転生者と少年は、吹っ切れる
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アルがなにやら暴走し始めました。
さぁですが皆さんおまたせいたしました!
この小説の主人公はヤンデレでもなければ、ツンデレでもありません!!
そうっ!!ツンギレなのです!(迫真
ツンギレにとってはキレること、それすなわちデレと同じ!!
とくとご覧あれ!!
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言われた意味が分からなくて呆然と唸る幼馴染を見つめる。
「え…え!?なんでそんな突然!?頑張ってたんでしょう!?なんの意味もないなんてそんなわけないって!」
「肝心な奴に響いてないなら意味ねぇだろ!!お前はなんっっっにも分かってねぇ!!!オレはっ、くそっ、おま、お前なんかっ!!……ッッバーカ!!」
「うわキレ悪っ!?あ、ごめんなさい睨まないで!?」
怒りの沸点を突破したことが原因なのか、いつもの暴言すらとてつもなくキレが悪くなってしまった。
しかもあのアルが若干涙目になっている気がする。
私はとんでもない地雷を踏み抜いてしまったかもしれない。
努めて冷静に、かつ迅速にアルの落ち着きを取り戻さなくてはならないと慎重に言葉を選ぶ。
私が変なことを言ったことによる一時の気の迷いと勢いのせいで幼馴染の将来の可能性が消滅するのは避けたい。
それに先程から脳内に響き渡る何かが砕けていくような奇妙な音が私を不安にさせた。
このままでは取り返しがつかないような、そんな気がするのだ。
「で、でもさ?厳しい修行も頑張れるほどやりがいがあったんじゃない?楽しかったんじゃないの?」
「あ"!?楽しいわけねぇだろ!!毎日毎日クソみてぇに素振りさせられるわ、あのうざったらしい好きでもなんでもねぇクソ真面目の面を拝まなきゃなんねぇし最悪だっつの!!!」
「えぇ…?じゃあなんで逆に今までやってたの?」
「そんなの将来的に損はしなそうだと思ったからに決まってんだろ!」
「……うん、だよね。そうだよね。」
「でもそれは!」
やっぱり私何も間違ってない。
ますます意味が分からなくて首を傾げると、盛大に舌打ちしたアルは手元に力を込めて壁をさらにへこませる。
「お前と一緒に居ても、誰からも文句言われねぇようにするためだ!!!」
「……へ。」
ギュッと繋いだ手に力を込めたアルはさらに言葉を続けた。
「この村ではだいぶマシになったけどな!赤髪は今でも迫害の対象なんだよ!!そんな奴の側にずっと…ずっと居てくれる馬鹿なんていねぇ!!」
「え?いやいやそんな訳ないでしょう。私がいるもの。可能な限り一緒に居たいよ?」
「はぁあ!?うるせぇオレもだクソが!!いいから話を聞け!!」
「は、はいなんでもないです。すみません。」
怒気迫る表情で頬を摘まれたので言葉を飲み込むと、アルは震える声でそのまま激情をぶつけてくる。
「いいか!?面倒くせぇ修行も腹立つアイツの顔も、お前が自業自得の出禁を喰らってた間会いに行くのも我慢してたのも全部!今のうちに力をつけて努力して、聖剣使いの社会的地位を手に入れれば誰にも奪われねぇと思ったからだ!!それなのになんでっ、なんでお前から離れていこうとすんだよ!!お前がいねぇならなんの価値もねぇ!!お前が勝手に遠くに行こうとする原因になるなら、全くもって必要ねぇ!!」
アルの言葉に反応して、ピシッと脳内に再度ヒビが入る音が響く。
どこか冷静な自分が幼馴染を止めろと警告を鳴らしているにも関わらず、指一本動かすことが出来ない。
「どうしてそんな、オレから一線を引くような目をするんだよ!!」
「だっ…て…」
だってそれは、当たり前のことだよね?
