転生者たちは、最終関門を突破する
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ま、まさかの1000pt超え!?え!?いつの間に!?
驚きのあまり一度ブラウザを閉じてしまいました…。本当にありがとうございます!!大変励みになっております!
いよいよここまで来ました!
さて決着はどうなるのやら……
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「危ないでしょうが!!!何考えてるの!!」
「分かった分かった。けどあんまり騒ぐと噎せるぞ。」
「だってアルが聖剣を投げたりするからぁっぶぁっごっは!!」
「言わんこっちゃねぇ。ほら落ち着け。」
肩を竦めレイと呼ばれる人間に駆け寄る候補者様の姿を、掠れる視界の中で捉える。
白蛇の裏切り、魔力が感じ取れない契約の魔女、聖女によく似た人間、聖剣使い、レイの正体、そして赤髪の生き残り。
この村で、こんなにも多くの異様な光景を目にすることになるなんて思いもしなかった。
肉体を形成する霧が聖剣に焼かれ、無様に蒸発して消えていく自身の身体を感じながらアルファはゆっくり目を閉じる。
どちらにせよ、私の存在は限界を迎えてしまった。
残された時間は少ない、有意義に使わなければ。
(ささやかなお使いすら全うできないとは、眷属失格。………ガンマ様、申し訳ございません。)
心の中で主人に詫びを入れ、自身の要を霧状にして風に漂わせる。
魔物から見れば自身の心臓を曝け出しているに等しい大層見っともない姿であるが、魔物としての誇りよりもどちらかが生きて情報を持ち帰ることを優先させた。
全ては今後、ガンマ様が不利になることを防ぐため。
そして今この状況で、生き残れる可能性が高いのはアルファではない。
「アルファ…?アルファどこ…!!」
自我を失っていたベータもこちらの異変に気がついたように血だらけの身体でただひたすら吠える。
アルファから香る死の匂いを敏感に感じ取ったのだろう。
その姿は餌を待つ雛鳥のようで、ベータの幼さを感じさせた。
(当初の目的を果たして逃げ延びる。えぇ、ベータ1人でも問題ないでしょう。アナタはやれば出来る子ですからね。)
大きく口を開け声帯を震わせて救援を求む鳴き声を響かせるベータの元へふわりと飛んでいき、その口元から彼の体内へと侵入した。
自身のなけなしの魔力を彼の細胞に注ぎ込みながら、暴れ狂う半身へと声を掛ける。
(良いですかベータ。今の状況で聖剣使い、そして候補者様を相手にするのは得策ではありません。我々の当初の目的を遂行し、やむを得ませんが下級魔物どもの襲来を利用してここから脱出しましょう。その後アナタは必ずガンマ様へ私のこの記憶を献上してください。)
「嫌だ、嫌だ、アルファ。」
駄々をこねるように大きく頭を振って私を拒むベータに、強く言い聞かせる。
(なにも今生の別れというわけではありません。アナタが生き残れば魂は残る。魂が消えなければ如何様にも対処できる。理解出来ますね?)
「っ!ネ、ネェさん一旦引こう!コイツ様子が変だよ!」
「うん、そうだねリリー?」
(分かってますね。狙うは魔女の首ただ一つ。私の魔力の全てをアナタに託します。一撃で決めてください。)
ベータと視界を共有し、狙いを定める。
「呼吸が浅い…!オレではどうにも…エミリー様、回復魔法をお願いします!」
「うん。でもこれ……」
兵士の手当てを受けているようだが苦しげに胸を抑える魔女にほくそ笑む。
先程心臓にアルファの霧を纏わりつかせておいたのが効いているようだ。
心臓を潰すほどの力はないが、着々と生命力は奪っている。
逃がさない、絶対に。
しかし私の肉体が不自然に消滅したことに気がついた候補者様が、ベータに視線をやり目を細めた。
(もう勘付かれた。)
彼に邪魔される前に仕留めなければなりません。
アルファの言葉を合図にベータが片翼に力を込める。
それを確認し半身の背中を押した。
「エミリー様!!」
「きゃあ!」
兵士が咄嗟に前に庇い出るが構わず張り倒す。
その隙に聖剣使いが一瞬で緑髪の人間を抱き抱えて離脱する。
それでいい。おかげで魔女は無防備だ。
ベータと声を合わせ、白い肌に向けて翼を振り上げた。
「「ソノ首、貰イ受ケル!!」」
「パ、パルメさ」
ベータの声に反応してレイが悲痛に叫ぶ。
しかし嫌に冷静な候補者様が彼女の肩に手を置き、優しく声をかけた。
「大丈夫だ。だが、お前はもう寝とけ。」
「え、あ、」
そうして彼は彼女に睡眠魔法をかけて意識を飛ばす。
そのまま脱力したレイを抱えた彼は、消え失せるアルファに向けてニタリと笑みを向けた。
(邪魔をしない?なぜ?)
