転生者は、招待を受ける
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連れてこられた場所はこの村唯一の宿屋。
「おや?神様はどちらに…」
おじ様がガラリと玄関の扉を開けて周囲を見回していると奥の部屋から聞き馴染んだ声が聞こえてきた。
「あっはっは!!迷子って!!魔物のクセに、しかもこんな小さな村で迷子って!!だっっさ!!あっはっはっ!!」
「グスッ…お子様には分からないだろうっすけど、オレは人生の迷子っす……!!そんな規模が小さな問題じゃないっすよ…!」
「リリー、暇だし聞いてあげようね?」
「そうっす聞いて欲しいっす…!さっきから旦那の居場所を聞いてるのに、全然反応してくれないっす!」
「どうしたんだろうね?」
「旦那は無視したりはしないっす!!ああ見えて結構いい主人っす!!だから、だから反応してくれないってことは…オレきっと捨てられたっす!!!いつもは罵倒とともにすぐに迎えに来てくれるっす!!でも30分経っても返事一つ返ってこないっす!!」
お前は心配性な彼女か。
ランちゃんとともにジト目で隣の幼馴染を見ると、面倒臭そうな表情を浮かべたアルが盛大にため息を吐いた。
「なんだ、あの子達とお知り合いだったのか。先ほどよりも泣き止まれていてよかった。」
「ご心配おかけしました…。アル、入ろう。」
「クソ入りたくねぇ。」
「なんでよ。白玉泣いてるじゃん、ほらほら。」
肘で彼の身体を突き小声で話しかけると頭を掻いた。
その瞬間扉の向こうからリリーちゃんの能天気な声が響き渡る。
「気にするだけ時間の無駄じゃない?どうせランディに勝手に敵対心燃やして無様に張り合ってるだけだよ。性格も悪い、おまけに身長も負けてるのによくやるよねー。ブハッ!!改めて考えるとどうしようもないねアイツ!!」
「とりあえずあのクソピンクをしばく!!」
即座にリリーちゃんの小言に反応したアルは一瞬で宿屋の扉を回し蹴りして蹴破り、中へ突入していった。
おいこら、人様のお宅でなんと遠慮のない入室の仕方を。
リリーちゃんとアルの怒声を聞きながら扉に傷がないかを確認し、呆然とアルの様子を眺めていた宿屋の主人に頭を下げる。
「すみません、悪い子じゃないんです。扉の開け方に癖がある子なんです。」
「え、えぇ…?そういう感じ?」
そうですよね、言葉が出ないですよね。分かる。
今一度ランちゃんとともに頭を下げ、リリーちゃんたちのお部屋へと足を踏み入れた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なんで着いてこれねぇんだよ。100年以上生きてるくせに手間かけさせんじゃねぇ。」
「だってだって!はぐれても旦那に話しかければいいと思ってたっす!!でも旦那が全然返事してくれなかったからてっきり捨てられたかと思ったっす…!」
「はぁ?お前みたいな害獣を捨てたらオレが訴えられるっつの。」
「旦那……!!一生ついて行くっす!!…でもじゃあなんで返事してくれなかったっすか?」
「……。」
「っネェさんの馬鹿ぁ!!」
「なんで!?」
甘えるように抱きついてきていたリリーちゃんを頭を撫でて慰めていると突然怒りの矛先がこちらに向く。なんでだ。私が何をしたというんだ。
これ以上変な飛び火を受けないために無理やり話題を変える。
「そ、そういえば2人とも今日は予定あるって聞いてたけど大丈夫?白玉が邪魔とかしなかったかな?」
「その前には終わってたから問題ないよね?マザーと連絡を取ってただけだからね?」
「あぁ!それは大事だね!心配してなかった?2人には結構長い間復興のお手伝いしてもらってたし。」
「全然!カカ様は友達を助けてきなさいって言ってたから!!」
「なんていい人なんだマザーことカカ様。」
そんな私たちの会話を聞いて目を見開いたランちゃんは顎に手を当てながら神妙な表情で呟いた。
「ちょっと、マザーって…まさかあのマザー・リザリー?」
「え?もしかして有名人?」
「一般常識だクソモブ。マザー・リザリーといえば女盗賊一派の親玉、王都では第一級指名手配犯として街中に張り出されてる名前だっつの。」
「し、指名手配犯…」
「そうね。滅多に姿を現さないから詳細は不明、女盗賊一派だから性別は女ってことぐらいしか分かってないわ。兄さんですら会ったことはないって言ってた。」
「うーん、でもオレもどこかでその名前を聞いたことがあるっす。」
「……まぁ王都で蔓延ってやがる犯罪のほとんどに関与してるって聞くからな。魔物の耳に入ることもあるかもしれねぇ。」
「そんなもんっすかね?」
「ねぇちょっと!アタシ達の専門は強奪だから!!話を盛りすぎるな!レイが怖がってるじゃんか!レイ、カカ様は優しいから安心して!」
「はは……そうだよね。」
リリーちゃんの言葉に思わず苦笑いする。
そういえば大剣を二本、余裕で振り回せる人なんだっけか。
彼女たちのお仲間ならそこまでの危険人物ではないと信じたい。
