転生者と戦いの爪痕と、少年の本気
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長かったパルメさん騒動も決着がつきひと段落……となったあたりで少しあの人が本気を出すようです。
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くるりと大きく宙で円を描き、何かが目の前に落ちて来る。
それをじっと見つめていた私は、地面に落ちたソレを凝視して時が止まった。
「ふふ、そんなに見つめられたら照れちゃうわぁ。」
頭?アタマ?が?しゃべ?しゃべって?
「だ、だ、だ!!!
誰か接着剤ぃいいいいい!!!」
「どんな寝言だっつの。」
ぺしっと額にツッコミを入れられて意識が覚醒する。
気がつけば毛布に包まれながらアルに寄りかかっていた。
状況が良く飲み込めていない私の頬にくっついた髪の毛を払いながら、アルはほっと息を吐く。
「よく寝れたみてぇだな。体調は?」
「うんお陰様で元気一杯…って、私いつから寝てるの!?なにがどうなって!?」
「お、おい。」
勢いよく起き上がりあたりを見回し思わず息を飲む。
「な、な、なに、これ。」
かつて関所だった面影は見る影もなく、ごっそりと平地になっていた。
数本の細長い線が真っ直ぐに地面を抉った形跡があり、明らかな戦いの爪痕と伺える。
私が寝ている間にどれほどの戦闘があったというのだ。
面白いぐらい身体から力が抜け倒れこんで来た私を、アルは背後から抱き締めるように受け止めた。
お腹に回された彼の手に触れ、祈る思いで問いかける。
「み、みんなは??」
「………あぁ、あれだけのドンパチだったが、誰も死んじゃいねぇよ。怪我はしてるからあそこの離れた場所で治療中…で、これはクラウスの奴が魔物の大群を薙ぎ払ったらこうなっただけだ。魔物ももういねぇし安全だから、モブの両親が迎えに来るまでここに」
「よがっだぁあああああああ!!!」
「………最後まで聞けよクソモブ。」
辛辣な言葉とは裏腹に優しく私を撫でるアルにますます涙腺が崩壊する。
誰も死んでない。よかった。みんな無事。
もういいよね、泣いていいよね。
本当無理、死ぬかと思った。
というか最後寝てるとかどんだけなの私。
泣きすぎてしゃくりあげている私はとてつもなく人肌が恋しくなって、アルの腕の中で方向転換をして彼と向かいあう。
「あ?どうした?」
「ひぐっ………もっとくっつきたい…」
「もっと…って…」
「くっつくのぉおおおおおお!!」
「クソッ…本気かよ……!!」
ブワッと崩壊した私の顔面を見たアルは荒々しく自身の髪を掻き毟った。
あぁ、困らせてる。そりゃそうだよね。
今でさえかなり甘えてるのに、これ以上どうしようもないよね。
でも足りない、止まらない。どうしよう。
「うぐっ……ひぐっ……ごめんねっ……困らせ…て……ごめ……」
「謝んな。お前はなにも悪くねぇだろ。………………ほら、来いよ。」
恐る恐る身体を寄せると、壊れ物を扱うかのように私を引き寄せた。
ドクッドクッと一定の間隔を刻む心臓の音が酷く安心する。
もっと聞いていたくてグググっと抱き締めれば、ビクッと彼の身体が跳ね上がり同時に間隔が急速に早まった。
「待て待て待て待て待て待て。おお落ち着け。」
「うう…離れちゃいやだ…」
「離れねぇ!!いい一旦っ!一旦距離をっ…」
言葉の通り距離を取ろうとしたアルの頬に擦り寄って全力で阻止。
ビシッと固まったのでこれ幸いとさらに力込めると、ドッドッドッドッと聞いたことのない速さで脈を打つ彼の心臓の音にようやく我に返った。
え、なんか、大丈夫これ?
もしかして体調悪い?その待ってだったの?
「あ、アル?」
恐る恐る尋ねると、深く息を吐いたアルは途端に声色を変えて囁いた。
「………あーもう知らねぇ。」
「ぐぇっ!?」
今までと比にならないぐらいに力強く抱き締め返されると、グリグリと頭を撫でられ髪を梳かされながら首にキスされる。
もちろんそんなことされたことないので、驚きで両手で突っぱねようとすると逃さないように耳に唇が移動してくる。
なんだこれ。なんかやばい。
なにがやばいって、本当やばい。
触れられた箇所が熱くて、恥ずかしくて、それでも嫌じゃない意味が分からなくてボロッと涙の塊が溢れる。
するとすかさずアルは目尻に溜まった涙をチュウッと吸い取った。
「はぁ………今更逃げられると思うなよクソモブが覚悟しやがれこの野郎!!!!」
なんかキレていらっしゃる!?
「ご、ごめんごめん!!なんかごめん!もう大丈夫だからその」
「は?この程度で済むと思ってんのか?散々人のこと煽っておいて?馬鹿かお前どんだけ脳内花畑なん………まさかオレ以外にも似たようなこと言ってんじゃねぇだろうな………?」
「えっ!?」
低音が響き金色の瞳が怪しく揺らめく。
それにビビった私は愚かにもすぐに返事ができず言葉に詰まると、あらぬ方向へ深読みしたのか鋭く光った。
「い、いやいやアルだけ!アルにしかお願いできないですしアルじゃなきゃ嫌です!!」
「っ…へぇそうかよ…?そりゃあ光栄だな。ならお望み通り、遠慮なくドッッッロドロにしてやらぁ!!」
「うぇえ!?なぜ!?まさかの溶かされるの私!?」
グッと力を更に込められ、逃げないように閉じ込めてからアルはおでこをくっつけてくる。
良かれと思って言ったのに逆効果っぽい。
内臓出そう、息ができない。
さらにわざと熱がこもった息を唇にかけたことでぶるりと一際私の身体が震えると、ペロッと頬を舐めてから愉快そうに呟いた。
「クリームみてぇにあまぁく、溶けちまえ。」
「!!!!!!!こ、
こんの年齢詐称めぇええええ!!」
「は?お、おい!!」
同い年とは思えない色気に当てられて、私は意味不明な言葉を残し意識をぶっ飛ばした。