転生者は、準備したい
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最近リアルが忙しくなってきてしまって涙
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「これ、何処行くんじゃアル。」
「ちょっとした野暮用。すぐ戻る。」
あれからまた数日経った頃。
少しばかりの荷物を持って外に出ようとするとジジイに声をかけられた。
適当に答えてから玄関の扉に手をかけると、大げさなため息が背後から聞こえて思わず振り返る。
「なんだよ。」
「お前さんが日に日にアイリーンに似てきたと思ってのぉ。気がついたらこんなに大きくなって…なんだかジジイ嬉しい。」
「は?気持ち悪ぃ、ハゲ散らせクソジジイ」
「ハ、ハゲ散らっ……!?なんという口の悪さじゃ!!そんなところまでアイリーンに似る必要はない!もう少し目上の人間に対する言葉遣いを考えんか!!特にレイちゃんのご両親には敬語!!将来的に困っても知らんぞ!?」
売り言葉に買い言葉で反発しそうになるが、ふとモブの家族について考える。
守ると誓いを立ててこうして日々修行に励んでいるわけだが、アイツの両親(特に父親)から信頼が勝ち取れないとそもそも側にいること自体認めてもらえないかもしれない。
それは確かに、非常に困る。
「ッチ………まぁ…気をつける。」
「え!?お前さん本当にアルか!?なんか素直で気持ち悪っ!?」
「助言してぇのか馬鹿にしてぇのかどっちだ!!ったく、オレはもう行くからな!!!」
煩いジジイを放って扉を大きく開けると、凄まじい速さでなにかが真横を通過する。
遠慮なく部屋の中に入ってきたその生物に自身の頬が思わず痙攣し、嫌な予感を察するまま後ろを振り返った。
パタパタとうるさい羽音を響かせて、何処からか持ち出した、自身より大きな鳥籠を数十匹で力を合わせて持ち上げ詰め寄ってくるその光景は異様としかいいようがない。
「おや?また来てくれたんじゃなぁ妖精たち。だがここまで必死となると……アルがなにか意地悪でもしたのかのぉ?」
「冤罪が過ぎるぞクソジジイ!!テメェらも巣に戻りやがれ!毎日懲りずに来やがって!!」
手のひらに魔力を込め、炎をあげて威嚇してみたもののそこは羽虫でも妖精。微塵も怯む様子はない。
モブのように奴らの言葉が分かれば簡単なのだろうが、生憎オレには鳥籠を持ち上げて近づいてくるアイツらの感情など理解できない。
ガシャンガシャンと騒音を鳴らしゆっくり近づいてくる様子になにをしても効果がないと悟り、早々に諦めて転送魔法陣を組んで目的地へと跳ぶ。
そこはもともと妖精たちが行きたがらない場所なため好都合だった。
「あ"?……ッチ、雑草が伸びてきてるじゃねぇか。」
一瞬の視界の歪みのあとたどり着いた先はかつての収集の魔女の家、そして今は収集の魔女のゲートを突破したオレの所有地。
雑草が家を覆い隠すように生えていて更に目立ちにくくしてあり、オレかクラウスにしかここは見つけられない。
軋んだ音を響かせながらゆっくりと扉を開くと、暗闇の中にポツンと置かれた古びたソファにもたれかかる一つの影が視界に入った。
一歩部屋へ足を踏み出すと、随分と能天気な声が鼓膜を揺らす。
「あらぁ?もう来ないのかと思ってたわぁ、アイリーンの愛息子くん。お元気ぃ?」
「うるせぇ生首。オレだってなにも喋らねぇお前と会いたくなかったっつの。」
オレの言葉に興味深そうに笑みを深めた頭は楽しげに目を細めた。
「ふふ、それじゃあどうしてここに来たのぉ?まさかその、お口がかたぁい元魔女のパルメになにか御用だったりぃ?」
「あぁ、お前なら詳しく知ってるんじゃねぇかってな。」
