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白蛇は、脅される

いつもありがとうございます!!


これからもどんどんとストーリーを進めていきますが…今回は蛇視点でどうぞ!

区切るところが分からず長めとなってます!


今後もよろしければブックマーク、評価、感想などお待ちしております!


真っ暗な空間、冷えた空気。

人間が作ったにしてはいい社、蛇にとって最高の環境だ。


アルファたちの襲来による被害から早1年弱。

修復が終わり村の復興を祝うと決まった今日、旦那とネェさんの迎えを待っていると突然世界が明るくなった。


「ねーねーおにいちゃん、かみさまいたー?」


「うん!とーさんがいってたとおりまっしろだな!」


「わー!かわいいね!」


(魔物のこのオレに可愛いとはいい度胸っすね。)


敵対心を抱かず馬鹿のように騒ぐ奴らを見て、仕方なしに身体を起こし開かれた御扉から外へ出る。

好奇心に満ち溢れた瞳で見つめられる居心地の悪さに、思わず舌を出して威嚇する。


「シュー……うるさいっすよ人間。」


「きゃー!しゃべったー!」


「そりゃ話せるっすヨ。オレを誰だと思ってるっス。」


「したがチロチロしてるー!かわいいー!」


「ほんとにかみさまっているんだ…とーさんはほんとにかみさまのおうちつくったんだ!」


「かみさま!みつぎものもってきたの!たべて!」


「話を聞けっス!!」


嬉しそうにオレの頭を撫でる(叩いているとも言える)小さいオスと、口元に果物を押し付けてくる小さいメスの拷問にぐっと耐える。


「いいじゃねぇか。勝手に勘違いしてくれてんなら好都合。そのまま神様で突き通せよ。」


「そ、そんな旦那ぁ!オレ神様なんて嫌っス!!弱い奴を守らなきゃいけないんすヨ!?絶対嫌っス!」


「馬鹿、フリでいいんだよ。そうすりゃ蛇の姿のままいても誰も不思議に思わねぇし楽だろ。しかも貢ぎ物が手に入ればお前の食費も浮く…………」


「旦那、今ものすごく悪い顔してるっすヨ。」


「…とにかく社まで作ってもらっといて文句言うな。それにお前に案外似合ってるぜ、神様。」


絶対食費が浮くって部分が本音だろうが、似合っていると言われて悪い気はしない。

それにフリとはいえオレを神様と信じ、そして貢ぎ物を持ってきた奴を丸呑みするなんてことはあってはならない。なんともやりにくい。


ペシペシと叩き続ける手からするりと抜け、とぐろを巻いてじっと見つめる。


「いいっスカ?オレだってここで力を養ってるっス。用があるなら手を合わせてオレの名を呼んでくれれば…そんでもって気が向けば…出てきてやるっすカラ、いきなり御扉を開けちゃダメっすヨ。」


「ご、ごめんなさいかみさま…」


ちょっとでも乱暴にしたらすぐに死んでしまいそうな人間の反省した様子を見たら何も言えなくなってしまった。


「…ま、分かればいいっすヨ。オレが優しくってよかったっすネ、以後気をつけるっス。そしてとりあえず貢ぎ物を寄越せっス。」


「はいかみさま!…ねぇ、かみさまっておなまえあるの?」


「はぁ?あるに決まってるっス。」


「なんておなまえー?」


「ふんっ、なんでもかんでも聞けばいいってもんじゃないっすヨ。そんなに世の中甘くないっすからネ。」


「えー!!おしえてよー!」


見たところ出会った頃の旦那たちと同じぐらいだというのに、なんで脳の出来にここまで個体差があるのか不思議だ。

小さなメスの願いを一蹴すると段々とその目元に涙が溜まっていくのを見て冷や汗をかく。


(げ、騒ぎを起こしたら旦那に怒られる。)


