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騎士団隊長は、予感する

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真っ直ぐに木刀を構えて気配を探る。


風の音、草木の匂いに紛れて一瞬の違和感がよぎると突き刺すような殺気とともに自分の首を狙う木刀が姿を現した。

乱撃が降り注ぎ、1つ1つの攻撃に手が痺れるくらいの衝撃が襲いかかる。

筋はいい、速さも申し分ない、が。


「まだ足りない。」


「っ、」


攻撃を受け止めた拍子に相手の武器へ自身の魔力を込め、反動で大きく弾き飛ばす。

相手は器用にもすぐさま身体を回転させ、私の反撃の衝撃を逃がして距離を取った。


「身軽だな。」


「うるせぇクソが。」


舞い上がる土煙の向こう側で、苦虫を噛み潰したよう表情を浮かべた少年はこちらを睨みつけてくる。

そして彼が手に持っていた木刀に視線を向けると…案の定。


「攻撃の瞬間に魔力が途切れているぞ。もっと武器との共鳴を意識して魔力を込めろ。それだとただの木刀だ。」


「………分かってるっつの。」


深くため息を吐き、頭を掻くアルフレッドの表情に疲れが見て取れる。

無理もない、朝早くから修行を続けて気がつけば今はもう昼時だ。

赤髪といえど魔力は有限、むしろここまで休まず続けられた集中力が恐ろしいぐらいだった。

木刀を地面に差して近場のベンチに腰をかけ、口に水を含む。


「少し休むといい。この調子では身体を壊してしまう。」


「……の割にテメェは平気そうじゃねぇか。」


「あぁ。私は半年ぐらい寝なくても活動できるくらい、体力には自信があるからな。」


「それ体力とは関係ねぇよ。ただのバケモンだ。」


「そうか、あまり褒めてくれるな。照れるだろう?」


「褒めてねぇよ!!なんで今ので褒められてると思った!?」


「急に興奮してどうした。水でも飲むか?」


「相変わらず話が通じねぇよコイツ!!もううるせぇ黙れそしていらねぇ!!」


なんだか怒らせてしまったらしい。


「それよりなんで上手くいかねぇんだ。攻撃する前は確かに……」


私に構うのが面倒になったのか即刻無視の体制を取り一つ離れたベンチへ腰掛ける。

納得いかないと眉をひそめ、顎に手を当てるアルフレッドに苦笑しつつ思考を巡らせた。


魔力はもともと戦闘向き、さらに素晴らしい努力で高難易度の魔力操作を会得した彼にとって武器に魔力を込める行為そのものは難しいことではない。

ところが思わぬところで…いや、彼ならではの問題が発生してしまっているのだが、そのことに気がつけるまでは大いに悩むことになるだろう。


軽く息を吐いて視線を逸らすとゆっくりとこちらに近づいてくる大男に気がついた。

全身に包帯巻いて松葉杖をついて歩いてくる姿は目立って痛々しいが、それでも楽しそうにこちらに微笑む様子に安心する。


「体調は良さそうだな。」


「おーお前さんの自慢の弟のおかげでな。そっちの調子はどうだお前たち!」


「あ"?誰だお前。」


「誰って…がっはっはっ!!包帯まみれで分からないのか少年!!」


「………あぁ、テメェか。つうか触んな。」


やっと合致したように呟いたアルフレッドは、さりげなく頭を撫でようとしたリチャードの手を払う。


「なんだよ、触っていいのは愛しい嬢ちゃんだけってか?俺の撫で撫では気持ちいいって嬢ちゃんにも評判なのになぁ。」


「あ"!?なに勝手にアイツに触ってんだクソ筋肉ゴリラその右手置いてけ!!!!!」


「…本当ブレないな少年。」


包帯男、クソ筋肉ゴリラことリチャードは恐怖に肩を震わせると、話を変えようと私に視線を向ける。


「あぁそうだ、俺はクラウス宛の伝言を預かってきたんだ。」


「誰から?」


「あーその、ランディから…お薬の時間だってな。」


「?」


若干視線を彷徨わせて答えたリチャードを不思議に思うも、ランディの名を聞いた途端に苛立ちに顔を歪めたアルフレッドに笑いがこみ上げる。

本当に弟が苦手のようでこの反応がなかなか癖になる。


「お前も来るか?アルフレッド。」


「行かねぇよ!!」


「そうか、では時間潰しを兼ねて休憩しておけ。」


「そうだぞ?俺とここでお留守番してような!」