そうしてオレが告げた内容に、生首は少しだけ目を見開いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「騎士団長とリチャードさんとやらのためにポーション製作を学びに行くなんて……あぁ、ダディの贔屓目なしでも素晴らしいことだと思うよ。本当にレイちゃんは自慢の娘だ。」
リリーちゃんたちの拠点に行くことが決定して数日。
両親は突然の私の言葉に驚いたものの、目的をキチンと説明すると涙ぐみながら応援すると言ってくれたのだ。
母親は必要なものを買いに出かけてくれて、父親は荷物詰めを手伝ってくれている。
短い期間とはいえ許可してくれた両親は本当によく理解してくれていると思う。
「分かってくれてありがとうねお父さん。」
「もちろんさ!!ダディは全力でレイちゃんを応援するよ。」
「ありがとう心強いよ。でもさ、
カバンの中にお父さんは入らないと思う。」
「そうかな!?自分で限界を決めるのは良くないことだとダディは思うよ!!」
「物は言いようだね。でもぎっくり腰になったら大変だから気持ちだけにしておくよお父さん。」
「心配してくれてるのかい!?あぁなんて優しいレイちゃん!!大丈夫!絶対上手くいくから!」
「上手くいったとしても大切ななにかを失うんじゃないの?」
「レイちゃん以上に大切なものなんて僕にはないよ!!」
この人もうダメかもしれない。
荷物を詰めているうちに寂しさが振り切れたらしい父親は、突然自分もついていくと大暴れし頭からカバンの中へ突っ込んだ。
『『ミーたちも行きターーイ!!』』
そんな父親に感化されたかのように大きな鳥籠がひとりでに動き出し、同じようにカバンの中に入り込もうとしている。
簡単にいえば地獄絵図。
「うわっ!?急に圧迫感!!」
『エドワード邪魔!!』
『エドワードじゃ任せられナイヨ!!』
『『エドワードを追い出セーー!』』
「痛い痛い痛い!?なんだ!?なにが起こってるんだ!?でも何があろうと僕は諦めない!!あぁそうさ絶対に!!」
本当何を見せられているんだろう。
籠だけが動き回る様子はただひたすら心霊現象だが、カバンからはみ出す父親のお尻を見続けるのもなかなかの苦行である。
「レイちゃんレイちゃん!!ちょっとごめん!ダディのお尻を押してもらっても!?」
「控えめに言っても嫌。」
「レイちゃん!?」
トントン。
この耳が最高のタイミングで叩かれた玄関の扉の音を拾う。
(お母さんかな?)
妖精たちとじゃれあっている父親は置いておいて足早に玄関に向かい扉を開ける。
「もうたすけてお母…さ…」
透き通るような青い空の下で風になびく赤い髪がキラキラと光り、その存在をはっきりと浮かび上がらせていた。
「………アル?」
見慣れているはずの私でも思わず見惚れてしまうほど。
こちらの動揺など露知らず、アルは私の呟きかけた言葉を瞬時に拾いその金色の瞳を鋭く光らせた。
「どうした、なにがあった。」
「え、あ、その、」
「ッチ、いい。お前は外にいろ。オレがやる。」
やるってなにを?
どもってしまったことで私が怯えていると感じてしまったのか、まるで宥めるように軽く身体を抱き締められたあと足早に家の中へと入っていってしまう。
すごく紳士的だけど父親の醜態を見られるわけにはいかない。
慌てて後を追いかけたが……時すでに遅し。
「ねぇレイちゃん!?今ダディどうなってる!?なんで黙ってるの!?」
無数の鳥籠に埋もれお尻だけをこちらに突き出した哀れな姿を幼馴染に見られてしまった。
「………。」
あまりの衝撃に固まるアルになんと言えばいいか分からなくて、咄嗟に一言告げる。
「モブロード家の伝統的な儀式だぜ!!」
「嘘つけ!!!」