騒がれたら面倒だと名前を告げるため口を開くと、突然人間の後ろから超速球で近づいてきた果物に眉間を撃ち抜かれた。


「ぐべぇ!!」


「随分と生意気な口きいてんな駄蛇。いつからそんなに偉くなった。」


「痛いっすヨォ………旦那ぁ…。」


ポケットに手を突っ込んで歩いてくるのは、眉間に皺を寄せた我が主人。


「あれ?ネェさんは?一緒に来るって聞いてたっすケド…」


「ッチ!!!!」


うわぁ、機嫌悪っ。なにしたんすかネェさん。


盛大な舌打ちをした旦那は小さな人間たちを無視してこちらに近づこうとするが、思わぬ伏兵に邪魔されることになる。


「きゃー!ちいさなえいゆーさん!こんにちはー!」


「……………ちは。」


「ブハッ!!声小さっ!!」


小さなメスが嬉しそうに旦那に声をかけ、予想外だったのか戸惑ったように返事をする姿に思わず吹き出すと恐ろしい速さで第2波がやってきた。

痛い、そして素晴らしい命中率。


「すごいや!えいゆーさんはほんとにかみさまのマスターさまなんだね!」


「ねぇ、えいゆーさんはかみさまのおなまえしってるのー?」


「おしえておしえて!!」


「…シラタマ……。」


「シラタマ!シラタマさまっていうんだ!」


「ねーねーどこでかみさまにあったの?」


自分よりはるかに弱い存在に押されるような形で数歩退がる旦那は、未だに人間たちに敵意なく声をかけられるのに慣れていないらしい。

どうしたらいいか分からず言葉に詰まっている旦那を無視して投げられた果物を丸呑みしていると、この場を収める最強の助っ人が姿を現した。


「アルーー!!ちょっと待ってってば…ん?」


「あ、ちんじゅーさんだ。」


ヒラヒラと手を振って走ってきたネェさんの姿を見た旦那は、瞬間移動の如く素早くネェさんの元へ移動して小さな人間たちから距離を取る。


「……なにしてるの?」


「いいからコイツらなんとかしろ。」


「え、まさかいじめられたの!?よーし分かったお姉さんがみっちりお説教をしてやる!!!」


「んなわけねぇだろ!!!ソイツらに絡まれて鬱陶しいんだよ!!」


「う、うっとうしい…?」


あ、あの人間たち泣き出しそう。


涙を浮かべた奴らを見てギョッとした旦那は視線を彷徨わせるばかり。

一方のネェさんは数秒人間たちと旦那を見比べたかと思えば笑みを浮かべ、旦那の腕を掴んで再度人間たちに近寄っていった。


「おいモブ!!」


「うんうん、大丈夫だからおいで。」


「はぁ!?冗談じゃねぇ…!!」


ブンブンと凄い勢いで首を振った旦那がネェさんの手を離そうとすると魔法の一言。


「ほら手、握っててあげるから。怖くなーい怖くない!!」


「……………。」


旦那、チョロすぎっすよ本当に。


「…おこらせちゃった?」


「ううん。この英雄さんはね、貴方みたいな可愛い女の子に声をかけられて照れてるだけだよ?おっかない顔してるのは緊張して顔が強張ってるだけ!!」


「おい。」


「アルは初心でちょっと人見知りな、優しい男の子なんです。」


「えいゆーさん、はずかしがりやさんなんだ。」


「そういうこと。それに加えて寂しがりやさん。あんなこと言ってるけど内心歓喜に震えてるから安心して!!」


「なにでまかせ言ってんだテメェ!!」


「ほら分かる?あれも照れ隠し!!だからこれからもアルに声をかけてあげてね!!」


「「はーい!!!」」


「おーいい返事!!そうだふたりとも!英雄さんと握手したい?したいよね!」


「はぁ!?」


「したいしたい!!」


「えいゆーさんとあくしゅ!やったー!」


「オレもしたいっス!!えいゆーさん!」


「断る!!!…つーかなんでお前まで参加してくんだよクソ蛇が!さりげなく混ざってくるんじゃねぇ!!」


「まぁいいじゃんアル!今のうちにファンの心をグッと掴んでおいて損はないって!!」


「意味分かんねぇこと言ってんじゃねぇぞ…!」


キラキラと尊敬の眼差しで旦那を見つめる小さな人間たちに混じって挙手をすると、旦那に即座に見破られて脳天を叩かれる。

頭を摩っている間にまた人間たちに追い詰められている旦那は、大量の冷や汗をかきながらネェさんの手をギュッと握りしめていた。


「…ん?ネェさんそれなんスカ?」


「え?」


そんな流れでネェさんに視線を向けると、きらりと光る髪留めが目につく。

金色の留め具に存在感たっぷりの紅い花飾りがネェさんの黒い髪に添えられていて、本能的に距離を取ったほうが良いと警告が鳴る。


「あぁこれね…」


そっと髪留めに触れたネェさんは少し頬を赤らめて呟く。


「この前、そこの英雄さんから貰ったんだ。可愛いでしょう?」


………ファッ!?!?

