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転生者は、盗賊一派の住処へ向かう


いつもありがとうございます!!

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あの後どんな話をしていたのか聞いてもはぐらかされ、かつ父親のギックリ腰が発覚してから数日が経った本日明け方。


妖精さんたちに挨拶をし、そして白玉やランちゃんたちにお土産を持ち帰ることを約束して、ついに私とアルはリリーちゃんとマリーちゃんの住処に向けて村を出発した。


マザーさんは魔物を嫌っている(かつて魔物のせいでリリーちゃんたちが酷い目にあったのだから当然だろう)というお話から白玉を連れて行くことがどうしても出来ず、駄々をこねた彼を説得にとても苦労したのはいい思い出だ。

…まぁ最終的にアルが力技でねじ伏せたとも言える。


そんなこんなでマリーちゃんが手綱を握る馬車の荷台にお邪魔してから数時間。

カラカラと車輪の音を響かせて順調に進んでいるようだが…舗装されていない獣道でも走っているのだろうか。

まだ少ししか乗っていないというのに、既に王都へ向かっている時の倍以上疲労が溜まっている気がする。


というよりこの揺れを直に受けている私のお尻は既に限界を突破しているのですがどうしたらいいですかね。結構痛くて洒落にならん。


自身の脆弱ぶりにため息を吐くと、荷台の入り口近くに座り外の景色を眺めていたはずの幼馴染がいつの間にやらこちらに視線を向けていた。


「どうした。」


「え?」


「具合でも悪りぃのか。」


嘘だろおい。

まさかその距離でなにかを察したというのか?

流石私の幼馴染、凄まじい観察眼だ。


安心感を与えるその瞳に弱音を吐きたくなってしまう………が、この私レイ・モブロードは思考を巡らせた。

よくよく考えてみたまえ諸君、この厳しい旅の環境は彼だって同じなのだ。

同い年(魂的には遥かに年下)の彼が、こうして文句の1つも言わず頑張っているのに私はなんとだらしないことか。

そしてなにより。


(お尻が痛くて追い詰められているなんてそんな恥ずかしいこと言いたくない!!!)


