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転生者と、男同士の話し合い

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「捻りちぎってやる…!!」


「何卒!何卒お慈悲を!!」


「しょうもねぇ嘘をついた罰だ地獄の底で反省しろクソモブが!!」


「誠に申し訳ございません!!!」


盛大に舌打ちをされながら頬を引き伸ばされ続けること数秒。


必死に謝罪を繰り返したおかげか頬引き千切りの刑から頬ペチペチの刑へと罪状が軽くなった。

数回おきに左右に繰り返されるペチペチを甘んじて受け止めていると、どうにも煮え切らない様子のアルが刑を執行しながら口を開く。


「ったく、ふざけやがって。何かあったのかと思ったじゃねぇか。」


「心配かけてごめんね。見れば分かると思うけど……うん、この通り現在怪奇現象が起こってるよ。」


「そういうことじゃねぇんだよ張り倒すぞ。」


「すみませんでした。」


「しかも誰が来たのかろくに確認せずに扉を開けたよなお前。」


「お、お母さんかなと思っちゃって…あはは!」


「は?」


「今後は絶対確認します。気をつけます。」


「よし。」


大きく頷いたアルが数回私の頭を撫でてくれたことで落ち込んでいた気持ちが一変して癒された。


ダメな幼馴染を心配し怒ってくれて、さらに癒してくれるなんてどこまで素晴らしい子なんだろうか。


「アル、ありがとうね。」


「……ッチ。」


アルに今一度感謝を告げると気まずそうに手が離れていってしまう。

思わず名残惜しげに見つめると数秒唸ったアルがぎこちなくその手を戻し、そっぽを向きながらあと少しだけだと告げた。最高かよ。


「なーーーーーんかさぁあ!?」


ほのぼのと撫でられ続けているとブチブチとなにかが引き裂かれる音が響き、思わず視線をそちらに向けた。

その瞬間お気に入りのカバンが張り裂けたことで周辺に集っていた鳥籠が騒音を立てながら転がり、妖精の楽しげな悲鳴が木霊する。

そしてその中心で拳を突き上げた父親が汗と涙と鼻水を撒き散らしながら振り返り、そのまま勢いよく身体を反らした。


「その距離感%°€1€3☆°#!!!」


ゴキリ。


一言叫んだ父親の腰から鈍い音が響く。

そのまま彼が静かに地面へと沈んでいき、なんとも言えない沈黙が我が家を支配した頃。


「………布団、敷いとけ。」


「本当申し訳ない。」


腕まくりしたアルが逞しく父親の救済を名乗り出た。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「君とはいずれ決着をつけなければならないと思っていたさ……!!」


異様な緊張感の中、覚悟を決めた面持ちで瞳を見開いた父親は叫ぶ。


「例えこの腰が弾け飛ぼうとも構いはしない!!男同士正々堂々の話し合いだ!!レイちゃんは外で待ってなさ冷た!?」


「あ、湿布貼るから冷たくなるよ。」


「ありがとうレイちゃん!でもそれ貼る前に言って!?」


「それにこの状態でなにをするって言うんだいお父さん。アルを困らせないでよ。」


「…いや、オレからも頼む。」


「はい!?」


「心配すんな、なにも喧嘩するわけじゃねぇ。お前の親父さんとは一度ちゃんと話がしたかったしな。」


「えぇ……?」


2人からそう言われてしまえばもうなにも言えまい。


後ろ髪を引かれながらも父親の自室から出て、扉に耳をくっつけたくなるのをグッと堪えて、引きちぎれてしまったカバンの回収と床掃除に勤しむ。

しかし話し合うと言っていた割に部屋の中から物音一つしないのがやけに不安を煽る。


「一体何をして……というよりなんで私はその場に居てはいけないのか。」


「あら?」


突然聞こえてきた声にビクつき急いで振り向くと、買い物から帰ってきた母親が笑みを浮かべて私に声をかけた。


「お、おかえり。」


「ただいまレイちゃん。エドワードは?荷物詰めは終わったの?」


「それが…」


部屋を見回す母親に経緯を説明すると、込み上げてくる笑みを抑え込むように母親は口元を引き締めた。


「それはそれは…ふふ、大変だったわね。」


「あぁ言い出したら心配になってきた…!!大丈夫かな!?」


「ふふ、気になるでしょうけど大丈夫。エドワードとアルくんはきっと仲良くなれるわ。」


「え?」


「だって、」


言葉を区切った母親はアルから貰った髪飾りを指差してにこりと微笑む。


「あの人、純情に弱いもの。」


「はい?」


その瞬間父親の自室から一際大きな奇声が聞こえた。

その声を聞き届けた母親は再度私に微笑み一度大きく頷く。

入室の合図と悟った私は慌てて部屋の中へと駆け込んだ。


「大丈夫2人…と…も…?」


その衝撃の光景に目が点になった。


顔面ぐちゃぐちゃに泣き腫らした父親が横たわった状態で必死に腕を伸ばしてアルの頭を撫でていて。

さらに当の本人はなぜか正座のまま自ら頭を差し出し、その行為を受け入れていた。

大きな音を立てて入ってきたこちらに視線を向けたアルが苦笑を浮かべると父親も気がついたようで、泣き声の声量をあげてアルに声をかけた。


「うぐっ……えぐっ……!!いいかい!!!レイちゃんをっ、僕の天使をっ、泣かせたらっ!!許さないから!!!枕元にっ、立つからっ!!」


「はい。」


「今回っ、はっ!!今回はっ!!!ぼく、お、おる、おる、おるすばんっ!!っっクソォォオオオオオ!!!!」


しゃくりあげて泣く父親はアルの頭部から手を離し、布団を握り締めてさらに奇声をあげる。

その様子を見たアルは静かに一度頭を下げた。


『ステキ!』


『エドワードも何も言えないネ!』


『これならミーたちも安心ダヨ!!』


『ミーたちもお留守番スル!』


妖精たちも2人の会話を聞いていたのか満足げに言葉を漏らすのでいよいよ状況が分からない。


「ふふ、こんにちはアルくん。」


「あ、邪魔してます。」


「ゆっくりしていってね。完敗のエドワードは私が預かるわ。」


「だってエマァア!!本当この子っ、なんでこんなっ、うぉおおおおお!」


「もうだから言ったでしょう。しょうがない人。」


一方の母親は理解できているのかくすくすと笑い声をあげながら、泣き喚く父親を慰めにかかった。

気まずげに頬を掻くアルにゆっくりと近づくと、彼は若干視線を逸らしながら小さく呟いた。


「親父さん泣かせて悪かったな。」


「それはいつも通りだから大丈夫だけどさ、なにがあったの?」


「いつも通りってお前……まぁ、その、なんだと思う?」


「まさかの質問返し!?」


「はっ、冗談。別に大したことじゃねぇよ。」


いたずらっ子のように呟いたアルは私の反応に笑い、気を取り直して私の手を掴む。


「お前を必ず守ると、改めて誓っただけだ。」


「………ありがとう。」


「おー。」


「ねぇ。」


「あ?」


「そういうのサラッと言えるの狡いと思います。」


「は?テメェにだけは言われたくねぇ。」


「なんでや。………アル。」


「今度はなんだ。」


「ちょっとときめいたから抱き着いていい?」


「っだからそういうとこだっつの!!!!本当ふざけんなお前!」


「っちぇ、ダメかぁ。」


「………………そうは言ってねぇだろ。」


「お!やったー!」


「馬鹿今じゃねぇ!!…後でな。」


突進してこようとした私の頭を抑えたアルは苦笑交じりのため息を小さく吐き、軽く頭を小突いた。


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