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転生者に、できること

いつもありがとうございます!!


またブックマーク登録、評価いただきありがとうございます!!!

多くの方に見ていただけて感激です…!!

大変、大変励みになっております!!


今後ともよろしければブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております!!


目の前で起きたことが信じられなかった。


「マ、マザー…さん……?」


零れ落ちた声はか細く乾き切っていて頼りない。

本当に近くにいる人のみが私の声に気がつける程度の声量だったが、それでもこちらに向けて微笑みかけるソレに声をかけずにはいられなかった。


「マザーさん…!!!」


もしかすると、他人の身体が急激に冷えていくあの感覚が私を駆り立てていたのかもしれない。

とにかく声をかけて、かけて、かけなければと焦りのままに口を動かす。

そうでもしないと底なしの暗闇の中に落ちていってしまいそうで………怖かった。


「マザーさん…マザーさん、ねぇマザーさんってば…!!」


「……モブ。」


耐えきれないと言わんばかりに切実に名前を呼ばれ、恐る恐る視線を向ける。

そして見慣れた金の瞳と目が合うと、彼は顔を盛大に歪めて言葉を詰まらせた。

彼の瞳の中に映る私は今までにないほど怯え切った顔をしていたから、優しいアルは言い淀んだのかもしれない。


「なにしてんのよ、現実が見えてないソイツに早く言ってやりなさい!!!()()()()()()()…ってね!!!」


そんなアルを急かすように告げられたメディシアナの言葉に全身から力が抜けた。


「っ、モブ!!」


彼女の言う通りだ。

どれだけ石像に声をかけても返事は帰って来ないのは、当たり前。


その考えに到達すると、自分はどうすればいいのか分からなくなった。


「あっはっは!!さいっこうにいい顔よ雑魚娘!!自分を庇ってこうなったら、そりゃそんな顔になるわよね!!でもこれは紛うことなく現実なの!!!マザー・リザリーはアンタのせいで永久にこのまま!!だって()()()()()()元に戻せないんだから!!!」


「テメェいい加減にしろよ…!!!殺し合いならオレだけを狙えばいいだろ!!コイツらは関係ねぇ!」


「はぁ!?アンタが集中しないから気合入れてやったのよ!!あぁこれ以上そこの雑魚娘の心が崩壊していく様を見てられないって言うなら、特別に、同じように、固めてやってもいいけど!?」


「ふざけんな!!!!!!!」


「あっはっは!!いいわ、最高……!!アンタ今…魔物より凶悪な顔してる……!!!」


彼女の笑い声に反応するように彼を纏う空気が怒りに支配される。

止めなければ、と分かっているのに脱力した身体は言うことを聞いてくれない。

すると腹を抱えて大笑いしていたメディシアナは、ギラギラ光る赤い瞳を見開いてアルを射抜いた。


「それでいい!!()()()()()アンタよフォスフォール!!どうせ普通にやってもアタシに傷一つつけられやしないんだから!!全身全霊をかけてかかってきなさい!!!」


「なめんじゃねぇぞクソ蛇が………!!!!灰にしてやる!!」


その一言を合図に、アルは手にしていた大剣を少女目掛けて放り投げた。

空中で回転した大剣の刀身は真っ赤に燃え上がり、メディシアナの前に突き刺さったと同時に爆発する。

周囲は黒い爆風に包まれると、何も言わず私から離れていく温かい体温に思わず手を伸ばす。


「ま、待って…」


か細すぎる声は、どうやら彼に届かなかったらしい。


離れていくアルの背中が黒い爆風に飲まれて消えていくのをただ眺めることしかできなかった。


形容し難い衝突音があちこちで鳴り響き、不安で押しつぶされそうな…まさに地獄とも言えるこの状況でふと手に触れたのは、気を失っているマリーちゃんの柔らかい手。


「マリーだけでもこの地獄から助けてあげてほしい。」


マザーさんの言葉が脳裏を過り、必死に離れないように彼女の手を掴む。


こんなことしかできない私が、どうやって彼女を助けられるというのか。


込み上げてきた涙が決壊する、寸前だった。


『レイちゃん、大丈夫?』


聞き覚えのある誰かに問いかけられて、無意識に首を振った。


これが大丈夫に見えているなら眼科に行ってくれ。


思わず心の内で悪態を吐いてしまうほど追い込まれている。

そう実感していると、おずおずと再度問いかけられる。


『レイちゃん、辛イ?…辛い…ヨネ。あの、アノネ、もしレイちゃんが望むナラ、()()()()()()()に来てもイイヨ?迎えに行こうカ?』


迎えに、とはどういう意味だろうか。


しかし深く考える前に無意識に、そして先ほどよりも強く首を横に振った。

諦めたくはない。

マザーさんは私を庇って、私のせいで石像になったのだ。

命をかけて守ってもらったのに諦めるなんて、彼女の覚悟を貶したようなもの。

そんなこと、絶対にしたくはなかった。


『ソッカ。うん、そうだよね。』


すると嬉しそうな声が続けて言葉を紡ぐ。


『レイちゃんが諦めないナラ、ワタシいくらでも力を貸せるヨ!!ワタシたちならなんだって出来ル!』


「なんだってできる…」


『ソウダヨ?エット、えっと、ほら!ワタシたちポーションだって作れたデショ?イエイ!!やったね!前人未到!!』


その言葉にハッとした。


彼女が死んだとされているのは、メディシアナでさえ()()()()()()()()()から。

方法がないとは……言ってない。


そう考え出すとだんだんと思い出してきた。


そうだ、石像にされても対象が破壊されない限り一種の昏睡状態と同じなのだ。


だとすればまだ、石化してしまった人を解呪するポーションさえ作れれば可能性はあるのではないか。


電撃が走ったような衝撃が全身を駆け巡ると、先ほどまでの脱力がなかったかのように力が漲ってくる。


『さぁ、立って!!レイちゃん!!』


呆然としている暇があるのなら行動。

魔物だろうが命を狙ってきた敵だろうが、受けた恩は必ず返す。

私はレイ・モブロード、雑魚は雑魚でも…!


「人一倍、諦めが悪いんじゃこの野郎ぉおお!!」


私を励ましてくれた誰かの声は、いつのまにか聞こえなくなっていた。


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