転生者は、歓喜する
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やる気が噴水のように湧き上がり、現在もともとの予定よりも糖度高めでお送りしております!!
アルとレイちゃんのイチャイチャが見たいということですよね!?そういうことですよね!?
よっしゃ任せろ付いて来い!!って勢いでまだほのぼのパートは続きます。
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小鳥の囀りが聞こえる田舎道。
アルのお母さんに挨拶をしてから少しのんびりしたあと、歩いてエミリーちゃんの立派なお屋敷まで向かう。
「そういえば転送魔法は使わないの?」
「あのクソ加護ジジイのせいで使いにくいんだよ。それに…歩いても行けるんだから別にいいだろ。」
「うん?まぁそうだね。お散歩日和だし。」
「……おー。」
「それにこうしてアルが手を繋いでくれるなら、こっちの方が好きだなー。」
「っ、そ、そうかよ!!!つうか誰も聞いてねぇわそんなこと!!」
そういう割にはしっかりと握り直してくるから思わず笑ってしまうと叩かれた。結構な衝撃が襲ってきたのでなかなかに照れていたのだと思う。
そしてそんなじゃれ合いをしながら数十分、ついにエミリー家の門近くまで辿り着いたのである。
「本当立派だよね。なんというかこう…歴史を感じる……的ななにかを」
「嘘つけよ。その場の雰囲気で言ってるくせに。」
「え、なんで分かったの。」
「気持ちが全くこもってねぇし、目が死んでた。」
「すごく素敵なんだけどね、維持費どのくらいかかるんだろうって思ったら辛くなってきちゃって。」
「夢も希望もねぇこと考えてんな。」
「あ、きたきた!モブちゃーーん!!」
そんなどうでもいい会話はよそに門の向こう側から鈴の音のような声で呼ばれて視線を向ける。
ギギギっと両開きに自動で開いた先には満面の笑みでこちらに手を振るエミリーちゃんの姿があった。
その瞬間さりげなく手が離れていってしまったのが少し寂しいのもつかの間、すぐにエミリーちゃんがこちらへと駆け寄ってくる。
「ねぇモブちゃん、リリーちゃんには会わなかった?」
「え?会わなかったけど…どうして?」
「あはは!リリーちゃんとマリーちゃんがモブちゃんが遅いって心配しててね?エミリーは絶対番犬くんが側についてると思ったから引き止めたんだけど、リリーちゃんがアタシが迎えに行くって言って出て行っちゃって!」
「嘘!?」
すぐに後ろへ振り返りリリーちゃんを呼び戻そうと駆け出すと、進行方向にアルが瞬間移動してきて両手を広げた。
ん?ん?なにかな?なにやってるのかな?
「走り出したら急には止まらないって言葉知ってる!?」
「知ってるわクソが。回収。」
「うぐぇ!?」
正面衝突待ったなし。
勢いそのままアルの元へ飛び込んでしまい、顔面を強打。
痛くて震えているにもかかわらず飛び出してきた張本人は涼しい顔で肩を竦めるのみ。
ガチガチの拘束から逃れようとジタバタすると、エミリーちゃんが笑いながら言葉を続ける。
「あはは!!もうモブちゃんったら!エミリーの家の正確な場所が分からないのに飛び出していっちゃったら、それこそ迷子になっちゃうよ?どうせモブちゃんがいないって分かったら帰ってくるんだから、ここで待ってようよ!」
「ソ、ソウデスネ……」
エミリーちゃんの言葉に頷き抵抗をやめるが、それでもアルは私を離そうとしない。
不思議に思って彼の顔を見れば、盛大に眉をひそめて辺りを警戒しているではないか。
「?アル?そろそろ離して欲しいんだけど…どうかしたの?」
「却下!!」
「なんで!?」
「なんだかとてつもねぇ嫌な予感と気配がする…!!」
