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新兵は、蛇に付いていく

いつもありがとうございます!!


そしてブックマーク登録いただきありがとうございます^_^

大変励みになっております…!!ありがたやありがたや…!!


今後もよろしければブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております!!


がぶり、とシラタマが地面に齧り付き世界が変わる。


「おい!大丈夫か!!?」


腰に携えた魔法石から俺たちの身を案じてくれているムーンの声が反響した。


「だ、大丈夫だけど…ムーン、お前にもこれが見えてるか?」


「…あぁ、ばっちりだ。まったくとんでもないものが隠れてたな。まるで隠れ家だ。」


平野だったはずの風景は岩壁に取り囲まれる渓谷へと様変わりし、目の前には俺たちを出迎えるように大穴が開いている。

その有り様が大口を開けて今にも襲いかかってきそうな龍の頭部のように見えて、一瞬で身が竦んだ。


「まさかこれがエミリー様のおっしゃっていた龍…か…?」


「おいおい…!こんなのありかよ…!!」


「ふん、ソレは死んでからだいぶ経ってるようッスヨ。恐れる必要はないッス。」


「は、はは、な、なんだそれなら……ん?ってことはマジでマジの本物!?」


「で、でも死骸というよりはどう考えても岩だぞ?」


「そしてお前はなんでさらっと触ってるの!?」


「うるさいッスヨ。メディサマが本気出せば、あっという間に固められて永遠にこのままッス。」


質問に答えたようで答えてないシラタマはしゅるりと優雅に身体を唸らせ、周囲を警戒するように舌を出し入れする。

すると一転して安心したように息を吐いて俺たちに向き直った。


「…ふう、メディサマは既にひと通り暴れた後のようッスネ。ひとまず命の危険はないッスガ、いいッスカ?メディサマの魔力で反応するゲートの先にあるとなればここはあの方の()()だったってことッス。もしこのままお前たちも進むというナラ…中は死体はたまた石像の山といったとこッスカラ覚悟しといた方がいいッスヨ。」


「し、死体…!?石像!?」


「待て待て待て!なにひとつついていけないんだって!もっと詳しく」


「別に分からないならそれでいいッスヨ。オレはこのまま進むッス。旦那ぁああ!!何処にいるッスカ!?シラタマッス!迎えに来たッスヨ!!!」


シラタマが旦那と敬う人物はたった1人だけ。

シラタマの叫び声にキッドと視線を合わせると、彼もまた顔面を蒼白にして俺を見つめていた。


誰かの餌場と呼ばれた物騒な場所の何処かに、俺たちより強いとはいえ幼い子供が残されているというのか。

ということは一緒に出かけて行った少女もまた同義である。


「お前たちこれはなんだ!!なにをした!!」


「先輩っ…!!ヤバいですよ…!!この中にアルフレッドが!!レイちゃんが!!」


「はぁ!?何を言っている!!こんなところに一般人がいるはずが」


「すみません…!シラタマがなにか感じ取ったようなんです!!処罰なら後で受けますので!俺!!俺あとを追いかけます!!」


「っ、待てガントレッド!!落ち着け…!!」


俺たちの必死の形相に先輩たちもことの大きさを悟ったのか、ムーンたちを馬車に残しその他の隊員全員で慎重に歩みを進めながら生存者を探す。


「……なんだ、これは…。」


「…っ…生存者、確認、できません…!!!」


先輩の言葉に返した自身の声は、情けなくも震えていた。


「……手分けするぞ。お前たち2人はアレを連れてきた責任を取れ。追いかけて捕らえろ。なにかあれば魔法石に連絡、分かったな。」


「「…はい。」」


奥へ奥へと進むたびにひとつ…またひとつとかつて人間だったソレが目の前に広がる惨状に涙と吐き気が込み上げてくる。

襲撃の現場に居なくとも、生々しく残る石像の表情から当時の現場の混乱ぶりは痛いほどよく理解できた。


襲撃者は一切の情けを掛けず、大剣を構えて家族を守ろうとする勇敢な少女からまだまだあどけなさが残る幼い子まで一人残らず石にしてその未来を奪ったのだろう。


まさに地獄絵図と呼ぶに相応しい光景だった。


「…あぁ、お前たち結局来たッスカ。」


「シラタマ…!なんなんだよこれは…!!どうしてこんな…!!」


後ろから追いかけてくる俺たちの足音を聞いて、立ち止まってくれていたシラタマに想いをぶつけるキッド。

キッドのその悲痛な声を聞いてため息を吐いたシラタマは、言い聞かせるように呟く。


「バラバラに壊されてないだけマシッスヨ。」


「はぁ!?これがマシなわけあるかよ!!」


「落ち着くッス人間。いいッスカ?普通、メディサマは石にした奴らを粉々に破壊して踏み潰すッス。そうしたら何が誰の死体かも分からない、弔いようもないッス……コイツらは原形が残ってるだけマシなんッスヨ。」