一体全体どういうことだ、なにがあったというのだ!!!


今は旦那は小さい人間たちに気を取られていて気づいていない。

つまり!!探るなら今!!!

ビタンと尻尾を地面に振り下ろし、興奮と期待に胸を踊らせながら慎重に言葉を選ぶ。


「へ、へぇあの旦那から贈り物っスカ…珍しいっすネ…」


「オレの気持ちって言って私の誕生日のお祝いでくれたんだよ。でもその後が大変で…」


オレの…気持ち………

オレの、キモチ!!!!!!!!


やっぱり本能的に感じた警告は間違いではなかった。

花には詳しくないため意味は分からないが、あの紅い花には旦那の魔力が込められている。

おそらく人間世界でいうマーキングに違いない。

ということは!!!!


「進んでるみたいでよかったっス!!!!!」


「え、なにが?」


「それ外しちゃ駄目っスヨ!!絶対に!!」


「もちろんお気に入りだし、外すつもりはないんだけど…」


首を傾げたネェさんだったがすぐまた髪留めを撫でながら言葉を続ける。


「これ、お父さんが見たときに発狂しながら失神しちゃったのが気になるんだよね…なぜか分かる?」


「は?なに言ってるんスカ、そりゃあネェさんが旦那の番になあっっっづぁ!!!」


全身が焼けるような暑さに悶えると、旦那がオレの首元を掴み脳内に声が反響する。


「蒸し料理になりたくなかったら余計なことは言うんじゃねぇぞシラタマ。」


「え、まさかまだ伝えてないんスカ…?嘘っすよね旦那…あんなマーキングしておいて?」


「っっうるせぇ!!渡した瞬間に鳩尾に頭突きかまされてそれどころじゃなかったんだよ!!!」


「本当ついてないっすね旦那!!!」


「全くだこの野郎!!オレが何したってんだ!」


途中から大声で旦那と悲劇を嘆いているとネェさんが気まずそうに片手を上げて頭を下げる。


「そ、それについてはごめんねアル…喜びのあまりつい…」


「どんな喜びの表現の仕方してるっすかネェさん!!!」


「ごめんなさい……」


「とにかく!!!!」


怒鳴った旦那はオレに顔を寄せ再度脳内でオレに言葉を紡いだ。


「アイツが勘付くような言動は控えろ。」


「い、いやでもあんな贈り物、他人から見て丸分かりっすから、旦那の気持ちがネェさんにバレるのなんて時間の問題じゃないっスカ…」


「そんなことオレが一番分かってんだよ!!!バレる前には、な、なんとかする!!だからそれまでは根回しに付き合え!!神様だろそのくらいは仕事しろ!」


「神様関係ないっすよそれ!!というかもうこの場で言った方が早いっすって!!たった2文字っすヨ!?」


「は?無理に決まってんだろ?オレを殺す気か?貢ぎ物ならさっき食ったんだ、嫌とは言わせねぇ!!黙って手伝え!!」


「やり方が卑怯すぎるっス…」


「…おーい、見つめ合うほど仲良いのは分かったんだけどそろそろ村に行かない?ランちゃんずっとさっき会ったところで待たせてるし。」


「分かってる!!…つうかアイツと一緒に行くなんてぜってぇに嫌だからな!!!」


「えぇ…まだそんなこと言ってるの…?」


あぁ、それで機嫌が悪かったのか。


小さな人間たちと同じく首を傾げるネェさんを見て、先が思いやられるとため息を吐いた。

シラタマも大分丸くなりましたねー。

彼が出てくると喋り倒すので書いてて楽しいです笑

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