「えぇ!?ま、まさか魔物とか!?」
あの時の恐怖が蘇り自分から幼馴染にしがみ付くと、アルがさらに腕の力を込めた。
「えー?エミリーなにも感じないよ?それにここはお爺様の結界に包まれてるし、大丈夫だと思うけどなー?」
「え、エミリーちゃん…一応アルの隣に来といた方がいいよ…!」
猛獣顔負けの鋭い眼光で一点を睨みつけ、今にも唸り声をあげそうな勢いだ。
アルにこんな顔をさせるなにかがこっちに向かって来ているなら、用心するに越したことはない。
渋々エミリーちゃんもアルの近くに寄り、彼が睨みつけている方向を一緒に確認する。
「ん?旦那たちなにしてるっすカ?」
すると反対方向から地面を這う音と、不思議そうに問いかける聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
姿は見えないが、この口調に声のトーン。
間違いなく白玉である。
「し、白玉!?体調大丈夫!?」
「おぉ!?ネェさんお久しぶりッス!まだ人型になるほどの魔力は戻ってないっすケド、怪我はこの通り完治したッスヨ!それよりそれよりなんスカ!?なんで旦那とくっついてるっスカ!?どこまで進んだっスカちょっと詳しく教えて欲しいっス!!」
「あ、それエミリーも聞きたい!!」
「テメェら黙れ!!張り倒すぞ!!」
「ヒィ!?機嫌悪いっス!!」
「白玉もなにか感じる?アルがあっちから嫌な予感がするって言ってて…」
「嫌な予感ッスカ?ンー…特に魔物の気配はしないっすケド……あ、そういえば今日なにやら村が騒がしかったッス!!なんか馬車が止まってたっスヨ!」
「馬車……ってことはまさか!?」
「あーーー!レイー!!!」
アルがなにかを思い出した拍子に帰って来たリリーちゃんの声が大きく響き渡る。
警戒していた方向から歩いてくるのはリリーちゃんにマリーちゃん、そしてフードを被ったもう1人。
「じゃじゃーん!今日到着したって聞いて連れてきたんだ!!」
警戒している私とアルの前に立ち、クスクスと笑ったその人は咳払いをして私に声をかける。
「貴女の可愛さに心が撃ち抜かれました。よければご一緒にお茶でもいかがです?」
フードを外すと太陽の光に照らされて光る銀色の髪、そして恐ろしく整ったイケメンがサファイアのような綺麗な蒼い瞳が優しく緩められる。
「なにその顔。自分で言ったこと忘れちゃったの?あーあ、嬉しかったのに残念。」
茶目っ気たっぷりにウインクされ、私はもう虫の息。
持てる力全てを出して歓喜に打ち震えた。
「ラ、ラ、ランちゃん!!!!!」
「ふふ、久しぶりレイ。元気そうでよかった。それにそのお洋服、とってもよく似合ってて可愛い。」
「うぉおおおおおお!!ランちゃん素敵ぃいいい!!!」
人間国宝が目の前にいる。
感動的な再会に胸が弾みランちゃんに抱き着こうとすると、驚愕の力で押さえつけられ身動きが取れないことに気がつく。
不思議に思い声をかけようとすると、さらに絶対零度の殺気がその人物から発せられていることに気がついて動きを止めた。
「心が撃ち抜かれた?ご一緒にお茶でも?それに……!!!!」
ブチブチっと血管が3本くらい切れる音が聞こえたかと思えばアルはランちゃんを睨みつけ、片手で私を抱えたまま空いたもう片方の手のひらをバキバキと鳴らして歪んだ笑みを浮かべる。
「はっ、ちょうどいい……!王都でテメェを殺り損ねたのか心残りだったんだよ!!王都指定調剤師ランディ・バードン!!!ここで会ったが100年目、あの世までこのオレが丁重に送ってやる感謝しろクソえくぼがぁああああああああああああ!!!」
「それは完全にアウトォオオオオオ!!」
そういえばアルはなぜかランちゃんと最高に折り合いが悪いことを思い出し、我を忘れた幼馴染を全力で宥めることになってしまった。