その答えは出ないまま、ベータが魔女の首を刎ねたのを見届けてアルファは塵へと還った。
「は、え、なに…?」
ベータはゴロリと転がった塊を見つめ、魂を震わせた。
「…………私が聞きたいわよぉ。」
転がった塊が、不思議そうに口を開いた。
胴体と頭は別れているのに血は噴き出ず、普通に会話を交わせる。
「はっ、残念だったな。殺せなくてよ。」
ジャリっと地面を踏みしめる音がして全身が震える。
この魔法、知ってる。知っている。
「魔巣をぶっ壊した時に一か八かの勝負で掛けといて正解だったぜ。運が良かったなクソ魔女。」
「コレって良かったのかしらぁ。ワタシ、首だけになっちゃったんだけどぉ。」
「死んで終わりだと思ったか?そんなこと、させるわけねぇだろ。」
生命の危機を感じる圧迫感、恐怖。
その感覚は遥か昔を思い起こさせた。
「も、申し訳ありません!!」
「ハイハイ、モウ結構ですトモ。」
「ひっ!!どうかご慈悲を!」
玉座に足を組んで座っていた何かが、すっと指を横に動かした。
額を地面につけて命乞いをした魔物は断末魔をあげて粉々になったのに、肉片はまだピクピクと痙攣している。
「フフン驚きましたカナ?ワテクシ、ご存知の通リ生と死を司る超一流デスので。生かすも殺スも自由自在ナノデス。」
「ま………う………さ…ま………」
「この無礼ヲ、アナタのような小物のタダの死デ、償エルと?そんなわけナイデスよねぇ?」
古びた紫色の布を身体にまとい、体内に保持できないほどの魔力が青白い煙となってあの御方の周りで渦巻く。
「ジャジャン!!なんとも丁度イイ、微塵切リ!!そうデス、アナタは下級魔物のエサにナルのデス!!さサ、ガンマくん。エサやりは頼みマしたよ。」
「…………はい。」
ガンマ様が粛々と立ち上がり、肉片を掻き集めて窓から飛び出した。
その反動で月明かりがその人物を怪しく照らす。
「しかしもマァ、腹が立チますヨネぇ。絶対このワテクシを、心のウチで馬鹿にシテましたネェ。そう思イませんカナ?メディシアナくん。」
「………。」
「オヤオヤ、相変わラズ、照れ屋さんデスこと。」
メディシアナ様ですら無言を貫くその人物。
「コのカボチャ顔の良サが分からナイとは、ナント残念な生き物でしょうカネ。存在する価値モない。」
カボチャ顔の大魔王、ソウェルメス様の得意技だ。
「ひっ!!」
このままでは死ぬ。殺される。
魔女の首など目もくれず、一目散に空へと羽ばたく。
同時に下級魔物の大群が村の近くへと到着した。
「じ、時間を!時間を稼いで!」
声帯を震わせて彼らに命じれば、能無しの彼らは相手の恐ろしさも知らずに牙を剥いて村へと襲いかかる。
「おいクソウス、これ返してやるからいい加減仕事しろ。」
候補者様は乱暴に聖剣を蹴り飛ばす。
「あぁ、助かる。」
緑髪を地面に降ろしながら飛んできた聖剣の柄を難なく掴み、慈しむように刀身を撫でる。
その後聖剣使いは閉じていた瞳を開いて魔力を込めた。
「さぁやろうか。エクスカリバー。」
青白い光が共鳴するように光り輝き、刀身に魔力を纏う。
そしてそのまま彼が勢いよく振り下ろすと青い閃光となって地面を抉り、一気に魔物の大群を飲み込んだ。
「う、そ…」
何千といた魔物の大群が一瞬で灰となり、ベータは風圧と聖なる魔力に当てられて意識を失った。