転生者と、大罪人の結末
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おいおいやべーよ、命を狙う相手に喧嘩売るどころかまさかの頭突きかましちゃったよ。
しかも相手は相当痛そうだよ、さてどうしようか。
頭突きの衝撃で上を向いて微動だにしないままのマザーさんを見て、自分の石頭ぶりに恐怖を覚えた。
これは鳩尾に喰らったアルも相当痛かったに違いない。
「モブ!!!」
「ん?あ、アルぐぇ!?」
思いっきり後ろから来たアルに首根っこを掴まれマザーさんから距離を取らされると、痛いぐらいに抱き締められて呼吸が詰まる。
「てっっっっめぇふざけた策強行しやがってこの野郎が頭大丈夫か!?」
「た、多分大丈夫だと信じたい…」
「いや無事なわけねぇよな!?待ってろ今すぐ治療してやる!!」
「お、落ち着い」
「動くんじゃねぇ殺すぞ!!!」
「えぇ…?」
私の身体を片手で抑え込んだアルは近場に大剣を乱暴に突き刺し、私の頭に手を添えて必死になにかを探る。
「あ、あんな速さで突っ込んだのに骨も折れてねぇ…だと……?分かっちゃいたがどんだけ石頭なんだよお前……!?」
「自分でもびっくりだよ…一応言うけど、真似しちゃダメだからね?」
「誰がするか!!!……おい、頭撫でれば誤魔化せると思ってんじゃねぇぞ。」
「あ、やっぱりダメ?」
キレの良いツッコミを返したアルの頭を撫でながら苦笑すると、彼は軽く舌打ちした後に一度私の髪を梳いた。
そしていまだに上を向いたままのマザーさんに向き直ると、大剣を握り直して私の前へ躍り出る。
すると同時に彼女はポツリポツリと言葉をこぼした。
「………あーあ……頭突きされるわ見せつけられるわ…アタシったら散々ね……」
「みせっ…!?た、ただただテメェが1人空回ってるだけの話じゃねぇか!!こっちに責任転嫁するんじゃねぇ!!」
「そうだそうだ!!もっと言っちゃってよお兄さんほらほら!」
「撫でるな鬱陶しい!!!」
「…はぁ…本当憎たらしい餓鬼ども…なんだか馬鹿らしくなってくる…」
言葉では嫌がるシャイなアルの頭をワシワシと撫でていると、少しよろめきながらもマザーさんはゆっくりとこちらに視線を向ける。
「……そんなふざけた態度だけど……大真面目なのよねアンタ……」
「ふざけた態度と言われるのは遺憾ですが、まぁそうですね。そもそも本気じゃないと貴方なんかに一発入れようとしませんよ怖いし。でもリリーちゃんたちが貴方の話をしている時の表情思い出したら、ふっとんじゃいました。」
「あくまで……友のため…か……綺麗事を…」
「んー残念ながら私は自分のためにしか動きません。私の大切な人には幸せでいてもらわないと困るんですよ。私自身が幸せを満喫するためにね。」
「………あっそ……なんてわがままで、石頭な頑固者。」
「おぉ、ようやく私のこと分かってきましたね。あと鼻血出てますよ大丈夫ですか。」
「…ふふ…くふふふ…!久しぶりに脳味噌まで揺さぶられた気がするわ…!」
「本当大丈夫ですかそれ、っ!?」
大声で笑ったマザーさんが心配になると、突然勢いよくアルに突き飛ばされて盛大に尻餅をついた。
そのことに文句を言うよりも先にアルはマザーさんの不意打ち攻撃を受け流し、再びぶつかり合う金属音とともに剣を交えた衝撃で生まれた火花が宙を舞う。
「アタシだってやり直したいさ!!でもアタシは魔に堕ちた!!もうやるしかないんだよ!!」
「っ、アル!」
「ッチ、あぁ殺さねぇよ!!お前は退がってろ!」
「ーーーーっ!!ナメやがってぇええ!!」
「いい加減大人しくしやがれクソ女狐が!」
もはや人の動きとは思えないスピードで剣を振り回す両者は、互いに一歩も譲らない。
ぶつかりあう一撃ごとに空気が震えるのが辛うじて分かるだけでもちろん目で追うことは出来ない私は、這いつくばりながら磔にされているマリーちゃんの元へと移動する。
というか慣れない武器で渡り合ってる私の幼馴染強すぎ問題。超頼もしい。
「マリーちゃん!!マリーちゃん大丈夫!?遅くなってごめんねってばマリーちゃぁああん!!」
そうこうしているうちになんとか辿り着いた私は、グルグルに巻き付けられている紐に手を掛けるが、彼女を縛る紐は英傑ワダツミとやらの血液のせいで赤く固まってしまっていてびくともしない。
魔法が使えればなんとかなったかもしれないが、私には何もできない。
アルに比べて私なんて、なんと無力なことか。
「ええいままよ!悩んでる暇があるならこのまま解けることに掛ける!!いま助けてあげるからね!」
なんとか解こうとギッチギチに固まった結び目に挑んでいると、ガキンッと一際鈍い音が聞こえた。
慌ててその方向へと視線を向ければマザーさんとアルが超至近距離で剣を交えながら、睨み合っているではないか。
「っ、あぁ!なぜ、なぜ、魅了魔法が効かない!?」
「あ"!?っは、それがっ、分からねぇ時点でっ……!!テメェは何にも見ちゃいねぇんだよ!!」
勢いよく薙ぎ払ったアルは、全身に力を込めて叫ぶ。
「これからもこの先も!!テメェの偽りの愛なんて必要ねぇ!!」
「なっ……!?」
「クッッソ大事な大馬鹿幼馴染が笑ってるなら、それでいい!!………オレの、隣でな!!!」
その瞬間アルから貰ったアイビスの花の髪留めが眩く光り輝くと、温かいなにかが身体の中心で芽を出したような不思議な感覚を覚えた。
まるでアルに魔力を流し込んで貰った時のように世界が彩られると、眩い世界の中で彼が持つ大剣がうっすらと金色に光っているのが見える。
あれは一体なんだろうと疑問に思う反面、なんだかとても懐かしい。
そうだ、あれは確か。
「…必殺技。」
「これで終いだ!マザー・リザリー!!」
「ーーーーーーッ!!」
同い年とは思えぬほど完成された太刀筋で、完全に彼女を捉えた。
洞窟中に響き渡るほどの絶叫の後ゆっくりと倒れるマザーさんの大きな身体を受け止めたアルは、彼女を優しく地面に横たわらせる。
そしてため息を吐きながら肩を回して一言。
「………肩凝りとんでもねぇなコレ。」
「感想それだけ!?」
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▽大罪人マザー・リザリーを討伐しました。
▽特異分岐「魔蛇襲来」が解禁されました。