『………ウン、そうだネ。』
脳内で声が反響すると、さらに亀裂音が響く。
「クソッ!ほらまたっ…なんなんだよ!!約束したじゃねぇか!ずっと側にいるって!!アレは嘘だったのか!?なぁモブ!!」
「嘘じゃない!!」
アルの泣きそうな顔を見てこちらも視界が潤み大声で叫ぶと、乱暴に目尻にキスされた。
思わずこちらもお返しすると、壁に着いていたアルの手が腰に回されて抱き締められる。
「じゃあ何がダメなんだよ。オレはどうすればいい?教えてくれ。」
ピシッ、ピシッと割れる音が響くがどうでもいい。
アルが悪いんだ。そんなことを言われたら離れなくなるに決まってるじゃないか。
私もやりたいようにやらせてもらう。
「……自分が思った通りに進んで欲しいな。でも、」
逆立った幼馴染の髪の毛を撫でながら半泣きの声で呟く。
「雑魚で愚図な、貴方に不釣合いな私を、置いていかないで。ひとりにしないで。」
数秒の沈黙を置いてアルはすぐに鋭くこちらを睨みつけた。
「あのな……………それはこっちの台詞だって何回言えば分かるんだよ!!!テメェが大体勝手に突っ走ってるんだろうが!!いい加減にしろ!!なんなら二度と変なこと言い出さねぇように本気で閉じ込めてやろうか!あ"!?」
「あーあ!!言っちゃったね!そんなこと言ってもう知らないからね!!可愛い子に声かけられても気を遣って2人っきりにとかしてあげないから!!木の陰から小石投げてやる!」
「はぁ!?なんでそうなる!!オレからすればお前以外は全員雑草…あ"?おい待て。よくよく考えればそれもこっちの台詞だわ!!テメェの方がやたらめったら他の奴に尻尾振ってんじゃねぇか!!特大ブーメランでお返しだこの野郎!!」
「グスッ…!忙しくしてても、あ、会いに行ってやる!!嫌がっても無駄だからね!グスッ…言質取ったし!!私のねちっこさナメたら痛い目見るんだから!!」
「…お前…まさかオレが会いに行かなかったから拗ねてんのか?」
「私も今気づいたんだけど想像以上に寂しかったらしいです!!!」
「なんで今気付くんだよ!!そういうことは早く言え!!!!」
「ごめんなさい!!!」
「謝れば済むと思ってんじゃ…おい待て泣くな!!冗談だ馬鹿!!」
「ありがとう!!でも本当に付きまとうからね!!」
「けっ!!望むところだクソが!!付き纏われる前にこっちから迎えに行ってやらぁ!!」
抱き締められたままの超至近距離で、喧嘩とも違う怒鳴り合いで互いに息が上がる。
けれど私もアルも絡めた手を離そうとせず、各々の気持ちをぶちまけた。
そのおかげか心はすっきりと晴れ渡り、自分がどういう人間かも思い出す。
私は何も考えてない系女子のレイ・モブロード。
変なことを考えたのが良くなかったのだ。
面倒な私の相手をしてくれた幼馴染へ感謝と謝罪の意を込めて頬に口付ける。
盛大に肩をビクつかせながらも受け止めてくれたアルと一緒に居たい。今はそれでいいじゃないか。
「アル、ありがとう。」
込み上げてきた笑みを浮かべて今一度感謝を告げると、顔を真っ赤にした幼馴染は数秒間唸りながら右往左往と視線を彷徨わせる。
「……クソッ…あっっちぃ…!」
「え?」
「なんでもねぇよ!!」
あまりの小さな声に聞き返すと誤魔化すように私の頬へキスのお返しと、さらに繋いでいた手にも口づけを落とす。
「絶対に落としてやる…!!」
「だからなんて!?」
脳内の亀裂音は、気がつけば跡形もなく消えていた。
ちなみにこのキレながらイチャイチャする様子は、心配して探しにきたランちゃんたちに一部始終見られています。