「っ、無慈悲過ぎるだろ…そんなの!!!」


「…そうッスネ。お前の言う通りッス。」


淡々とそう述べたシラタマだったがどこか悲しげで切なげで、魔物である彼も心を痛めていることが伝わった。

その姿を見て幾分か冷静さを取り戻した俺はシラタマに問いかける。


「どうして今回は、石像を破壊することなく立ち去ったんだと思う?」


「…メディサマがお楽しみすら放っておいて先に進んでいたということは、こんなものが目に入らないぐらいに殺し甲斐のある獲物をこの先に嗅ぎつけていたってことッス。」


「殺し甲斐のある獲物?」


「ここから先、血の匂いがぷんぷん漂ってくるッスヨ。間違いなくメディサマと殺し合った奴がいるッス。」


「…それがアルフレッドだってことか?」


シラタマはゆっくりと頷く。


「だから急ぐッスヨ。いくら旦那とはいえ相手がメディサマとなれば無事とは言い難いと思うッス。最悪…」


シラタマは最後まで言わなかったが、言わんとすることはよく分かった。

静かに息を呑み、呼吸を整えて先を見つめる。


「…正確な場所は分かりそうか?シラタマ。」


「石像が立ち並ぶならそこがメディサマが通った道ッス。行ってみるしかないッスネ。」


「分かった………行こう。」


石像の顔の確認もそこそこにキッドとオレ、そしてシラタマは全速力でただひたすらに駆け抜ける。

そして薄暗い洞窟の奥の奥、明らかに人為的に馬鹿でかい風穴が開けられた場所にたどり着くと、そこで初めて生きている生き物の気配を感じ取った。


慎重に足を運び風穴の中を覗き込むと、周囲を取り囲む壁が生きているかのように一定の感覚で脈を打っている。


見れば分かる、絶対にやばい部類だ。


「ほ、本当にここ通るのか?」


「…嫌ならここで待っててもいいぞキッド。」


「い、いや!いやいやいや!!行くって!行くから!!……そういうお前は怖くないのかよ?」


「怖いに決まってるだろ泣きたい!」


「思ったより余裕なかったんだな!?」


「……情けない奴らッスネ。置いていってやろうカ…。」


「「それだけは勘弁して!?」」


そうキッドと悲鳴を上げたその時、シラタマと俺の耳はなにかの声を拾い上げた。


猛獣などの唸り声ではなさそうだが、何を言っているかまでは聞き取れない。

でもなんとなくどこかで聞いたことのあるような、そんな声。

そこまで考えが行き着いたところで、1人の女の子の顔が頭に思い浮かぶ。


「まさかレイちゃん!?」


「ネェさん!?ネェさん今行くッス!!!」


「え!?ちょ、置いていかないでくれぇえ!!」


シラタマと共に風穴に飛び込み、中を滑り降りる。


ぶにっとバネのように凹む地面の感触は不快ではあったが構わず走り続け、うねり狂う洞窟を抜けた先にある眩い空間に目を細めた。


ようやく眩さに目が慣れて視界が開けると、飛び込んできた光景に思わず立ち尽くす。


「…ありがとうねみんな…これで、大丈夫だと思う。」


光が差し込む天から舞い降りて羽を動かす妖精たち。

その中心には全身真っ赤に染め上げながらも必死に誰かを介抱している女の子の姿があった。


「ネェさん!!旦那!!」


そう叫んだシラタマの言葉にはっとすると同時に、こちらを振り向いた少女の顔を見て思わず駆け寄る。


「レイちゃん!!」


彼女の顔は生気を感じられないほど、青白い。


「大丈夫!?俺のこと分かる!?」


「…?ダンテ…さん?どうして…」


「エミリー様の啓示でこの場所に導かれたんだ…!!此処で一体何があったんだい!?」


「ほ、本当に色々ありまして…うっ…!!あ、あの、アルと、マリーちゃん、のこと…お願いしても…?うっ…ぷ。」


「レイちゃん!?」


そう言って口元を押さえたレイちゃんは身体を縮こませる。

明らかに具合が悪そうな彼女の背中をさすりながら周囲を見回すと、無造作に転がっている瓶のとなりで死んだように横たわるアルフレッドと盗賊一派の女の子の姿があった。


まさか、間に合わなかったのか。


嫌な想像に血の気が失せると、先にアルフレッドの様子を見ていたシラタマが俺に告げた。


「大丈夫ッスヨ。気を失ってるだけッス…血だらけッスケド、傷は完全に塞がってるみたいッスネ。そこの雌も命に別状はないッス。」


「そ、そうか。それならよかった。」


「おおーい!!お前ら大丈夫かぁあああ!!」


「キッド!!キッドここだ!手伝ってくれ!!」


「お、おう!ってなんだこりゃあああ!アルフレッドにレイちゃん大丈夫かぁあああ!!」


「早く手伝えぇええええ!!」


キッドに経緯を説明して先輩への連絡を頼み、アルフレッドと少女をシラタマに任せてからレイちゃんを抱き抱えると、彼女は震える声で俺に尋ねる。


「ここにいる、石像の人たちなんですけど…」


「レイちゃん…あの人たちは…もう…」


「なに、言ってんだって思うでしょうけど、とにかく、身体が欠けないように、ここから連れて帰ってあげてくれませんか…お願いします…」


「レイちゃん……。」


レイちゃんのひたむきな言葉に胸を打たれる。

こんな状況なのに自分以外の人のことばかり気遣って、どれだけ強い心を持っているのかと。


それに助けられるかどうかは別にしても、あの人たちをこの地獄に置いてけぼりにするのは気が引ける。


よし、と大きく頷いた俺は彼女を安心させようと出来うる限りの笑みを浮かべて呟く。


「うん分かった、隊長に掛け合ってみる。だからレイちゃんはもう休んでいいんだ。あとは大人たちに任せてくれ。」


「…へへ、ありがとう…ダンテお兄ちゃん、なんつって…」


そう笑ったレイちゃんはふっと糸が切れたように気を失った。

ようやく合流できました…!よかったよかった!


みんなボロボロなので、もう少し落ち着いたらおふざけ回を投入したいですね。息抜きは必要です。


気がつけば今年ももう終わりですが、その前になんとかひと段落つかせたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いします(^^)


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