転生者は、龍の墓場にお邪魔する
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いつのまにか不思議な部屋の中心に立っていた。
何処かは分からないがこの場所は見覚えはある。
というよりも何度も来たことがある。
しかしお馴染みの頭痛はなく、楽しそうな女の子の笑い声が聞こえるだけだ。
姿は見えないその笑い声を聞きながらザザザッと黒く波打つ四角い箱を見つめていると、朧げに映像が浮かび上がる。
「あれ、これ…えっと…あー…と…」
その映像に首を傾げていると解説を入れるように可愛らしい声が私に呟いた。
『赤の玉座の裏側の、上から4つめの赤い石。
優しく願いを込めて2回、叩くコト。
轟く龍の雄叫びに怯まずに立ち向かうとあら不思議。
秘密の入り口がお出迎エ。
うねり狂う洞窟を、右、右、右、左に進んで行って、先で行き当たる三つの空洞を目印に笛を吹ク。
音色が吸い込まれる扉を見つけたら、今度は3回強く叩ク。
ア、でもここで叩く回数を間違えると龍の怒りに触れてしまうから注意してネ。
そこを乗り越えれば、素敵なお宝が手に入るって寸法……デショ?』
「でしょって言われてもなぁ…」
そう私が呟くと彼女は答えた。
『エェ?全部貴方から教えてもらったのに。』
「なにそれ初耳なんですが。」
「戻って来い馬鹿。」
「痛っ。」
パシンッといい音が後頭部から響くと、アルの手を引っ張って龍の目に当たる部分の岩に近づき、凝視していたことに気がついた。
いつのまにこんなに近づいていたのだろう。
あまりにも顔を寄せていたので少し距離を取ると、マリーちゃんは嬉しそうに口を開いた。
「流石恩人、お目が高いね?この入り口は伝説の生き物である龍にソックリなんだってマザーが言っててね?躍動感あるでしょ?」
「ただの岩じゃねぇかこんなもん。」
彼らの会話を聞きながら顎に手を当てながら再度観察していると、繋いでいた片手をグッと引っ張られて視線が岩から外れる。
代わりに飛び込んできた険しい表情を浮かべた幼馴染に低く唸られた。
「お前はいつまで見てんだ!!」
「ブフッ!!岩に嫉妬とか余裕なさすぎてヤバいやつ!!」
「うるせぇぞ!頭蓋骨砕かれてぇのかクソピンク!!」
「ふんっ!返り討ちにしてやる!」
「マザーが待ってるから歩きながらにしようね?」
「そうだ!カカ様ー!!」
彼女たちはなんのためらいもなく吸い込まれるように、慣れた様子で龍の口に飛び込んでいった。
乱暴に頭を掻きむしったアルは私の手を引いて後ろに続こうとするが、少し力を込めて彼を足止めしてみると簡単に動きを止めた。
「なんだよ。」
ため息を吐きながら問いかけたアルに苦笑を浮かべつつ、カバンからリリーちゃんに貰った笛を取り出して首に下げる。
そして再度彼の手を掴み、大きな口を開けている龍顔の岩を指差して告げた。
「一応ご挨拶しとこう。」
「は?この岩に?冗談だろ?」
「なんとなくだけど……挨拶しといたほうがいい気がするんだよね。…ということで、レイです!!無害です!!お邪魔します!!」
我ながら馬鹿丸出しの挨拶だがこれでいいだろう。
チラリと幼馴染へ視線を向けると、諦めたように彼も口を開く。
「…ッチ、邪魔する。崩落すんじゃねぇぞ。」
「縁起でもないことを!!」
言葉など通じるはずもない岩の塊に2人揃って軽く頭を下げ、今度こそ女盗賊一派の住処へと歩き出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一歩洞窟の中に足を踏み入れると松明に勝手に明かりが灯り、暗い足元を照らす。
道なりに沿って点々と灯火されていくのを口を半開きにして無様に眺めていると、ニコニコ笑顔のリリーちゃんがアルと繋いでいた手を手刀で叩き落とした。
「てーーーい!」
「っ!!テメェクソピンクナメた真似を…!」
「ふんっ!いつまでレイにくっつくつもりだこのくっつき虫!!アンタは後からネェさんと勝手に来ればいいんだから!ほらレイ行こう!」
「え、うぎゃぁあ!?」
「おい待て!!」
アルの制止を無視して走り出したリリーちゃんに連れられて唸る洞穴道をひたすら突き進む。
「リ、リリーちゃ、ど、こ、まで!?」
凄まじい速さで走り抜けていくリリーちゃんに着いていくのがやっとで、まともに言葉を発することができない。
それでも私の言いたいことは伝わったのか少しだけ振り返った彼女はいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「えへ!ちょっと突撃するけど耐えてね!」
耐える?どういうこと?
その疑問を口にする前に大きな扉を前方に確認。
しかし彼女はスピードを落とすことなく、そのまま文字通り突撃していく。
「カカ様ただいまー!……あ。」
扉を蹴破ったリリーちゃんは私の手を離し、綺麗に両手を広げて着地のポーズを決めてみせた。
…もちろん慣性の法則が働いている私は弾丸並みの速さを維持したまま無残にも真っ直ぐに飛んでいき、ボフンっとやたらに柔らかいナニカに顔が埋まった。
私がなにをしたと言うんだ。
「あぁ!!レイ!ごめん!!」
全くやってくれたなリリーちゃんよ。
まぁ可愛いから許すけど。
起き上がろうと柔らかいナニカに手をついて力を込めると、途端に私の身体にふわりとお日様のような香りが巻きついた。
「わーお、会い焦がれた人物が突然胸に飛び込んでくるなんて…どんなドッキリだろうね。」
周囲に炎が立ち昇る音が聞こえ、周囲の気温が一気に上がる。
違和感を感じて私を抱き抱える正体を確認してみると、なんとも見慣れた色が視界に入った。
「え。」
驚きで目を見開いていると勘違いしたのか、その人は私を地面に降ろし、くびれた自身の腰元に両手をあててリリーちゃんに言葉をかける。
「このじゃじゃ馬娘、アンタが雑だから呆然としちゃってるじゃないか。怪我でもしたらどうするつもりだった?ん?」
「ごめんなさい…」
「くふふ、まぁいいさ、アタシのもとに無事に連れてきたんだからね。お手柄だよリリー。」
豊満な胸に足元は深いスリットの入った魅惑的な赤いドレス。
そしてカツンっとヒールの高い音を立てて私の方を振り返った彼女は、地面に着くほど長い赤髪を揺らして口を開いた。
「さーてと?アンタのお噂はかねがね…ずっと会いたかったよ、レイ・モブロード。アタシ?アタシはこの龍の墓場の支配者、マザー・リザリー。」
同じく燃え盛るような赤い瞳を弓なりに細めて続ける。
「そしてご覧の通り、アンタのお友達の数少ない同族。だから末永ーく、仲良くしようじゃないか。」
遠くで鳴り響く耳鳴りが警告音に聞こえたのは気のせいだと信じたい。