転生者は、暇を持て余す
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気がついたら愛しき布団の中。
騒動後に一度目覚めたはずなのになんでまた?
少し思考を巡らせるとなんだかとんでもない映像が流れ出したので強く頭を壁に打ち付けた。
レイ・モブロードよ、一体どんな夢を見ているのだ恥を知れ。
そんな私の葛藤は置いておき、あれから数週間。
村は徐々に活気を取り戻しつつ、今日も今日とて村人全員が力を合わせて復興に励んでいる。
だというのに。
「もうお留守番嫌だぁああああ!!」
「ダメ!!」
鬼だ。ここに鬼がいる。
腰に両手を当てて睨みつける父親は、気を失って家で目を覚ました私にしばらく謹慎を言い渡した。
最も恐れていた家族からの信頼失墜。
そう。よく思い出せばこの私、無言で家から飛び出して散々心配をかけていたのだ。
せっかくはじめてのおつかい達成したのに。
親の心臓潰しは、想像以上に重罪である。
外に出る際には必ず父親か母親と一緒、そして手を繋がなければならないという縛りプレイ。
それに伴い、両親が私と一緒に居られない場合は外出禁止。おいおいどこの箱入り娘だよ。
それでも心配かけたのは私だし、いつかは分かってもらえると思い耐え抜いたこの数週間。
現在進行形で一向に家族からの信頼は得られていない。
「もう危険なことしないから!!約束する!神に誓う!!ね!?だからお願い!!」
「レイちゃん王都でもそれ言ってたよね?僕はレイちゃんを信じてたのになぁ…」
「うっ……!!」
父親の悲しげな表情、レイ・モブロードに15000ダメージ。
ガクッとうな垂れた私の頭を撫でた母親は、苦笑まじりに耳元で呟く。
「今日は特に大変なお仕事になりそうなの。お家で待っててね。エドワードには私からも言っておくわ。」
……うん、まぁでも、無断でやらかした私が悪いか。
渋々頷いて復興の手伝いをしに村へ向かった両親を見送り、階段を駆け上がる。
自分の布団へダイブすると、足をばたつかせてやるせない思いを吐き散らした。
「とは言いつつひっっっっっま!!!」
『レイちゃんずっとお家ダネ!!』
『グータラレイちゃんダ!』
『レイちゃんに突撃ダー!!』
グータラになるのは私のせいではない。世界が悪い。
ペシペシと身体に何かが当たるのを感じながらゴロゴロと窓まで転がり、ぼんやりと窓の外を眺めた。
この村はここ最近でだいぶ変わったと思う。
クラウスさんが数千もの魔物を一度に吹き飛ばしたことで景観がガラリと変わったことは言わずもがなだが。
「あー!モブロードさん!!これ!これ持っていっておくれ!」
「よお転婆娘!今日はトイレに落っこちるなよー?」
村の人たちが私たち一家に対してとんでもなく優しくなった。
母親の病気が突然治ったことで多少気味悪がられていたのだが、安定の情報漏洩のクラウスさんが私が今回の事件で首を突っ込んだことを言いふらしたらしく、外に出るたびに周囲から感謝の言葉をかけられる。
自分のために走り回っていたのに感謝されるなんてラッ……いやなんでもないです。
しかも私に至っては以前ボットントイレに落下した伝説も相まって珍獣の愛称で結構愛でられている。
暮らしやすくなったのはいいことだが、ご存知の通り私はモブだ。目立つことは慣れていない。
ドンドンッ。
考え事をしていると玄関を大きく叩く音が聞こえて立ち上がる。
「レイ!!遊びにきた!!」
扉を開ければこのところ毎日遊びに来てくれるニコニコ笑顔のリリーちゃんと、柔らかい笑みを浮かべるマリーちゃんの姿があった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
慣れた様子で椅子に座る彼女たちにお茶を出し、女子会を開くべく私も席に着く。
「今日は何しようか?」
「んー…あ、じゃあ商人の襲い方を伝授してあげる!」
「平和なやつでお願いできますか。」
「まず手始めに軽く首を折るんだけどコツは」
「話を聞いて!?」
「じゃあ騎士団に捕まった時に上手く逃げられるように縄抜けでも練習しとく?恩人?」
事あるごとに私を盗賊に育て上げようとする点はさておき、彼女たちは私の暇つぶしに大いに付き合ってくれるいい子達だ。
そして村で起こっていることを事細かく教えてくれる。
「なんかレイが使役してた魔物だけどさ、村の人たちに聖獣様だー!とか言って崇められてるよ?この間なんて専用の社が復興のついでに作られてた。」
「あのね使役してるのは私じゃ……ん?ついでに作れるものなのそういうのって。というかこの村に住んでいる人みんな凄くない?順応性高くない?凡人居なくない?しかも白玉ってまだ人型になれない状態だって聞いてたような…」
「聖女の祈りを受けて魔物としての魔力が薄められたんだね?昔は白蛇を神様として祀ってた村もあるみたいだし、神秘的に見えたんじゃない?もしかしたらあれが本来の姿だったりするかもね?」
「えー?アイツめっちゃ気持ち悪がってたよ?近寄るなっす人間!!とか言っちゃって。」
「照れてるだけかも?」
「なにそれ面倒くさっ!」
盛大に顔をしかめるリリーちゃんに苦笑しながら白玉の元気そうな様子に安堵する。
一時は生死を彷徨ったとは思えないほどの回復ぶりだ。
やはり魔物は人とは違ってかなり頑丈らしい。
ならば心配なのは彼らとなるわけで。
「ムーン・マテライト、魔力不足による衰弱のため1ヶ月の休養。キッド・バルナーブス、出血多量および肩部損傷のため3ヶ月の休養。ダンテ・ガントレッド、全身複雑骨折のため6ヶ月の休養。哀れ重傷3人組の方が大変だね?」
「毎度聞くたび悲惨すぎるっ…!!!」
「?命があっただけマシだよ恩人?」
首を傾げるマリーちゃんにそりゃそうなんだけどもと頭を抱える。
彼ら3人組は常人超えが存在するこの異常な村で私の感覚を共有してくれる凡人。(もちろんいい意味で)
だからあの人たちが大怪我を負うと、自分も怪我をしたように心が痛い。
本当この村に住んでる人強すぎだから。
ノット暴力、イエス平和。もっとモブに優しい世の中を作っていきましょう。
「それよりレイのカカ様とトト様はまだ怒ってるの?」
「心配かけちゃったからね。」
「そうかもしれないけどさ…エミリーも全然構ってくれないんだよ。」
「あー、エミリーちゃんは聖女特訓で忙しいんだっけ。」
「うん。頑張ってるから邪魔するわけにもいかないし。」
悔しそうに口を尖らずリリーちゃんに最高に癒される。本当になんて優しい子なのだろう。お友達の力になりたいけど、何をすればいいか分からないんだな。あーそういうの好き。課金したい。
そこではっと思い出した。
あの騒動終了後に私がやりたかったこと。
ガタンッと勢いよく立ち上がり棚の中を調べる。
そしてあるモノを見つけるとニヤリと頬を緩ませた。
「じゃあさ2人とも……
よかったらお菓子パーティーなんてどうよ?」
あれ以来会っていない、可愛い幼馴染との約束を果たさねば。