転生者と戦いの爪痕と、少年の本気③
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真面目な話をしよう。
簡易的な天幕の中に招き入れ、彼にそう告げると当人は面倒臭そうに眉を潜めた。
「人払いをするほどのことか?」
「あぁ、大事な話だからな。」
私が目の前の赤髪、アルフレッド・フォスフォールという人物と関わっていくにあたって一度ここで整理しておきたい。
「まずは今回の働き、見事だった。モブロード嬢はもちろんのことだが、お前が居てくれなかったらあの黒蛇を犠牲者なしに倒すことは不可能だっただろう。無論その後の魔物との対決においても。」
「へーへー、そりゃどうも。」
なんとでもないように手をヒラヒラと振る彼は、贔屓目なしに考えても騎士としてかなり有能な部類に入る。
鍛錬もその若さでついてこれているし、魔法だけでなく剣筋も悪くない。
まだ粗っぽさは残っているが、このまま努力を積み重ねていけば必ず実を結ぶはすだ。
「その中でも私が驚いたのは、この聖剣に触れられることが分かったことだ。」
聖剣エクスカリバーが認めるほどの才覚を、彼は既に持っている。
「は?そんなことが?」
「聖剣は所有者を選ぶ。魔力・剣術・英雄の素質を持つ選ばれし者であれば、彼は聖なる光を持って主人を導く。」
「たかが鉄の塊のくせに随分と偉そうだな。」
「反対に相応しくない、未熟者が彼に触れれば最後。彼の怒りが愚者の烙印を刻み込む。」
「人の話を聞けよっ!?」
アルフレッドの手元に聖剣を触れさせるとジュワッと肉が焼ける音がする。
慌てて手を引っ込めた彼は自身の手のひらに治癒魔法をかけると、恨めしげにこちらを睨みつけた。
私は彼に言い聞かせるように言葉を続ける。
「痛かったろうが本当の愚者が聖剣に触れれば、罰はその程度ではすまない。触れた箇所から腐敗が始まり、治癒魔法なんかで補える程度のものではない。彼はお前を見極めようとしているのだ。」
「……なんのために。」
「己の相棒として、勇者として相応しいか否か。」
驚いたように私を見つめるアルフレッドに、苦笑を浮かべた。
個人的感情で言えば、彼が聖剣使いの候補者となったことは喜ばしい。
彼に全て教え込めば、必ずそれをモノにできる。
あっという間に私を超えていけるだろう。
だが王都騎士団長としての観点から考えれば、はいそうですかと全てを教えるのには抵抗がある。
「寄ってきているぞ。」
私の話を無言で聞くアルフレッドの足元にすり寄った小さな白い蛇。
かなり酷い怪我を負っていたが、エミリー様の祈りの効果もあって一命を取り留めた上級魔物だ。
アルフレッドがなにも言わずに手を出すと、蛇は嬉しそうに頭の上まで登りつめとぐろを巻いた。
「旦那旦那!!凄い魔法を使ったって本当ッスカ!?首を落としても死なない不死の魔法って本当ッスカ!?流石旦那っス!魔女の首は何処っスカ!?超カッコいいッス!!」
シラタマが言う、不死の魔法。
不死という聞こえはいいかもしれないが、実際はどれほどの苦痛を強いても、細切れに身体を切断されたとしても、死ぬことを決して許さない最悪の呪縛魔法である。
高度な魔力操作そして純度の高い魔力を必要とすることもあるが、あまりにも恐ろしいその実態から好んで扱おうとする者はそういない。
それこそかつての魔王以外には聞いたことはなかった。
「ギャンギャン騒ぐな鬱陶しい!!」
「ンモウ水臭いっすヨ!今度使うときは絶対に声かけて欲しいっス!」
「そんなに好きならテメェにかけてやろうか…!!」
「アルフレッド。」
「あ"!?なんだよ!!」
彼に声をかけたのは、どうやってあの魔法を習得したのかを尋ねたり説教を垂れるためでもない。
そもそも利口である彼が、魔女にかけた魔法がよろしくないものであることを知らないはずがないのだ。
「どうして例の魔法を使った。」
それなのになぜ、敢えて、魔女に魔法をかけたのか。
私が一番に知りたかったのはそのことだった。
私の真剣さが伝わったのかシラタマを構うのをやめ、金色の瞳で真っ直ぐに見つめ返してくる。
そしておもむろにポケットに手を入れて何かの破片を取り出した。
「見覚えは?」
観察して見てみると、それはかつて悪徳ギルドを一斉検挙した際に押収した覚えのある不法魔法道具だった。
そしてその管理をしていたのは誰だったか。
「魔女の所持品にしては異様で可笑しいと思ってたが、テメェの反応でよく分かったぜ。今回の一件には裏で手を貸してやがる奴がいる。まぁ王都から応援が来ねぇ時点でお前も分かってただろ。」
「…………テオ。」
私に賛同するようにアルフレッドは一度大きく頷いた。
「だが彼はエミリー様の安全を第一に行動する騎士だ。わざわざ危険に晒すなんて考えられない。」
「なんにせよ、なにを企んでやがるのか手っ取り早く聞くには契約の魔女に細かく聞くしかねぇ。だが捕縛しちまったら腐っても王都騎士団長のお前は報告せざるを得ない。」
ポイっと破片を捨てたアルフレッドは言葉を続ける。
「そうしたら親愛なるエセ聖女様の安全を脅かした存在として幽閉するやら処刑するやら難癖つけられて、聞き出す前に握りつぶされるに決まってる。ならその前にこっちから存在を消してやればいいって話になんだろ。」
思わず息が詰まる。
「本当は魔巣を潰した時にやろうと思ったんだが…オレが手を出すと泣き喚く奴がいるからな。魔物に任せておけば魔女の首はもぎ取りに来るだろうし。時間はかかったがあとは首だけ魔女にゆっくり話を聞けばいい。……自殺される可能性もねぇわけだしよ。」
淡々と冷静になって思考を巡らせ、必要とあらば非人道的な方法すら躊躇いなく選択する。
そこまで彼を駆り立てるのは、幼馴染の脅威となるものを徹底的に取り除くためだ。
私が大群と共に斬り伏せようとした魔物をさりげなく逃したのも、彼女がアレに反応を見せたからに過ぎない。
「オレが戦ってんのは村のためじゃねぇ。」
その言葉通り。
彼はモブロード嬢のためにしか動かない。
「で、だ。オレの考えを聞いてお前はどうする。協力するか?それとも…邪魔するのか?」
さてはて、私はどうするべきなのか。
金色の瞳でこちらを睨みつける姿に、愛を知った少年の本気は恐ろしいものだと心から思った。
ここまでお読みいただきありがとうございます^_^
大きな山をひとつ超えましたので、しばらくはほのぼのタイムでいきましょう笑
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