転生者は、お菓子パーティーに行きたい
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リリーちゃんたちが満面の笑みでパーティー参加を快諾してくれてからさらに1週間と数日。
私の機嫌は最高潮に達していた。
帽子をかぶって、靴を履いて。
鏡に映った自身の顔がゆるゆるに緩んでいく様子を眺めながら勢いよく玄関に手をかける。
「もうレイちゃん、これは持って行かなくていいの?」
母親が可愛らしいエプロンを身につけながら、困ったように私に声をかけた。
その手元には私と母親2人で力を合わせて作ったクッキーが入った袋が2つ。
「あ、忘れてた!!」
「ふふ、そうなの?せっかく頑張って作ったのに、もうしょうがない子ね。ポシェットの中に入れておくわ。」
「ありがとうお母さん。」
その後私の緩んだ頬を見た母親は、茶化すように数回プニプニと頬を突く。
「新しいワンピースは汚さないように。ちゃーんと帽子を被るのよ?」
「はーい!」
「はい、いってらっしゃい。」
見たか、これが平和だ。
これこそが私の望んでいた平和な日々だ。
快晴に祝福されながら数週間ぶりに1人での外出を許された私は、意気揚々と足を踏み出す。
手のひらを太陽にかざし、若干のドヤ顔で呟く。
「ふっ、真っ赤に流れる私の血潮。」
「な、なにしてるのレイちゃん?」
前方より牧場から戻ってきた父親を発見。
眉をひそめた父親に敬礼し、大きな声で宣言する。
「はいお父様父上様ダディ様!!私レイ・モブロードはエミリーちゃん宅で開かれますお菓子パーティーに参加して参ります!!」
「正直でよろしい!!妖精さんたちとは離れないように!その可愛らしい姿で誘惑しないように!!あと出来ればそのお菓子を数枚ダディに譲って」
「行ってきまーす!!」
「レイちゃぁああああああん!!!」
発狂した父親を放っておいてスキップ混じりでエミリーちゃんの家を目指す。
『レイちゃん、エドワードは放っておいていいノ?』
「あの調子なら家に帰った瞬間に女神のような母親の姿を見て意識を失うと予想。」
『納得!!』
妖精さんたちも私の機嫌の良さが分かるのか、嬉しそうに妖精の粉がふわふわと舞い上がる。
「レイ!!エミリーがエミリーの家でお菓子パーティーやっていいってさ!!」
「蛇、恩人の幼馴染、みんな来れるって言ってたよ?良かったね恩人?」
私の代わりに声掛け、会場探しまで快く引き受けてくれたリリーちゃんたちには感謝しかない。
そしてエミリーちゃん、お家呼んでくれてありがとう。
『レイちゃんいい匂いがスル!』
「ん?そりゃあね!気合い入れてもってきたから!」
バンッとポシェットを叩き、彼らに親指を立てる。
「これだけあればお腹いっぱいになるに違いない。」
『ヒューヒュー!!レイちゃん流石ダネ!』
『早くエミリーのお家行こうヨ!』
背中が力強く押される感覚に逆らうことなく、少し駆け足で先を急ぐ。……急ぐ?
『ワー!!レイちゃんなんで止まるノ!』
「やっべ、エミリーちゃんの家ってどこだっけ。」
『『レイちゃんのドジっ子ーー!』』
なにも言い返せず頭を抱える。
どうしようこれ、リリーちゃんたちに迎えにきてもらえばよかったかも。
『じゃあミーたちに着いてキテネ!』
「見えてない見えてない。」
『前はどうやってエミリーのお家に行ったノ?』
「前は……」
はじめてエミリーちゃんの家に行ったのは、それこそ数週間前のバルメさん騒動の最中。
アルにおんぶしてもらってたどり着いたのである。
「あ、そっか。アルに連れて行ってもらおう。」
ぐるりと周囲を見回せば……流石お隣さん。
家がすぐ近くにある。
足早にアルの家の前へ移動し、どんどんとドアをノックする。
ドンドン、ドンドン、ドンドン、ドンドン、ドンドン…………ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンド
「うるせぇぞクソが!!!一回で聞こえ……」
よし良かった、まだ家にいた。
バンッと勢いよく開いた扉に巻き込まれないようにスルッと避け、視線を向ける。
相変わらずツンツンしている赤髪に、綺麗な金色の瞳。
数週間ぶりでも変わらない私の幼馴染の姿にさらに頬が緩んだ。
「アル!!久しぶり!!」
「モ、モブ…お前…その格好……」
目を見開いたかと思えば、よろけながら数歩下がる。
挙動不審なその姿に首を傾げるが構わず言葉を続ける。
「うん?そうそう新品のワンピース可愛いよね……ってそれよりも!今日は待ちに待ったお菓子パーティー当日でしょう?アルが迷子になったら大変だと思って迎えにきてあげ」
「嘘つけ。お前がエセ聖女の家の場所が分からなかっただけだろ。」
「そ、そう言う考えもあるよね。でもまぁせっかくだし一緒に行こう!!」
ガタガタッ
空間分を詰めて手を伸ばすと、大げさなほど狼狽えた幼馴染はいろんなものを巻き込みながらさらに後退した。
「…さっきから変じゃない?どうしたのアル。」
「は!?別に!?」
「じゃあなんで…もしかして体調悪いの?顔も心なしかあ」
「赤くねぇ!!!」
「まだ言ってないけど……まぁ体調が悪くないなら早く行こう!!案内よろしく!!」
「お、おい待て!!」
彼の手を掴み外に出ようとすると、なぜかアルがグッと堪えたせいで先に進めない。
「なに?どうしたの?」
「約束の時間、午後2時だったよな。」
「うん。だから早く行かないと遅刻しちゃうよ。お菓子食いっぱぐれちゃうよ。」
「今、朝の7時だぞ。」
「え、はやっ。」
「どんな間違いしたらそうなるんだよこの馬鹿!!」
盛大に頭を叩かれた。