期間で摘んだとなると、その部分丸々禿げてしまっていそうだが…大丈夫だろうか。

……うん、考えたら負けだ。きっと野原は無事だと信じよう。


そうやって歩き進めていると関所の広さに圧倒され、数日とはいえここに入院していたことが信じられない。

ようやく目的の病室にたどり着いてノックをすれば、中から聴き慣れた人の声が聞こえてきた。


「誰?」


「ランちゃーん、レイだよー。」


「あらレイ、それに幼馴染くんまで。もしかしてマリーのお見舞い?」


「うん。」


「ッチ、オレは付き添いだっつの。」


「なに怒ってるのよ、素敵な花束まで持ってるくせに。マリーったら幸せ者ね。待ってて?花瓶、用意してくるわ。」


「ありがとうランちゃん。」


私の頭を撫でてウインクしたランちゃんはそのまま病室を退出する。

その間に椅子をベッドの横まで移動させて座り、眠っているマリーちゃんの顔を覗き込んだ。


「…………眠ってるね。」


「だから入院してるんだろ。」


「そうなんだけどさ、やっぱりこうやって見ると…その……」


最後まで言葉を口にはしなかったが、アルには不安な気持ちが伝わったらしい。

ため息を吐いたアルが近づいて私の頭を撫でて告げた。


「命に別条はねぇって話だったろ。そんな顔すんな。」


「…うん。そうだね。」


「案外手でも繋いで呼びかけてやれば、すぐ起きるかもしれねぇぞ。」


「あはは、確かに。やってみる価値はありそうだね。」


お見舞いに来ている人間が暗い顔をしては、マリーちゃんに心配をかけてしまう。

アルの言葉に自然に笑みがこぼれ落ちると満足気にアルは瞳を細め、流れるように私の頬に軽く口付けた。


「……にしてもあのクソえくぼ、遅ぇな。どこまで花瓶取りに行ってんだ。」


そのまま何事もなかったかのように廊下に顔を出しに行ったアルを、少し火照った顔のまま見つめた。

全くさりげなくそういうことしてくるんだから。


「無自覚な男ってやだね、マリーちゃん。」


半ば言いつけるような気持ちで掛け布団の上に置かれた彼女の手を拾い、ぎゅっと握りしめる。

すると僅かだが、握り返されるような感触に目を見開いた。


「マ、マリーちゃん?」


声をかけるとゆっくりと瞼が開いていき、彼女の綺麗なコバルトブルーの瞳が私を見つめている。


…………え。


「あぁあああああああああああ!!!?」


「っ、うるせぇ!!なんだいきなり!」


「ママママリーちゃんが起き、起きっ!!?」


「はぁ!?ま、まさか起きたのか!?」


アルの言葉に大きく頷くと、彼は一目散に廊下に出て大声でランちゃんの名を叫んでいる。

私もランちゃんを呼ぼうと一先ず彼女の手を離そうとすると、彼女は緩く私の手を引いて小さく呟いた。


「………マ…ザ……?」


あぁ、私をマザーさんと勘違いしてるのか。


心細そうにするマリーちゃんを見て心を落ち着けなければと、数回深呼吸をしてから彼女の手を両手で強く握り返す。


「大丈夫、ここにいるからね。」


嬉しそうに笑った彼女の顔を見て、人知れず覚悟を決めた。


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