「はぁ!?ふざけんな断る!!……つうかずっと突っ立ってんじゃねぇ!!テメェは早く戻って寝ろ!!」


「お?心配してくれてるのか?このくらい問題ないのに優しいなぁ少年は。」


「別に心配なんてしてねぇ!!!」


楽しげにじゃれ合う2人の会話を背に、ゆっくりとその場を後にした。















◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






自室に戻ると自身の定位置に、自分と瓜二つの髪色が揺らめいているのが分かる。

なにやら必死になって本を解読しているようだ。


「こんなこところで読書なんて、目が悪くなるぞランディ。」


「小言はそこにあるポーション飲んでからにして。」


「分かった。」


古びた机の上に置いてあった、キラキラと薄黄色に光る小瓶を口元に持っていき一気に飲み干す。

一瞬全身が真っ白に光ったかと思えば重だるい感覚が嘘のように改善された。

一息ついて礼を伝えようと視線を向ければ、肝心の本人は無言でこちらを見つめている。

訴えたいことでもあるのかと首を傾げて思考を巡らせると、1つの答えにたどり着く。


「心配するな、なかなかいい味付けだった。」


「本当にどうでもいいわそんなこと。ワタシが聞きたいのはもっと別のことだから。」


「なんだ?」


大げさなほど大きな音を立てて本を閉じたランディは鬼の形相でこちらを睨みつける。


「今後アイツとはどうするの。」


「アイツとは?」


「テオ・モルドーラ。」


あぁ。と小さく言葉が漏れた。


「今回の一件ではっきりしたじゃない。王に進言してワタシを兄さんの元へ行かせないようにして、しかも援軍を送るどころか門まで閉めて……村の襲撃に便乗して兄さんを消そうとしたのよ?もしかしたら兄さんの状態異常耐性についても狙ってたかもしれない。」


「そうかもしれないな。」


「そうかもって…ねぇ兄さん分かってる!?兄さんの状態異常耐性値は恐ろしいほど低いのよ!?もし洗脳魔法でも使われたら…!」


「大丈夫だ。」


顔を歪ませて私に詰め寄る弟の頭を撫でながら、無表情でこちらを見つめる紺色の瞳を思い浮かべる。

テオ・モルドーラという男は、いつも私たちから一線を引き、遥か未来を見つめているような人物だ。

どこか儚い印象もあるテオの心情を察することはできないが、おそらくなにかもっと大きなものを見据えている。


「それが目的ならリチャードも満足に動けず兵士たちが疲弊している今が攻め時だと思わないか。お前をみすみすこちらへ寄越す理由もない。」


「……じゃあ一体なにが目的?」


そう聞かれて脳内に言葉が蘇る。

ロウソクの火で強張った表情が照らされた、元魔女の言葉を。


「例え首だけになっても詳細は言えないわぁ。………分かってちょうだい。」


それだけでもう十分だった。


「まだ謎が多い。」


「ど、どういうこと?」


「こういう時は予想外の黒幕がいる可能性が高いだろう?」


「………まさか王、とか?」


「ヘンリー王か、確かにそれは予想外だな。だが…それでは。」


契約の魔女は動かない。

引き攣った表情を浮かべた弟も気がついたようだ。


「これ以上は詮索するな。お前を巻き込みたくはない。」


「嫌!!ワタシも戦う!!手伝わせて!」


「駄目だ。」


自分とよく似た瞳から大粒の涙を零した弟は、祈るように言葉を続ける。


「お願い兄さん…!あの時みたいに守られるだけは嫌!!」


「駄目だ。」


「聖剣使いなのに挑もうとするのは無茶だって!」


「ランディ。」


少しだけ力を込めて頭を撫で、落ち着かせる。


「大丈夫だ。私は死なない。」


「どうしてそんなことが言えるの。」


軽く目を瞑ると浮かび上がるのは赤髪の騎士とその幼馴染。

ふっと口元を緩め、とびきり優しい声色で弟に声をかける。


「存外未来は明るいと思うぞ。……勘だがな。」


「根拠ないじゃん馬鹿兄さん!!」


「すまない。いつも迷惑をかける。だが知っているだろう?私の勘は、よく当たる。」


知ってる、と小さく呟いた弟はようやく笑みを浮かべた。

次回、お待ちかね(?)のアル視点でお送りします。

イチャイチャするぞー!

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