転生者は、翻弄される
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その後アルの機嫌が少し戻り、ランちゃんと同じ空間にいても爆破しないことを約束してくれた。
否定はしていたが、本当にお腹が減っていて苛立っていたんじゃないかと思う。
「どっかーん!くらえエミリー!」
「きゃーあぶなーい!そう来るならえい!拘束魔法!」
「うぎゃっ!?」
「結構容赦ない技だね?負けられないね?」
部屋の中で大剣が舞い、魔法が飛ぶなんて一体どんな状況なのだろう。
なんか私が思ってたパーティーと違う。
「うるっっっっっっせぇぞテメェら!!家ん中で暴れんじゃねぇ!!」
「ねぇリリー?さっきまで大暴れしてた赤髪がなんか言ってるよ?」
「レイが構ってくれなくなるから拗ねてたクセに偉そう!!ぎゃははは!!」
「シラタマ、アイツら丸呑みしてこい!!」
「了解ッス!!」
「あ、逃げようね?」
「いやいやいやネェさん!!アタシ拘束魔法で動けないんだってば!!ちょ!?待って!?」
………まぁ楽しそうだからいいか。
「貴方は入らなくていいの?」
「ご冗談を。死んでまうわ。」
「そんな自信満々に言わなくてもいいでしょ。」
大乱闘を横目で見ながらランちゃんへと話しかける。
「それにしても本当に久しぶりだね。元気だったランちゃん?」
「まぁね。つい最近まで王都で死ぬほど働かせられたけど有給をもぎ取ってここまで来たの。兄さんと会った後は特に予定もないから、ギリギリまでポーションの改良に付き合えるわ。」
「おぉ本当に!?」
「もちろんよ。しばらくはよろしくね。」
「ランちゃん最高!」
ランちゃんが死守してくれた王都カステラを食しながら彼との会話を楽しんでいると、突然彼と私の間ににょっきりと手が差し込まれる。
グイッグイッと幅を広げ、割り込んできたのは見慣れた赤。
「………なにしてるの?」
「別に。おいもう少しそっち詰めろ。狭ぇ。」
「うん……え?ここに座るの?」
その問いに答えるわけではなく無言で椅子を割り込ませてランちゃんと私の間に座るアルは満足気だ。
そしてじーっと数秒ランちゃんを見つめた後、震える右手を握りしめて舌打ちしたアルは何故か私の肩にピタッと身体を寄せた。
「いや本当にどうしたの。」
「ふっ、まぁいいんじゃない?貴方の隣がいいみたい。」
「ッチ!!余裕ぶちかましてんじゃねぇぞクソえくぼが…!コイツとの約束がなけりゃテメェなんて一瞬で木っ端微塵にし」
「はーいそこまで。アル、あーん。」
「あ"!?んぐっ」
大きな口を開いてランちゃんに吠えるアルに王都カステラを与えると、眉間にシワを寄せて不機嫌そうに飲み込む。
「なんでそんな顔するの。美味しいでしょう?」
「クソ甘くて胸焼けする。」
「えぇ!?これが美味しいのに……」
「だったらお前が食え。ほら。」
「んん!!圧倒的美味さに感服!!」
「けっ、そうかよ。」
先ほどのお返しとばかりに今度は私が餌付けされていると、ランちゃんが眉間にシワを寄せて盛大にため息を吐く。
「なに見せられてんだか。あー胸焼けするわぁ。」
「そうか、具合悪りぃなら無理すんな。ちなみに出口はあっちだ。」
「ランちゃんを帰そうとしないで!?」
事あるごとにランちゃんを帰そうとするアルを叱りながらも平和に時間は過ぎていく。
「あ、エミリーちゃん。トイレ借りていい?」
「いいよー!この部屋からまっすぐ行って右手奥だよ!」
「ありがとう。じゃ、アル。ランちゃんと仲良くね。」
「断る!!!」
「迷子にならないようにねレイ。」
この部屋からまっすぐ行って右手奥のトイレだぞ。
迷子になるわけがない。
ふわふわした気分のまま親指を立て、意気揚々と部屋を出てトイレへとたどり着きスッキリした後。
「自分でも驚きだわー。」
迷子になった。
まっすぐ行って右手奥だったんだから、帰りはまっすぐ行って左手奥でいいんじゃないの?
なんで廊下が続いてるの?どういうことなの?
明らかにさっきまでとは違う場所に出てきてしまった私は、自分の方向感覚のなさに呆れることしかできない。
「仕方ない!こうなったら鍵が開いてる部屋を片っ端から開けていこう!!ごめんねエミリーちゃん!!」
まず可愛らしい花柄の扉の前に立つ。
ワクワクしながら扉を押したり引いたりするが、まぁ開かない。
次にだいぶ痛んでいる古びた扉の前に立つ。
ドキドキしながら同じく挑戦するが、開かない。
さらに変な模様が刻まれている扉の前に立つ。
嫌な予感に見舞われながら恐る恐る触れるが。
「どこも開かないんですけどぉおおおお!!」
片膝から崩れ落ちて思わず発狂する。
ダメだ、やっちまった。完全に迷子になった。
「い、いや!まだ希望を捨てるべきじゃない!こんなに時間が経ってるんだから、誰かしら私を探しに来てくれるのでは!?アルとか特に!!超他力本願だけど!」
そう自身に言い聞かせて大きく深呼吸を繰り返すと、遠くから人の気配を感じとる。
(ここに来て野生の勘を取り戻したのかレイ・モブロード!!)
駆け足でその方向へ向かうと白い大きな扉の前に辿り着き、その奥から物音が聞こえた。
「こ、ここだ!!絶対ここだ!ここしかない!」
軽く押すがビクともせず、一生懸命体重をかけるとゆっくりと扉が開く。
達成感に浸っているうちにふと疑問が湧き上がる。
(こんなに開けるの大変だったっけ。)
ギギギっと開いた先に見えた世界は部屋ではなく、ジャングルのような植物園。いや、庭園と言うべきか。
「いらっしゃい。レイちゃん。」
「間違えました!!!」
「え!?」
そしてかつて王都で遭遇した金髪美青年の郵便屋さんが私を手招きしていたので、目にも留まらぬ速さでお辞儀をして扉を閉めた。