散々やらかしておいて今更感半端ないが、やはり私自身が行くと決めたのだからこのくらいは乗り越えなければ。

今一度固く決意し、さりげなく汗を拭ってから完璧な微笑みを浮かべた。


「ん?いや?全然?元気過ぎてむしろ元気的な?ほらそういう時あるじゃん?」


「意味不明だがとりあえずテメェが切羽詰まってるのは分かった。」


「一番バレたくなかった部分が露呈して辛い!!」


「1人で騒ぐな鬱陶しい!!」


辛辣な言葉をモロに食らった私が愕然と項垂れると、ガタガタと激しく揺れるなか安定した足取りでアルが私の横に移動し胡座をかいた。


「で?酔って吐きそうなのかはたまた便所に行きたくなったのかどれなんだよ。」


「選択肢もっと他になかったの!?」


「あ"!?この状況で切羽詰まるって言ったらこれぐらいだろうが!!手遅れになる前に言え!なんとかしてやるから!」


「……仮に私が酔って吐きそうって言ったらどうするの?」


「そんなこともあろうかとここに程よい大きさの袋と適度に冷やしたおいた水を用意してある。思う存分ぶち撒けろ。全部受け止めてやらぁ。」


「想像以上に準備良すぎて泣けてくるよ!!」


「何年テメェと一緒にいると思ってんだクソモブ!!同じ過ちは繰り返さねぇんだよ!!」


「そこだけ聞いたら最高にカッコいい台詞なのにもったいない!!じゃあ私がお手洗いに行きたいって言ったらどうするの!?」


「あ"?そりゃあ仕方ねぇからあのクソピンクどもに経緯を説明して一旦馬車を止めてもらうほかねぇだろ。」


「まさかのアルが説明する感じなの!?」


「あ?言うのが恥ずかしいとかそんなこと考えてるお前の代わりにオレが話した方が早いじゃねぇか。」


「それ気遣ってくれてた結果だろうけど一周回って全くだからね!?」


「さっきからなにが気に入らねぇんだクソモブが!!いいから言え!」


「嫌だ!!言ったらとんでもないことになりそうだから嫌だ!!」


「そのまま隠された結果支障が出るのはこっちなんだよ!!」


途中から取っ組み合いのようになって繰り広げられる攻防戦。

互いに一歩譲らぬ戦い…いや絶対加減してくれてるのだろうけど大人気なく必死になっていると、そんな私を叱責するように一際大きな揺れが身体を大きく傾かせる。


「うげぇあ!?!?」


「っ、おい!」


後頭部直撃というところで腰に手を回され危機を回避、そのまま確認するように頭を撫でられた。


「ぶつけてはねぇな。驚かせやがって。」


「す、すみません。」


「おーいレイ!大丈夫ー?」


陽気な声とともに荷台に光が差し込みその眩しさに目を細める。

天井からぶら下がっている人影に気がつくと、その影はくるりと回転しながら近場に着地した。


「っはぁ!?アンタなにレイにくっついてんの!?離れろ穢らわしい!!」


「ならこの揺れをどうにかしやがれクソピンクが!危うくコイツが頭打つところだったじゃねぇかよ!!」


「しょうがないじゃん!カカ様のゲートを通らないと辿り着けないんだから!!あぁやっぱりアンタには任せておけない!レイ、上に行こう!アタシが支えててあげるから!」


「馬鹿かお前!上なんてもっと揺れるに決まってるじゃねぇか!!コイツの身体能力の低さナメるなよ!すぐ死ぬぞ!」


なんだろう、すごい複雑。


彼らの言い合いの最中波が押し寄せるように休みなく揺れ動く荷台に耐えるべく控えめにアルの服を掴むと、低く唸ったリリーちゃんは勢いよくアルを指差して叫んだ。


「あーあー!もういいよ分かった!!今だけはレイに近づくのを認めてあげる!そのかわり少しでも怪我させたら向こうで打ち首にしてやるんだから!」


「いいからさっさと持ち場に戻ってこの揺れをなんとかしろ!」


「っちぇ!腹立つ!!」


「ちょ、リリーちゃん…ちなみにあとどれぐらいかかりそう?」


祈るような思いでリリーちゃんに問いかけると大きな瞳を瞬かせ、彼女は最高に輝いた笑顔で親指を立てる。


「分かんない!適当にソイツをクッションにして寛いでね!」


「誰がクッションだオラァ!!」


私のお尻の未来が閉ざされた瞬間だった。


軽やかに荷台の上に上がっていくリリーちゃんを、諦めを滲ませて呆然と眺める。


「はは…終わった…こりゃたどり着くころにはお尻が6つに割れちゃってるわ…」


「……そういうことか。」


私の言葉に盛大にため息を吐いたアルは痛くないようにと配慮してくれたのか、自身の胡座の上に私を抱え直した。


「おら、これならマシだろ。到着するまでクッションでもなんでもなってやるよ。」


「えぇ!?それだと私の体重が合わさってアルのお尻が犠牲に…」


私の言葉を遮るようにもう一度大きな揺れが襲いかかり、体勢を保とうと慌てて彼の首元にしがみつく。


「そうやって大人しくしとけ。いいな。」


申し訳なさを感じながらもこの揺れに耐え切る自信がなく、優しい幼馴染の言葉に頷くことしかできなかった。




















そのままどのくらい経っただろうか。

暇つぶしにと私の髪をいじっていたアルがふと視線をあげた。

どうしたのだろうかと声をかけようとすると途端にブレーキがかかり、その衝撃に身を固くする。

アルが抱えてくれていたおかげで投げ出されずに済んだが辺りの異様な空気に息を飲んだ。

まるでどこか別の空間に飛び出してしまったような、そんな感じがするのだ。


「……おい。」


「?」


「オレから絶対に離れるなよ。」


突然改めて告げられたその言葉に驚きながらも頷くと、同時に荷台の入り口を思いっきり開かれた。


「お待たせレイ!!こっちだよ!」


リリーちゃんの声かけにアルが私の手を掴んで立ち上がり、久方ぶりに共に地面に降り立つ。

そしてそおっと見上げた光景に目を見開いた。


ゴツゴツとした岩肌の先にぽっかりと空いた洞窟。

よくよく見ればお話に出でくる龍の頭部のように見えるせいか、周囲に反響して鳴り響く笛の音色が龍の鳴き声なのではないかと錯覚してしまうこの場所。


「なかなかいいところでしょ?どんなに厄介な奴でもカカ様が許可しないとここは見つけられないの!」


「ようこそ恩人?ここが私たち女盗賊一派の住処であり隠れ家、











龍の墓場、だよ?」



そうだ、私は龍の墓場(ココ)を知っている。





ここまでお読みいただきありがとうございます^_^


次回ようやくカカ様登場!!

ずっとスタンバイさせておいたのに待たせてごめんね本当に。


なにやらレイちゃんはたどり着いた場所に見覚えがありそうですが……はたして楽しい旅行となるのでしょうか?

ここからまたストーリーを進めていきますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います!

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