「それでマザーさんはなんて…?」
「あぁ、マザーからそろそろ帰ってくるようにって連絡があったんだよね?」
「え。それじゃあ…」
「うん、残念だけどそろそろお別れを」
「いやだーーーーーー!!!絶対いやだー!」
「………で、リリーが嫌がってる最中なのね?」
そう呟いたランちゃんにマリーちゃんは控えめに頷く。
リリーちゃんがずっと私に縋り付くように抱き締めてくるのはそういうことがあったからなのか。
「けっ、つくづく面倒な奴。」
「アンタにだけは言われたくない!!いつもいつもレイと離れたくなくて纏わりついてるくせに!」
「うるせぇよ!オレに八つ当たりすんな!!大人しく帰れ!!そしていい加減モブから離れろ!」
漠然とこのままずっと一緒にいられるのではと思っていたが、私に家族がいるように彼女たちにも帰りを待ってくれている家族がいる。
ならば感謝の気持ちを込めて笑顔で見送りをしなければ。
……と、頭では理解しつつも寂しいものは寂しい。
私も目一杯強く彼女を抱きしめ返した。
「うう…私も寂しい!!」
「本当!?じゃあ一緒に盗賊やろう!!」
「それは無理。」
「即答すぎだよレイ!!」
「………で、リリーもこんなだし、マザーも恩人に会ってみたいって言ってたからね?一緒に来てくれないかなって恩人に聞こうと思ってたんだよね?」
「却下!!」
私が答える前に怒鳴ったアルはリリーちゃんを私から引き剥がしてマリーちゃんを睨みつける。
「ふざけんじゃねぇ……!無法地帯にコイツを行かせてたまるかよ!!」
「大丈夫だよ?盗賊になれってわけじゃないし、マザーがおもてなしをしたいだけだからね?リリーも私もいるし、襲われることはないね?帰りもちゃんと送るからね?」
「ついさっきそこのクソピンクが勧誘してやがったのに信じられるか!!それにそもそもお前らの親玉のマザー・リザリーが怪しさ全開だって言ってんだ!!」
「………まぁ赤髪より…どうかな恩人?嫌?」
「リリーちゃんたちといられるのは嬉しいけど…うーんでもなぁ…お父さんたちの許可が下りるかどうか……。」
「ちなみに恩人が来たら秘密のマザーの倉庫を見せてくれるって言ってたね?」
「そうだよレイ!この間よりももっといっぱい貴重な素材があるんだ!」
「え!?本当に!?」
「!?こっっの馬鹿!!」
強烈な手刀が脳天に決まり目を回すと、アルに思いっきり頭を鷲掴みにされる。
「なにあっさり釣られてんだクソモブが!!相手は大犯罪者だってさっきから言ってるのが分かんねぇのか!?この耳は飾りか!?あ"!?」
「す、すみません…でもそんなに貴重なものを持ってるならクラウスさんによく効くポーションが作れるかもしれないよ?」
「レイ…!!」
感動したように私を見るランちゃんの視線が恥ずかしくて頬を掻くと、納得いかない顔つきでアルが私を睨みつける。
とにかく譲る気はないという意思表示のため、彼に向かって元気よく親指を立てた。
「それにリリーちゃんたちのお母さんだよ?うん!悪い人じゃない!大丈夫大丈夫!!」
「根拠ゼロじゃねぇか…!!」
「あはは、そうだね。そんな顔しなくても大丈夫だよ。リリーちゃんもマリーちゃんもいるし。」
キュッと眉を寄せたアルの眉間をなぞり豪快に笑ってみせたが効果はなく。
しかもランちゃんまで心配そうに私に声をかけた。
「レイ、本当に大丈夫なの?貴女って全く戦えないし度胸だけの塊だから不安なのよね。」
「それって心配してくれてるんだよね?うん、大丈夫。気をつける。」
「……お前が気をつけられるわけねぇだろ。」
おそらく心配してくれているであろうランちゃんの言葉にも大きく頷いてみせると、アルが深いため息と共に言葉が吐き出す。
「仕方ねぇ。おいお前ら、コイツを連れて行きたいならオレの同行が絶対条件だ。」
「え!?アルは修行があるから無理でしょう!?」
「そんなに長い期間空けねぇし、そもそもあのクソウスのために出かけようとしてんだ。出先でも出来る特訓を教えてもらえばいい。それともなんだ?オレがいるのが嫌だって言いてぇのか…!!」
「えぇ!?そんなわけないよ!!アルが側に居てくれるのが一番安心する!もう本当いつもありがとう!」
「ばっ、おまっ……っクソが爆ぜろ!!」
「なんで!?」
急に顔を赤くして怒り出したアルに戸惑っていると、リリーちゃんが不服げに手を挙げた。
「ねぇちょっとそんなの無理だよ!知ってるでしょ?アタシ達の住処は男厳禁なの!!アンタは絶対に連れて行けな」
「マザーはいいって言ってたよね?」
「……えぇ!?嘘!!?本当なのネェさん!」
とんでもなく驚くリリーちゃんの真横で小さく頷いたマリーちゃんは続ける。
「同胞として歓迎する…ってね?」
「………同胞?どういう意味かしら。」
ランちゃんが訝しげに言葉を繰り返し、アルを見つめる。
彼は肩を竦めたがなにかを警戒するように私の手を強く握った。
お読みいただきありがとうございます!
マザーは以前名前だけちらりと出していましたが…ようやっと出番です。スタンバイお願いしまーす。笑